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第百七十五話 到城

ラムザのポンコツっぷり、化けの皮が剥がれて露呈しました。

 まあミリアムさんがしたためた手紙を私が直接届けたのだから間違いがあろうはずがない。まあテオドールはその手紙の内容を又聞きしてたんだけど。


「話はわかった。ならば国内、国外の我が大陸民の安否はわかり次第ということだな?」

「はい、今父上……国王陛下が人をやって手配しております。もっとも、スムーズに行くとは限りませんが」

「ん? どういう事だ?」

「貴族派の連中が奴隷貿易の顧客なのです。王は強権を発動できなくて」


 まあ自分の息子からして父親には向かってるんだからそりゃあそうだよね。


「ふむ、ならば詳しい話は私が直接王都に乗り込んでからにしよう。キュー、頼めるか?」

「テオドール、様? 私に何をやらせたいんですか?」

「決まってるだろう。森林暴走オーバーランの時みたいな集団転移だ」


 どうやら味をしめたらしい。いやいやテオドール? 私もタダでやるような安い女ではないのですよ。


「キュー、お願いしますね」

「あなただけが頼りです」


 あー。ヒルダ様とミリアムさんに言われちゃあ仕方ないね。ここは私がひと肌脱ぎましょう。えっ、脱いでも見るところがない? ほっとけ!


 テオドールとその麾下の精鋭五百騎。いずれも一騎当千の強者だ。森林暴走オーバーランやら盗賊退治やらなんかで鍛えられたもんね。そんな人々を連れて王都の側まで転移テレポートする。途中いくつかの場所を経由してたんだけど広い平地を探すのが難しくてコース的には蛇行して行ったんだよね。


 王都の外側で兵士たちを待機させて、テオドール、ヒルダ様、私、あと事務官は王都の門に入門しに行った。


「次の者……んん? あなた方は?」


 まあ見るからに高貴なオーラが出てたんだろう。主にヒルダ様に。テオドールは、剣は立派だけど後はそうでもない。装飾も着けてないし。


「東大陸より参ったリンクマイヤー公爵家のテオドールである。国王陛下にご謁見を願い出たい」

「!? はっ、しょ、少々お待ちいただけますでしょうか? すぐに王城に遣いをやりますので!」

「ふむ、なんなら王城まで歩いて行くが?」

「とんでもございません! お願いですからこちらで大人しくお待ちください!」


 門番の兵士に通されたのは応接室みたいにきちんと綺麗にされてソファもいいものが置いてある部屋だ。貴族の待機室みたいな場所らしい。テオドールは偉そうにふんぞり返って座っている。その横にヒルダ様。私と事務官の人は部屋の隅っこでガタガタ震えて命乞いを……している訳ではなく、所在なさげに立っていた。


「失礼する」


 入って来たのはぽっちゃり体型のデブ……あ、いや、確か第四王子のグレイだったかな? 隣には美少女のリリシアさんもいる。いや私は顔知らないことになってるから言わないけどね。


「東大陸の方にお初にお目に掛かります。私はグランドマイン王国第四王子、グレイ・ガラハッド・グランドマインと申します」

「そうか。私はロートシルト王国リンクマイヤー公爵家のテオドールだ」


 えらい偉そうなんだけどいいのか? 公爵と王族なら王族の方が偉いのでは? と思ったが、この度私たちが被害者、あっちが加害者ってのを明確に立場としてやらないといけないってのをあとから聞いた。やっぱり貴族ってややこしい。


「さて、国王陛下から公式な謝罪をいただけるということであったのだが、それに相違ないだろうか?」

「あ、はい。父王は管理不足を認めております。そして奴隷貿易の被害者の行方も随時調べておりまして」

「ということは全容は解明してないということか」

「はい、お恥ずかしながらまだ全容解明には至っておりません」


 テオドールは懐から一枚の紙を取り出した。あれは確かアルテミシアさんが作ったリスト?


「我が国からの被害者が売り先を含めて書いてある。参考にしてもらえるだろうか?」

「助かります! ありがとうございました。あの、それから……その……」

「なんだ?」

「ミリアムは元気にしているのでしょうか?」


 グレイがモジモジしながら尋ねてきた。やっぱり妹のことが心配なんだろう。あの兄弟の中では一番心配していたもんね。上の二人は論外だったし。


「ここに来る前に会ってきたが聡明そうな方だったな。先が楽しみだ」

「そうですか。ありがとうございます」


 そう言ってグレイがリリシアに笑いかけた。リリシアもほのかに笑顔を浮かべている。これはミリアムさんの無事を喜んだんではなくて、グレイの心配事が減ったことによる微笑みなんだろう。


「晩餐会を準備しております。王城にお部屋も用意させましたのでそちらでご逗留いただければ」

「国王陛下との謁見は明日以降、ということになりそうだな。まあ良かろう。案内してくれ」


 テオドールは終始偉そうだ。まあ尊大に振る舞う必要はあるんだろうけど。王城も久しぶりだなあ。


 王城に入って廊下を歩いていると前からラムザがやって来た。ラムザは私を見つけると早足でこちらに向かって来た。


「おい、貴様、何故貴様がここに居るのだ! ここは王城だぞ? 不法侵入か? 衛兵たち、こいつを捕らえろ!」


 ラムザが一気にまくしたてた。衛兵たちは戸惑ってる。どうやらラムザの取り巻きという訳でもないようだ。


「おい、うちのツレに何をするつもりだ?」

「なんだ貴様? 私が誰だかわからないのか?」

「誰であろうと構わん、オレのツレに手を出そうというのは礼を欠くのではないか?」

「礼を欠いているのはどっちだ! 私はこの国の第一王子、ラムザだぞ!」

「ほほう? 貴様が第一王子なのか。それは国王陛下には頭が痛いだろうな。他国からの使者にこの様な無礼を働くとは」

「他国の、使者、だと? デタラメを言うな! 他の国の使者はだいたい頭に入ってるが貴様のような輩は見た事がないぞ!」


 そりゃあ見た事ないだろうよ。大陸が違うんだもの。テオドールはニヤリと含み笑いをした。あ、こいつこの失態を利用する気満々だわ。腹芸も出来るんだね。


「ほほう? まあそれも仕方あるまい。私の本国は東大陸だからな」


 それを聞いてラムザの顔色が一気に青くなっていった。

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