幕間〜とある女神のつぶやき〜
おい、女神
私は女神。ええ、この世界を統括してるものよ。さあ、みんな、私にひれ伏しなさい! ってどこかのかぐや姫みたいな事を言ってしまったわ。
今私は事態の収拾に努めています。何の事態かと言うと、ぶっちゃけると「世界の交錯」が起こったから。
たまにあるのよね。それぞれの世界で時空が歪んで世界が繋がっちゃうの。今回は私の管轄してる第十二世界と第十四世界が繋がっちゃったのよね。
いや、事故、事故なのよ。ちょっと間にある第十三世界にガタが来てたから修復してたのよ。異世界召喚? そんな事する訳ないじゃない。時空を渡らせるのはそれだけで歪みが出てくるもの。
使えなくなった世界はぽーいってしちゃうのよ。えっ、住んでる人が可哀想? いや、使えなくなった世界ってそういう生き物とかが全部無くなった世界なのよ。つまり、見渡す限り廃墟。人が人体改造しすぎて自分の身体すらもAIに乗っ取られるだなんて思わなかったんでしょうね。調子に乗りすぎよね。
オマケに私の神託を誰も信じないし。なんか女神が戯言言ってるとか、ドラッグ食ってるとか散々に言ってたわ。お前らはAIの言いなりじゃないの!
という訳でそれぞれのAIが覇権をかけて人間を消耗品のように戦わせたのよ。その結果、どんどん兵器開発競争が激化しちゃって生物が住める環境じゃなくなっちゃったのよね。
だからAIだけになった時点で、リセットしたのよ。ロボットというかマシンに魂は無いからね。だからぐしゃって潰しちゃったんだけど。
どうもね、次元移動を試みようとしたAIが居たみたいで、第十二世界に穴を開けちゃったわけ。それがティアちゃんが見つけた試練の洞窟の横穴。
びっくりしたわよ。いきなり次元の狭間に落ちようとしてるんだもの。普通はこんな時に隣の世界に渡すんだけど、第十一世界に渡すより先に第十三世界の方に引かれちゃって。隣の第十三世界は当然生命が住める状況じゃないから第十四世界に渡したの。
そしたらちょうど第十四世界の九号ちゃんが転移してたらしくて、繋いだ穴にハマっちゃって第十二世界に跳んじゃったのよね。まあ偶然って怖いわ。
幸いにして二人ともそれぞれの世界で生きてるみたいだし、たまたま、本当にたまたま同一存在だったのよね。これは偶然なのか私よりも高位の神の仕業なのかは分からないけど。
いや、むしろ転移のタイミングで歪んでた事を考えたら魂が代わりを求めて惹き合ったのかもしれない。ともかく、私は二人を夢で繋いで色々フォローする事にしたのよ。
場所は第十三世界の跡地。一応色々揃えようと思ってはいるけど世界に力が足りないのよね。リセットしたばかりだから。今のところは話し合いのテーブルと椅子があればいいよねって思ってる。庭園欲しいよね。
そう、第十三世界は作り直すことになってるのよね。で、そういう時は新しく力を込めないといけないんだけど、最近欲しいもの多くてちょっと神気を無駄遣いしちゃってね。第十三世界に回せる分が残ってないの。
そこで、賢い私は考えました。第十二世界と第十四世界からちょっとずつ持ってくればいいと。幸いにしてティアちゃんも九号ちゃんもそれぞれの世界で理の違う力を使ってくれてるので、それぞれの世界からの力が移動してたりするのよね。
世界から力が移動すると道が出来るからその途中で色々中抜きしてたら大丈夫。問題ない。運ぶ為の必要経費みたいなものだから普通に第十三世界に降り注ぐんだよ。だから使えば使うだけ第十三世界も潤うって訳。
さて、それぞれの世界でお互いが苦労してなんか力をいっぱい使ってくれたお陰で、第十三世界の修復も早まりそうなので、二人にはお礼をすることにしました。
顔を合わせなかったのは神たるもの軽々に出てくるものでは無いと思ったからよ。決して、二人に怒られるから黙っておこうと思った訳じゃないわ! いや、悪いとは思ってるから至高神には言わないで! 創造神から降格されちゃう!
……コホン。えー、お礼としてそれぞれの能力に沿ったものにしておいたわ。ティアちゃんには魔法を、九号ちゃん……えっと、もうキューちゃんなんだっけ、には超能力を。それぞれ自然な感じで使える様にしといたわ。気に入ってくれるといいんだけど。
えっ、使い方を伝えなくていいのか? そんな事したら色々バレちゃうじゃない。それにこういうのはなんかピンチの時に頑張ったら発動しました!って方が盛り上がるでしょ?
それぞれの世界で生き残るのはそこまで難しくないはずなのよね。第十二世界は剣と魔法のファンタジー世界だけど、魔王とかそういうのはいないし、あるのはダンジョンとモンスターだもんね。あ、貴族とかは居るけど。人間同士の争いは関与しないよ。そこは人間の自由だもの。
第十四世界はまあ戦争とか起こらないとは思うけど、一歩間違えれば危ないのよね。各国で超能力開発が秘密裏に行われてるし。まあ八洲ならご飯も美味しいとこだし大丈夫でしょ。あー、でも隣のスラヴ帝国とかアメリカ連邦とかはちょっと厄介かもね。超能力合戦なら兵器汚染も起こらないだろうし。
二人が生き残れるかは心配してないけど、なるべく長く生きてくれないと第十三世界の修復が遅れちゃうからね。また作るのかって? いや、査定がね、あるんだけど、その時までに何とか体裁だけは整えておかないと大目玉食らっちゃいそうなのよね。
さすがに降格とかはないよね? 世界が一個滅びただけだもん。先輩とか間違って五ついっぺんに消したとか言ってたもんね。あの時は復旧作業大変だったなあ。そういえば最近先輩見てないや。
……なんか怖くなってきた。よ、よし、気を取り直して二人の様子を見守らなくちゃ。他の世界? いいのいいの。他の世界は他の世界で安定してるから。私が特別働くことはないと思うのよ。
はいもしもーし、こちら創造神の女神で……えっ、至高神様がお呼び? 私を? えっ、えーと、直ぐに行かないとダメですかね? ダメ? なんか怒ってた? 嘘でしょ!?