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卒検(episode171)

ハヤト君は頑張ったよ

 軽く昼食をとってから午後の訓練に移る。昼食はサンドイッチだ。私、私が作ったの! パンの耳切ってバターやら塗って間に挟んたの。料理じゃないって? いいえ、料理ですよ! なお、間に挟むスクランブルエッグとかは博美さんか作ってくれました。


 午後からの訓練は教養科目である。あれ? 身体を動かすトレーニングじゃないの? あ、身体を動かすのはこの後にジムでやるんだって。


 という訳で勉強である。私は別に得意ではないが苦手でもない。元の世界ではそれなりに知識層だったからね。魔法使いは知識層なんだよ! それに貴族だったし。


 幸いにしてハヤト君は勉強は嫌いではない模様。とりあえず四季咲を継ぐために頑張って勉強はしたらしい。あとは、負けず嫌いなところがあるからクラスのやつには負けたくないんだと。まあクラスにいるのは四季咲だけじゃなくて他の家の子どももだったみたいだから努力するしか無かったのかもしれない。


 この勉強は学校の課題なんだとか。ハヤト君の通ってる学校は子どもでも公務で出掛ける立場の人が多いとかで、急な休みにも対応できるんだとか。まあこれは公務じゃないんだけど。


 勉強終わってジムへと移動。プールである。外は暑いからね。気温が三十度を超えるのはザラで、下手すると四十度に達するって言うんだから。まあここは割と涼しいけど。


 ハヤトはまずは水中で歩くところから始まる。せっかくなので私達も水着で登場だ。プールに入りたいからね。


 ガンマさんのスクール水着だ。胸にちゃんとネームワッペンがついててひらがなで「がんま」と書かれている。普通は名字だと思うんだけど。


 博美さんはピンクのワンピでフリルがついたスカートを履いている。もしかしてスカートの下はは露出? そんな訳ないか。


 ジョキャニーヤさんは褐色の肌にビキニ。日焼けとかじゃないから肩紐のあたりも満遍なく褐色だ。ちなみに肩紐はないタイプ。いわゆるバンドゥビキニというやつだ。下半身もハイレグ。ちょっと刺激強すぎない?


 私? 私のはホルターネックってやつだよ。便利だよね。首で釣るから胸がそこまで苦しくないの。まあ水に入ったら浮くんだけど。色は黒だ。まあ私の肌は白いからね。人種的な問題だ。下半身は大人しめだよ。ジョキャニーヤさんじゃあるまいし。


 ハヤト君は私たちの水着姿を見ると少し前かがみになりながら離れていった。あーまあ、そういう年頃なんだろうね。それからは歩くのを終えて泳ぐに切り替え。クロールや平泳ぎ、背泳ぎを泳がせた。バタフライは腰痛の原因になったりするらしいからやらせない。


 水泳終わったらジムの機械を使って運動。こういうのは決まった筋肉を鍛えることが出来るんだとか。正直実用的な筋肉にはならないだろうからやらせない方がいい気もするんだけど、効率よく筋肉を育てるならこっちの方が良いだろう。


 こういう設備を使ったのはハヤト君も日常的にやっているかららしく支度もスムーズだった。おもりの個数は少なかったけど。


 夕食の支度はハヤト君にも手伝ってもらうことに。働かざるもの食うべからずだ。ハヤト君は料理などやった事ないのだが、先生の博美さんの教え方が良かったのか包丁の使い方から学んでいた。


 ちなみに博美さんは教えながら私たちの分の夕食のおかずも作っていた。私も手伝おうと思ったんだけど、何を手伝っていいのか分からなかったから出来なかったよ。ジョキャニーヤさんは手伝う気なんかなくてテーブルに座ってご飯を待っている。ガンマさんは……高さの問題があるので手伝ってない。


 そんな感じで一日が終わりそのまま就寝。翌日も細部は違うがそれなりに色々やっていた。そのまま一週間ほど過ぎて一先ず訓練を終ることになった。まあハヤト君の学校の方の都合だ。


 ヤマト氏は奥さんと離婚して四季咲の下っ端として修行し直してるんだとか。奥さん、いや、元奥さんは四季咲を出て訴訟の準備をしてんだとか。なんでも経済的DVとか言ってたな。


 さて、卒業試験である。目標は山の中でうさぎを捕まえてくること。ノルマは三羽である。まあ出来るんじゃないかな?


 ハヤトが山の中に入っていく。山歩きも慣れてきたものだ。けもの道にしか過ぎない道を注意深く進んでいく。


 一羽目。木の実を食べているのか静止してガジガジやってる。ハヤト君が間合いを詰める。風下からゆっくり近付いてうさぎを捕まえた。うさぎは必死で蹴って逃げようとするが、宙に浮かんでいるのでそれも出来てない。ハヤト君が首を絞めて気絶させる。一羽目クリアだ。


 二羽目もそんなに難しくなかった。だけど、ハヤト君が音を立ててしまったのでそのまま巣穴に飛び込んだ。このまま巣穴に手を突っ込むと齧られたりして怪我をするかもなので煙で燻し出す事に。見事な頭脳プレーだ。


 三羽目を探して彷徨っていると、なんか大きいものが動く気配がした。ハヤト君は好奇心に突き動かされ、その音の正体を確かめに行った。


 減点一である。ハヤト君は指揮を執る立場なので怪しい事があったら報告して指示を仰がないといけない。いや、本来なら自分で判断を下すんだろうけど、そこまで求めるのは時間が足りてない。


 ハヤト君が行った先には四足歩行の獣、デカい体躯のイノシシが一心不乱に何かを食べていた。キノコかな? トリュフとかいうキノコを見つけるのは豚の仕事っていう話もあることだし。


「ひっ!?」


 イノシシはハヤト君が怯んで声を上げてしまったからかゆっくりと頭をハヤト君の方に向けて、身体の向きを変えてきた。突進が来るモーションだろう。


 ハヤト君は……すくんで動けない。引き付けて交わせばまだいいけど鋭い牙に引っかかって足を抉られたりしたら元も子もない。やれやれ仕方ない。私がやるか。


 いや、ジョキャニーヤさんやガンマさんでも何とかするだろうけど、遠くからなら私が適任だろう。


「土門〈陥穽ピット〉」


 イノシシの進行方向に窪みが出来て、そこに前足がハマる。上手く動けないみたいでもがいているが無理そうだ。

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