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鍛錬(episode170)

親のあるやつは故郷くにに帰れとは言いません。ハヤトの親はアレだもの。

 そしてハヤト君を引きずり出して……あ、いや、引きずらなくても出てきたけど。そう連れ出して! そして階下に移動する。テーブルの上にはおにぎりが入っていたお皿とお茶が入っていたコップが置いてあった。


「はい、それじゃあ片付けましょうか」

「えっ?」

「えっ? じゃなくて。片付けないとハヤト君のご飯がありませんよ?」


 ちなみに他のみんなの席には既に朝ご飯が配られている。別に冷めるものではないのでまだ手はつけられていない。主食のパンは私がアイテムボックスに入れてあるので温かいままである。


 ということでハヤト君にお皿を洗い場に持って行かせて洗わせる。ちなみに水道もきちんと完備されている。上下水道共にだ。快適過ぎる……と思ったら他のところで働く時に齟齬が出ないようにするためらしい。


 水をジャーっと出してお皿を洗う。水で流しただけで片付けようとしたので頭をはたいた。


「痛っ、何すんだよ!」

「そりゃあこっちのセリフ。なんで洗いもしないで片付けようとしてんの?」

「はあ? 今洗ったじゃねえか。見てなかったのかよ」


 どうやらハヤト君の中では洗った判定らしい。よく見ろよ、まだ汚れついてんぞ?


「んだよ、別にいいだろ? 汚れとか落ちてんだし」

「ふーん、ならこの皿触ってみなさい」


 そう言って私はお皿にハヤト君の手を触らせた。ハヤト君は二回三回と動かしている。


「なんか、ザラザラする」

「それが汚れというものよ」


 当然ながらお皿にはお米粒の欠片がついている。更にはコップの中は茶渋あるだろうし。とりあえず水道の水出しっぱなしでもいいからスポンジ持って丁寧に洗わせた。心も洗ってしまえ。


「お、終わりました」


 へとへとになってるから椅子に座らせてそこに朝ご飯を並べる。スープをガンマさんが注いでくれて配っていく。なお、豆腐の味噌汁である。他の具はない。


 朝ご飯食べたらまずは午前の修行。始める前にはストレッチをするのだ。いや、私はそういうのした事ないけど、この世界ではそういうのが一般的らしい。なんでもスポーツ医学とかそういうやつなんだそうな。


 ウォーミングアップが終わって木剣の素振りでもやるのかなって思ってたらランニングからだそうだ。走るのは山道なので色々大変だよねって思ってたらまずは敷地に作られている陸上競技場でやるんだと。そんなものあるの?


 泊まってる家屋から少し離れたところに下に降りる階段があって、そこでは一面に陸上競技のトラックが用意されていた。、ここで世界陸上とか開けるんじゃない?


 ハヤト君は足はそこそこ速い模様。小学校でモテるには足を速くするしかないんだと言っていた。こりゃ好きな子にでも「足の速い人っていいよね」とか言われたんだろうか。


 ちなみに走る時のフォームとかデタラメだったらしいので、博美さんか教えてあげていた。足の上げ方から上体の状態、足の運び方など。うーん、博美さんみたいな美人にあんなにくっつかれたら別のものに目覚めそうだけど。


 ハヤト君は視線を博美さんの胸に彷徨わせて慌てて首を振った。まあ私ほどじゃないけど、博美さんはある方らしい。


 一通りやったら今度は競技場の端にある建物に移動。そこは所謂「ドージョー」というやつである。あ、リングとかサンドバッグとかは隣の建物らしい。ここは畳が床一面に敷いてある場所だ。


 対戦相手はガンマさん。身長的にはハヤト君の方が大きいんだけど、バランスは悪くない。まずは柔道らしい。組み合って何とかガンマさんを投げようとしてるけど、力任せにやってるのか投げる気配は無い。


 ガンマさんは殆ど動かずに、手首をちょいと返しただけでハヤト君の身体が宙に舞い、背中から叩きつけられる。


「ダメですよ、受身を忘れたらそんな風に痛い思いをしますから」

「先に受身から教えるんじゃねえのかよ!」

「身体に叩き込んだ方が忘れませんから。ほら、怪我しないように調節してまふから遠慮なく叩き付けられてください」


 ガンマさんは背中から遠慮なく落とす。落ちる前に体勢を整えているのが見えた。背中から変な角度で落ちたりしないように、という配慮だろう。


 二桁回数叩き付けられてフラフラになりながらハヤト君は受身訓練を乗り切った。次はサンドバッグを殴るらしい。いや、訓練としてはサンドバッグは予定に入ってなかったんだが、本人がやりたがっていたので身体動かすし、飴のつもりでやらせてみた。


 サンドバッグというやつは砂が入ってるから重いのだ。上から鎖で吊るされているし、その鎖はレールになってるので固定されたものを打つよりは負担が少ない。


 まずガンマさんが拳の握り方を伝授する。これは一般用なんだって。変な形で打つと手首痛めるからね。まあそうなったら私が治すよ。


「おりゃ、でりゃあ、そりゃあ!」


 口から気合いの言葉を吐きながらサンドバッグを殴る。にくいあん畜生の顔でも浮かんでは消えてるのかもしれない。……私じゃないよね?


「どうだ!」


 何発かのパンチでサンドバッグが少し揺れた。まあ頑張ったんじゃないだろうか? なんか誇らしげにしている。


 ちなみに博美さんはパンチで平気で二メートルぐらいは動かせるし、ガンマさんはノーモーションでサンドバッグを上に跳ね上げることが出来る。ジョキャニーヤさんに至ってはサンドバッグを動かさずに抉って中の砂を出すことが出来るそうな。もちろんハヤト君の目の前ではやらないでよく出来ましたも拍手を送っている。


 私? あー、うん、普通にパンチすれば揺らすことは出来るんじゃないかな? でも涙が出ちゃう。女の子だモン!


 頭の中で考えてることがわかったのかガンマさんとジョキャニーヤさんがジト目で私を見ていた。


 ……ごめんなさい。嘘です。涙なんか流しません。多分楽に揺らせるし、魔法使ったら建物の壁をぶち破るくらいには飛ばせたりします。


 魔法使っていいならサンドバッグを破裂させるのも難しくありません。あ、サンドバッグに手足は生やせないけど、動かすことは出来るよ!

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