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第百六十九話 前座

タイトルが身も蓋もねえなあ(笑)

 領主選定に関してはまず一人ずつがミリアムさんやスターリングさん、そして商業ギルドと冒険者ギルドのギルドマスターが面接形式で質問される。ちなみに私は護衛枠で冒険者ギルドマスターであるアーナさんの後ろに居る。いや、アーナさん私なんか要らんくらいには強いでしょうが。


「精神的な助っ人が必要なんですよ! 私、単なるギルドの受付嬢なのに·····」


 いやまあ命じられたとはいえ成り行きでギルドマスターになったのは同情するけど。


 さて、それはともかくまず一人目だ。クソガキならぬトーヤだ。見るからに不機嫌そうな顔をしている。何かイライラする様なことでもあったのだろうか?


「おい、こんな無駄な時間意味ねえだろ? どうせオレが領主になるって決まってんだからよ!」


 入ってくるなり開口一番にそんな事を言っていたが、真ん中に座って微笑んでいるミリアムさんを見て静かになりました。


「エンゼルス子爵家、三男、トーヤでしたね。まずお聞きします。この街の問題点とはなんでしょうか?」

「えっと、領主がいねえことだろ? いえ、·····ではないでしょうか?」

「でしたらその解決策は?」

「もちろんオレが領主になれば解決です」

「あなたが領主になって一番にしたいことはなんですか?」

「そりゃあまあお金の確認と徴税だな。徴税時期じゃねえかもしれないけど、領主就任特別税とかでいいと思うぜ。父上もやってたし!」

「·····分かりました。ありがとうございます」


 ミリアムさんが退室を促すとトーヤは愛想笑いを浮かべながら外に出て行った。


「まさか、エンゼルス子爵がそのような税を取っていたなんて」


 ミリアムさんがガックリしている。なんでもアーナさんやタータさんの話ではその様な勝手な税を取る領主は珍しくないのだとか。まあまあミリアムさんも寝たきりだったことだしね。


 次に入室させたのは成金デブもといザンス。不安そうなそれでいて堂々としてるような。体型のせいかもしれない。


「アストロズ男爵、ザンスでしたね。まずお聞きします。この街の問題点とはなんでしょうか?」

「そりゃあもちろん貿易が滞ってる事ですよ」

「でしたらその解決策は?」

「一度に全ての船を許可する訳にもいきませんから領主として取りまとめて順次許可を出していこうと思っております」

「あなたが領主になって一番にしたいことはなんですか?」

「貿易の一元化ですな。私がこの街の貿易を一手に取り仕切ります。そうすれば煩雑な手続きは必要なくなりますからね!」

「·····分かりました。ありがとうございます」


 ミリアムさんが退室を促すと、ザンスはホクホク顔で去っていった。


「言ってることは間違いじゃないんですけど、貿易を一元化ってそれは利益を独占したいって事でしょう? 商業ギルドとしては納得できません!」


 タータさんが興奮気味に言う。あと多分「順次」と言っていたが、その順番を決めるのもザンスなのだろう。当然ながら早く再開したい商会は金を出す。


 次に入室させたのはごうつくババアもといマリナーズ夫人だ。ミリアムさんが居るのに堂々としている。


「マリナーズ伯爵夫人、ドッピナでしたね。まずお聞きします。この街の問題点とはなんでしょうか?」

「この街はマリナーズ家のものなのに他の貴族がハイエナの様に狙っていることです!」

「でしたらその解決策は?」

「私が亡き夫の代わりに領主になります。そのうち生まれた子供に後を継がせるつもりですの」

「あなたが領主になって一番にしたいことはなんですか?」

「だから他の貴族の排除です! 不愉快な!」

「·····分かりました。ありがとうございます」


 おばはんはドスンドスンと音を立てて部屋を出ていった。ミリアムさんはため息をついた。


「あの人、この街にアスレチックス侯爵が居るのを知らないのでしょうね」

「そもそも貴族の夫人であって貴族ではありませんからね」

「あの、子どもが生まれたらってどうやって」

「そりゃあ愛妾の一人や二人は居るでしょうよ」

「でもそれって貴族の血筋ではないのでは?」

「まあ主家の乗っ取りかしらね。その前にマリナーズ家はお取り潰しになるんだけど」


 これは国王陛下からのお手紙に書き添えてあったことだ。まあ長々とミリアムに会えなくて寂しい、会いに行きたいと綴った後ろに書かれてあったので見つけにくかったんだけど。鞄の中も机の中も探してないので大丈夫。


 次に入室させたのは細目の男もといギル。初めはまともな代官かなって思ってたのに賄賂を取ろうとしていたなんて。いや、それが文官としては常識みたいなものだったのかもしれないけど。


「文官、ギル・レンジャーズでしたね。まずお聞きします。この街の問題点とはなんでしょうか?」

「船の発着が許可されていない為に冒険者たちの仕事が無くなる事です。そうなったら粗暴な冒険者たちが街で悪さをしないとも限らない」

「でしたらその解決策は?」

「船の発着を限定的にでも許可してやれば冒険者の仕事も出来るでしょう。もちろん仕事にありつけるかどうかは本人たち次第ですが」

「あなたが代官になって一番にしたいことはなんですか?」

「まあ代官ですからね。それなりに権限は制限されますが、新しい領主が居ない以上は代官として発着許可任務を出さないといけないでしょうな。その為には商人の皆さんにも協力していただかないといけませんが」

「·····分かりました。ありがとうございます」


 ギルは自信ありげな足取りでそのまま出て行った。ミリアムさんがガックリと肩を落とす。


「確かにこの街の問題点は船の発着が滞ってること。そうなんですが、なんかなんか違うんですよ。確かに王族の権限で出来ないことはないですが、それは濫用というものです。前例を作るべきではありません」


 アーナさんやタータさんもうんうんと頷いている。みんな納得はしてないみたいだ。さて、この後はヤッピの番である。まあヤッピが相手だからって手を抜くようなミリアムさんじゃないと思うけど。

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