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柔術(episode166)

訓練風景。

 マランジさんに治癒魔法を掛ける。まあ打撲傷だから痣にはなってるけど、出血してる訳でもないしね。内出血はしてるけど。


「硬い」

「そりゃあそうだよ。石だもん。というか岩? そりゃあぶつかれば痛いでしょう」

「し、しかし、それでは私の役目が」


 まあ組み技主体だとボディガードやる時に犯人は取り抑えられるだろうけど複数人だと難しくなるよね。それでもサバットは取得してるんだからステッキは使えるでしょうに。


 まあ鋼質化クライフでも使えれば何とかなるかもしれないけど。魔法薬作ってみる? なんかコストが凄そうな気もするけど。


「柔の精神は柔よく剛を制すですよ」

「柔よく……剛を……それは、一体?」


 柔らかくしなやかな者こそが、かえって剛強な者に勝つことができるという意味なのだが、なかなか理解されない。つまり、攻撃を受け止めるのではなく逸らしたりして相手のバランスを崩して技をかけるのが肝要だと。あー、言っても分からないかな?


「ガンマさん、お手本いいですか?」

「ええと、なぜ私なのでしょうか?」

「ガンマさんなら柔道もやってるかなって思いまして」

「はあ、まあ、柔術なら修めておりますが」


 ということでゲストのガンマさんにゴーレムと対峙して貰った。


「はー、大きいですね。これ、ティアさんが作られたんですか?」

「ええ、そうです。別に高価でもなんでもないので遠慮なく壊してください」

「分かりました!」


 そう言って私はゴーレムに指示を出してガンマさんに殴り掛からせる。まず振り下ろしのパンチをひらりと交わす。着弾した地面が凹んだ。あれ? 出力上がってる? やり過ぎたかな?


「ガンマさん、逃げて……」


 って言おうとしたらゴーレムの膝関節部分に蹴りをかましていた。ゴーレムの巨体がぐらつく。すかさず伸び切った腕をとって巻き込むように投げる。ゴーレムの巨体が宙を舞い、背中からドスンと落ちた。いや、嘘だろ、オイ。


「これが柔術ですね。関節に当身を叩き込んで投げる。基本的な技です」


 いや、相手が人間ならなるほど、で済むんだけど、岩の塊のゴーレム相手にやっちゃうともう言葉も出ないよ。


 そしてマランジさん。キラキラした目で見てますけど、あれは特殊な訓練を積んだ人のやることなんで一般人は真似しちゃダメだと思うよ。


「で、柔よく剛を制すだと片手落ちですので、剛よく柔を断つの方も覚えておいてください」


 そっちの方は私は知らんかった。変なおじいちゃんが「柔の道は一日にしてならずぢゃ!」とか言ってるやつにはそんな言葉出てこなかったような。


「ガンマさんよ、剛ってのはどうやるんだい?」


 マランジさんが興味津々という感じで聞いてくる。ガンマさんはニコッと微笑んだ。


「実演しましょう。ティアさん、このゴーレムとやらは破壊しても大丈夫ですか?」

「え? あ、うん。元は岩と木なので。魔力があれば組み直せるし」

「そうですか。じゃあ少しやらせてもらいますね」


 そう言って再びゴーレムと対峙するガンマさん。振り下ろしたパンチを横から殴り付けて払い除ける。……えっ!? なんでそんなこと出来るの!?


「案外横からの攻撃によわかったりするんですよ」


 そんな訳あるかぁ!ガンマさんの膂力が化け物だ。ジョキャニーヤさんが嬉しそうな顔してるもんな。えっ、ジョキャニーヤさんもあれくらいの質量なら横から殴り飛ばせる? そうですか。


 ガンマさんはゴーレムの懐に入るとジャンプして腹の辺りに手を添えた。そして、「破っ」という声と共に振動のようなものがゴーレムに伝わった。


「ふう、終わりました」


 ガンマさんが着地するとゴーレムの身体から岩が落ち始めてあっという間に土の山になっていた。まじで倒したの?


「浸透勁ですよ。大した技術ではありません」


 十分大した技術だよ! 謙遜もそこそこにしなよ。


 ちなみにジョキャニーヤさんも「私もやる!」って飛び入り参加したけど、ゴーレムの顔面吹っ飛ばしてしまった。本当に出来るんだ、あれ。


 マランジさんは浸透勁をガンマさんから習うんだと。ロジェロさんは……ボクシングのシャドーみたいなのをやっている。ジョキャニーヤさんが教えてくれるらしい。珍しいなと思ったら攻撃が当たらないように技術を駆使して回避しろって話だったみたい。


 ジョキャニーヤさんは最初は割とゆっくりだったが段々と速くしていく。ジョキャニーヤさんも素手だから当たっても痛くは……


 その間にフロリマールさんの相手を私がやる。得意がステッキでの素敵な(?)攻撃だから剣の心得がある私がやるのが良いだろう。いやまあ、剣はポンコツだったんだけどね。


 フロリマールさんの剣……というかステッキは遠間からちくちく牽制するための剣だ。いやまあそれこそ十二勇士とかいた頃とは魔剣と対峙する機会において隔絶してんだけどね。


「よーし、じゃあ捌いてね」


 私はアニメで見た王の財宝(ゲートオブバビロン)に倣って削り出した木材を背後から剣のようにして飛ばした。大丈夫。スピードは手加減してるから。


 フロリマールさんは向かってくる木の武器の攻撃を巧みに捌いていく。まあ時々捌き切れずに腹や腕に食らってたりしましたが。その度に治癒魔法を使ってあげたよ。


 その合間で薔薇連隊ローズレジメントの人や背鬼せき博美さんの方も指導した。まあ博美さんは私らの指導はそこまで必要とはしてなかったけど。あの人もかなりの傑物だわ。ゴーレムは縄で縛られたかなんかで動きを封じられていた。


 薔薇連隊の人たちはゴーレムに3人ひと組で当たっていた。ちゃんと集団戦術やってんだね。まあ時間は掛かったけど、何とか倒せてたよ。


 ちなみに諾子さんはクロエさんとメアリー嬢に淑女教育をやらせていたらしい。ジョキャニーヤさんとガンマさんもそっちに来なさいと少しの間見学させられていたけど……なんかしばらくしたら訓練に逃げてきていた。心做しか顔色が真っ青だったよ。私? 私は元貴族だもん!

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