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三人(episode163)

サバットは詳しくないので間違ってたらごめんなさい。

 まあ、なんやかんやでヤマト、ハヤト親子の権力が削がれて、クロエさんとの結婚の話はなくなった。しかし、ガキとはいえ、好色なのはどこの世界の男も同じだよなあ。あれで筋肉がもうちょい……いや、だいぶ付いたら考えなくもないんだけど。


「ありがとうございました。お陰で助かりました」

「いや、私はなんもしてないよ? 単にジジイを呼んだだけで」

「いえ、その、財界の魔王と呼ばれている莞児翁を呼んで助力を乞えるというのは並大抵の人に出来ることでは」


 財界の魔王とか呼ばれてんの? あのジジイ。私の観測圏内では子煩悩孫煩悩な愛情過多なジジイなんだけど。


 ジョキャニーヤさんはすっかり懐いちゃった。背鬼せき一族の博美さんともキャッキャとやってる。この博美さん、割と手練みたいで、ジョキャニーヤさんが警戒を解いていないことからもわかる。あ、私には警戒解いてるよ。私には負けたから警戒しないんだってさ。


「さて、背鬼の一党よ。お主らには陰に日向に諾子の身を護るように命じていたはずじゃな? なんじゃこのザマは!」


 さっきまでジョキャニーヤさんとキャッキャしていた博美さんを含めて、二十人近くの背鬼一族がその場にひれ伏した。


「それは私が手出を命じなかったからです。私は飽くまで部外者ですから」


 諾子さんがピシャリと言う。それまで怒気を漲らせていたジジイが一瞬でしゅんとなる。


「関係ないなどとそんな……」

「私は古森沢です。四季咲の跡目争いに関わるのはお門違いですから。今回は仲介のお願いがありましたから話を通したまでのこと。それよりも、仲介に立った者まで危害を加えようとするなんてヤマトも随分とあの女に毒されたものですね。だから言ったではありませんか。ヤマトではあの女は荷が重い、と。ヤマトにはもっと大人しい子が良かったのに、ヤマトが見出して来たからと婚姻を認めたのが悪いんですよ」

「ううっ、諾子、そこまで言わんでも」

「全く。だからお父様が一人でなんでも決めるシステムはやめるように言ったのに」


 ジジイが見るからにしょぼんとしている。これでまだ覇気の様なものは感じない。


「それでお父様、跡目の方は」

「うむ、次代が育つまで待たんといかんだろうなあ。ハヤトを教育出来ればなんとでもなりそうじゃが」

「あのハヤトがまともになる?」

「ふん、ワシは諾子を育てた男じゃぞ? 諾子程の傑物は無理かもしれんがそこまで難しくないわい」


 どうじゃ。と胸を張るジジイ。ドヤ顔だけど、諾子さんを育てたという実績は確かにバカに出来ない。


「お父様? 私を育ててくれたのはお母様とそのメイドたちであって、家に帰ってこないお父様ではありませんでしたけど?」

「諾子ぉ!?」


 あー、もしかしてこのジジイは昔の人特有の子育ては女の仕事って論調の人かな? まあ世代的に仕方ないところもあると思うんだけど。


 さて、一方プランシャール家。こちらはクロエさんが三人の執事を座らせて説教していた。まあ初手で取り抑えられてたからね。まあメガネのフロリマールさんは実務担当だと思うんで除外かな。ロジェロさんとマランジさんは確実にボディガード専門だったはずなのに動けなかったのは良くなかった。


 ジョキャニーヤさん? あの人はメアリー嬢が様子見に回ったからね。それで抵抗しなかったんだろうよ。その気になれば突破は簡単。どころか、部屋の中に殺戮の嵐が吹き荒れていたかもしれない。


 ということで個別特訓会が開催さることになった。参加者は私、ジョキャニーヤさん、執事三兄弟。今度産まれてくる時も三人揃って同じ串とか誓ったのかは分からない。背鬼一族より博美さん。薔薇連隊の皆さん、そして特別講師のガンマさん。なぜあなたが?


 あ、ちなみに諾子さんはクロエさんやメアリー嬢を連れてボックス席で優雅にお茶しながら眺めている。諾子さん曰く、これも精神修養の一環なんだとか。平常心、難しいよね。


「あの、十条寺のガンマでございます。僭越ではありますがアドバイザーとして呼ばれました。よろしくお願いします」


 自信なげにぺこりと頭を下げる。素の実力なら多分この中ではトップだろう。私とジョキャニーヤさんを除く。そう、私らは教える方なのです。あ、私はアシスタントね。魔法なんて私以外に取得出来ない技術体系だしね。あ、私の近くなら使えるのか。


「ではまず、プランシャールの方々の実力を見せて貰えますか?」

「分かりました。では、私から」


 フロリマールさんがメガネをくいっと直しながら進み出た。相手は薔薇連隊の人らしい。武器とかは構えてないけど、手にはステッキを持っている。紳士の嗜みってやつかな? 対する薔薇連隊の人は警棒の様なものを持っている。あれだ。ブラックジャックだ。百五十億いただきましょう。違うか。


 始め、の合図とともに薔薇連隊の人が突っ込んでいく。その手首を狙って叩き落とす様に杖が伸びる。ブラックジャックを取り落としたが突進は止まらない。そこに顎先をかすめる様なつま先蹴り。ぐらりと薔薇連隊の人の身体が揺らいだところで懐に入って投げ。おお、凄い。


「なるほど、サバットですか。「ラ・カン」「ボックス・フランセーズ」「リュット・パリジェンヌ」遠、中、近と卒なくこなせてますね」

「プランシャール家の執事はみなこれを取得しております」

「なるほど。では三人まとめてお相手しますね」


 ガンマさんがにっこりと笑う。三人まとめて。そんなこと出来るのだろうか? いや、私やジョキャニーヤさんは多分出来る。というか私は魔法で防いで仕留めるだけだし、ジョキャニーヤさんは各個撃破出来るだけのフィジカルがあるからね。


 言われた三人の執事はそれぞれにステッキを持ってガンマさんを囲む。三人で一人の獲物を狩るの三人戦術というやつかな。まあ勝てばいいんだけど。


 ガンマさんは身長百三十センチ。まあ小学生と同じくらいの身長だ。それも低学年。それで大丈夫なのかって思いたくもなるけど、クラーケン相手に触手の攻撃を捌いてた実績があるんだよなあ。あの時持ってたマシンガンはカモフラージュだったんだと。どれだけすごいのやら。

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