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覇気(episode162)

覇王色使ってますね、これ(笑)

「ジジイ! テメェ、出しゃばって来んじゃねえよ! さっさと引退してオレに譲りやがれ!」


 ハヤトが喚く喚く。そんなハヤトを背鬼せき一族が止めようとするが、それをジジイは制して言う。


「黙れい、こわっぱが! 四季咲総帥と五分で物を言える立場かっ! 身の程を知れい!」


 大音量だ。思わず薔薇連隊ローズレジメントの面々も、背鬼一族の面々も、クロエさんやメアリー嬢、更にはジョキャニーヤさんでさえもひれ伏してしまったほどだ。


 そしてハヤトの一家も何も言えずに身を低くしている。まともに立っているのは諾子さんと私だけだ。なんで私かって? そりゃあ私だって元々は貴族だもの。それに魔物の覇気に比べたらそこまで怖くないしね。


「ほう、薬師殿は立っておるのか。手加減したつもりは無いんじゃがなあ」

「なんですか、あれ。覇王色の覇気とかそんなやつ?」

「はっはっはっ。アニメの見すぎじゃな。単に鍛えた胆力をぶつけただけよ。その証拠に諾子は平然としとるじゃろう?」

「まあ、お父様。私はもう慣れてしまっただけですわ」

「よく言うわい。薬師殿、気を付けられよ。その気になればワシなど問題にならんほどの覇気を諾子は……」

「……お父様? うちに出入り禁止にしますわよ?」

「おお、すまなんだ。許しておくれ」


 ええと、なんか今断片的に得た情報によると諾子さんのはもっとヤバいの? いや、それもどうなのかと思うけど。


「ヤマト」

「は、はい!」

「お主の父の一純いずみは優秀な参謀じゃった。正直、早逝した時は悔やんだものじゃ。しかし、お主はその跡を良しとはしなかったようじゃな?」

「そ、そんなことは。ただ、四季咲の跡目のことを考えたら息子以外の適任者は居ないと」

「それを考えるのは貴様の役目ではないわ!」


 また一喝が飛ぶ。今度はヤマト氏に直撃したようでそのまま平伏してガタガタ震えていた。


 ジジイの目玉がぎょろりと夫人の方に向く。


「ひっ!?」

「政子さん。ワシは残念じゃ。ヤマトが自分の妻は自分で決めると連れて来た八家以外からの伴侶が分限を弁えぬ愚か者だったとは」

「あ、あの、そ、そんなつもりでは……」

「四季咲の跡目を乗っ取ろうとする事のどこが「そんなつもりではない」と?」


 政子さんはぐうの音も出ない感じに黙っている。そしてジジイはギョロリとハヤトに顔を向ける。


「ハヤトよ。お主が自分の意志で四季咲の頂点を目指すというのであれば応援はしよう。なにゆえ四季咲のトップを目指す?」

「えっ? あ、その、四季咲のトップって偉いんだろ? そしたら大きい顔出来るし、可愛い女はべらせて好き勝手出来んだろ? あと、勉強しなくて良さそう。それに父様も母様も喜んでくれるし」


 はぁ、とため息を吐いてジジイは諾子さんを見た。


「諾子や。お主がトップを目指していたのは何故だ?」

「あの頃は自己実現、誰にも負けたくなかった。男にも大人にも。女の私だって出来るって証明したかったし、何より四季咲をより良く発展出来るとビジョンがありました。……まあ、リュウジさんに出会ってどうでも良くなりましたが。やっぱり女の幸せは愛する人と結ばれて可愛い子どもを産むこと……」

「もうええもうええ! クソ、忌々しい。ハヤトよ。諾子とお主の差がわかるか?」

「はぁ? 知らねえよ。上に立ちたかったのは同じだろ?」

「バカものが。お主は上に立つまでで終わっておる。それからはトップの権力で何をするかしか考えておらん」


 ハヤトの面倒くさそうな回答は確かにトップに着くまでだ。大して諾子さんは? トップに女性でも着けることを証明する。それはグループ内で燻っていた有能や女性を発掘することに繋がる。更にはそこからの更なるビジョンの提示。


 つまり諾子さんは頂点に座ってから四季咲の版図を広げるにはどうすればいいかまで考えていたという事だ。つくづくこの人が四季咲のジジイに愛されている理由がわかるというもの。いや、あのジジイはそれ抜きでも愛してんのかもしれない。


「ヤマトよ。今よりお主のグループ内での役職を全て解く。しばらくは謹慎しておれ。ハヤトはワシが預かる」

「はあ? 勝手に決めんなよ」

「お主らに拒否権なぞありゃあせんよ。四季咲総帥のワシが命じておるのじゃぞ?」


 総帥としての絶対統制権。つくづく八家というのは貴族にそっくりだ。


「政子さん、あんたは実家に帰りなさい。なんならヤマト、お主がついていっても構わんぞ?」

「お待ちください。そ、それはグループからの追放という事ですか?」

「安心せい。お主の生家には何の影響も及ぼさんようにはしておこう」


 ジジイの言葉には「今のところ」とか「素直に従うなら」なんてセリフが隠れている気がする。政子さんは何も言えず突っ伏していた。


 ジジイは改めて姿勢を質してクロエさんとメアリー嬢の方へ向き、膝を着き頭を下げた。


「お二人には四季咲の管轄で非常に不快な思いをさせてしまった。心よりお詫びしよう」

「いえ、お気になさらず」

「私も、貴重な体験が出来ました」


 ジョキャニーヤさんはキラキラした表情でジジイを見つめてる。


「じいちゃん凄いね! あれだけの覇気、私らの長老様並みに凄いんじゃないの?」

「ほほう、解放闘士フィーダーインの現頭目に言われるとはなかなか面映ゆいのう」

「じいちゃんもアラービア語を喋れるの?」

「うむ、その長老殿に習ったんじゃよ」


 アラービア語で会話しだした。私はわかっちゃったから眉を顰めたよ。というかこのジジイ、解放闘士のトップとも知り合いなの? どこまで顔が広いんだか。


「薬師殿。どうやらワシはまだまだ長生きせんといかんようじゃ。材料などはこちらで融通しますゆえ、お力をお貸し願いたい」

「あー、まあ、延命薬とかはあまり自信ないんでその限りで良ければ」


 ぶっちゃけた話、アンブロジアを使えば不老不死薬とかも限定的ながら出来ないわけでは無いと思うけど、流石にやりすぎだろうから自重はしとくよ。

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