表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

323/426

第百六十一話 面談

「領主にしてください。なんでもしますから!」

「ん? 今何でもするって」

「自己紹介が遅れて申し訳ありません。グランドマイン王国第五王女、ミリアム・アリージュ・グランドマインでございます」


 立ち上がって優雅にカーテシーをかまして自己紹介。完璧な所作である。


「なっ!?」


 約三名が驚愕に目を見開いていた。あー、文官さんは知ってたな? 動じてない。というか目が細くて動じてんのか動じてないのかわかんないんだけど。


「第五、王女、姫殿下?」


 特に真っ青になって震えてるのはクソガキ……トーヤだ。そりゃあまあ姫殿下に対して「妾にしてやる」なんてほざいたんだもの。貴族としては「知らなかった」じゃあ済まない。


 まあ知らなかったのには理由があって、病弱で人前に姿を表さなかった上にスラムでの炊き出しくらいしか積極的に参加してなかったんだから。パーティに出て美味しい料理や酒に舌鼓を打ってるくらいならその料理を貧しい人達と分けて食べたいって感じだからなあ。つくづく天使だと思うよ、私よりも。


「はい、そうでございます。こちらには高台の別荘に静養の為に参っております。お陰様で頗る調子が良くて」

「そ、それは、大変、およろしいかと」


 トーヤの顔が土気色になっている。ザンスも夫人も特にミリアムさんに言及してなかったから何も言わずに嵐が通り過ぎるのを待とうとしているのだろう。


「さて、後任の領主に関してはそれぞれの主張もあると思いますし、一人一人お話を聞いてみようと思います」

「それならまずオレから……いえ、私から」

「オレから、で構いませんよ?」

「あ、はい、ありがとうございます。私は第二王子からこの街を治めるようにとお墨付きをいただいております」


 第二王子というとエルリックだ。まあ貴族派の筆頭みたいなやつだから自分の手駒をこの街に置いておきたいのかもしれない。


「私は第一王子からお墨付きをいただいております」


 ザンスは第一王子のラムザの名前を出してきた。これは、商人に貴族位を与えた事で勢力拡大を狙ったものだろう。マリナーズフォートの運営にも役立ちそうだし。


「私なんて王妃のリヴィエラ様から直々にいただいたんですのよ、この街を続けて治めるのはマリナーズ家に任せる、と!」


 夫人は王妃様か。まあ王妃じゃなくて側妃だろとは思うが。その証拠にミリアムさんが嫌そうな表情を浮かべた。まあミリアムさんに呪いをかけた張本人だもんね。


「あー、私は一応第四王子から言われてきたのですが。もちろん国王陛下からも頼むぞ、と間接的にはですが言われておりまして」


 あー、第四王子のグレイか。でも待てよ? それだとグレイは母親と違う意見を持ってることになるんだが。


「まあ、ワシも第三王子のジュラル殿下からこの街を治めよと言われたのだが、ワシには勤まらないと辞退させてもらったのだ」


 どうやらスターリングさんもそういう打診があったみたい。ただ、スターリングさんは肉体労働専門おばかなので向いてなかったんだろうな。


 正直、誰が一番優勢かと言えば代官で来たギルさんだ。そりゃあ国王陛下のお墨付きだもん。まあそれが本当に本物ならば、の話だ。だいたい、あの王様がグレイを使うかな? そもそも派閥が違う。なんか怪しい。


 スターリングの言葉にほっとしたのか話を進める気にはなった様だ。


「ワシはこの街の騎士団長、衛兵隊長として街の治安と安全を守っていきたいのだ。それを理解してくるものにお願いしたいものだ」


 これ、ミリアムさんが選んだら一発で終わるんじゃないかな? だってほら、それで王族票が二票になるし。ギルさん? 国王陛下の話は飽くまで本人が言ってるだけでお墨付きは第四王子のグレイのなんだよね。


「分かりました。ではお手数ですが、私からも審査をさせていただきたく」

「なっ!? 何の権利があってその様な」

「私も王族ですよ?」

「ううっ」


 ザンスが反論したがあっさりと撃沈した。と言ってもミリアムさんが提案したのはこの街で一週間暮らしてみて足りないところ、改革が必要なところ、重視する施策を提案してもらうということ。要するにオーディションだ。いや、アイドルとかじゃないんだし、個人面談ってやつかな?


「皆さんが滞在される場所はお好きに決めてください。この屋敷も開放します。いいですね、スターリングさん?」

「もちろんです。姫様がそう仰るのでしたら」


 スターリングさんの了承も取れて一週間後に再びこの館に集合するように約束してその場は解散となった。


 館にはトーヤと夫人が滞在するとの事。ザンスは一流ホテル。ギルさんは庶民的な宿屋だ。本来なら家を借りて住む予定だったらしいのだが、代官の座がどうなるか分からない今は借りれないのだとか。悪いことしたかなあ。


 私は……いや、もう放っておいて帰っても良かったんだけど、船を出せないらしい。マリナーズフォートの代表が代わったのでその人の承認がないと出港出来ないとか。


 じゃあなんで大半の人たちは帰れたかって言うと、その時の出航許可はもう出てたからなんだとか。そして出航許可が切れた今は誰も出航出来ない。あ、受け入れは出来るらしい。


 私は館の中に住ませてもらおうと思ったけどミリアムさんに誘われて別荘で住むことに。ぶっちゃけ私の転移をミリアムさんもザラさんも使いたいだけって気もする。あ、戻ったらザラさんに説教されてました。ミリアムさんが。なーむー。


 それから私は一応働きながら別荘に滞在した。じっとしてるのは性にあわないからちょうど良かったんだけど。やっぱりザラさんの日々の買い物に付き合わされてばかりだった。ここぞとばかりに様々な買い物を買いだめするのやめてください。そりゃあまあアイテムボックスもあるから平気ですけど。


 ザラさんの料理は美味しかった。私も少し教えてもらったよ。これで旅の間の料理もバッチリだ。ミリアムさんも料理やりたいって参加したけど、刃物の扱いからもう危なっかしくて見ていられなかった。ミリアムさんはそのままでいいと思います。あ、ヤッピの家にも手伝いに行ったよ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ