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銀行(episode160)

クソガキ無双

「あのバカどもが……今のハヤトになんぞ任せられるわけがないなかろうに。その父親であるヤマトでさえ役者不足だったというのに」


 役不足と役者不足。よく似た言葉ではあるが意味は逆だ。役不足は役の方が不足している。つまり、大御所声優にやられ役のモブをやらせるようなもの。そんなもん、ポプテでピピックなアニメぐらいしか無さそうですが。役者不足は役者がその役をやるのに相応しくない、紅天女を月影先生以外がやるみたいな話です。ところで結局あの話はどちらが紅天女になったのでしょうか? えっ、まだ続いてるんですか?


「あなたが言えば治まるのでは?」

「まあそれはそうなんだがいい加減次代も決めんといかんのでなあ。タケルが引き受けてくれれば……」

「いや、ハヤトとやらも孫じゃないの?」

「お主、諾子から聞いたのだろう? あやつの祖父はワシの弟じゃ。諾子とヤマトが従姉弟いとこなんじゃから当然であろうが?」


 つまり、四季咲本流ではないということ? いや、僅かに外れてはいるが本流には違いないのだろう。第一、この莞児ジジイには諾子さんしか子どもはいないらしい。いや、正確にはもう一人息子が諾子さんのお兄さんにあたる人がいたそうだが八洲を飛び出して行方不明なんだって。


「それじゃああのハヤトが四季咲を継ぐことはないの?」

「うーむ、以前にワシが倒れておった時にヤマトのやつが画策して跡目を継承しようとしていたのだがな。薬師様の薬で助けられてからはすこぶる調子がいい」


 薬師様というのは私の事だ。まあ血液浄化ポーションくらいならいくらでも作れるけど、それで寿命が延びたりはしないと思うよ。健康寿命なら延びると思うけど。不老不死の薬? あー、まあ世界樹の葉とかあれば出来るんじゃない? 若返りとか。


「あのクソガキを何とかしたいんで力貸してくれませんか?」

「うむ、わかった。ワシが動くとしよう。これで貸し借り無しでええな?」

「まあいいよ。でもそれやるとタケルに迷惑掛かるかなあ?」

「なあに、タケルには早いとこ子どもを作って貰ってワシの曾孫を次代にすればええんじゃよ」

「じゃあ凪沙との仲を認めてあげなよ」

「それは、それで、なんか、嫌なんじゃよ……おじいちゃん大好きとか言ってくれとったタケルが……ううっ」


 このジジイは一度タケルに説教された方がいいと思う。隣に諾子さん置いときゃぐうの音出ないだろう。


「……なんか不穏な空気を感じたんじゃが」

「……気の所為では?」

「…………まあよい。では、ワシの私兵を使うとしよう」

薔薇連隊ローズレジメント?」

「それは諾子のじゃからのう。ワシのは……まあ透波すっぱ乱波らっぱの類じゃよ」


 あー、それってもしかしてあの楓魔ふうま忍軍とかと同種類のやつ? 不思議思議摩訶不思議ふーまー。えっ、あれはるーわーなの? 不思議界の名前がフーマなんだからそう思っても仕方ないでしょ!


「よし、今向かわせた。あとからワシも行くから待っておれ」

「えっ、ジジイも来るの?」

「でないと諾子が勝手に動かしたと言われても困るからな」

「……勝手に動かせるんだ、諾子さん」

「元々は諾子に継がせるつもりだったからのう。なのに、なんで、あんな、野郎と……」


 これ以上はジジイの心にダメージがいきそうになるやつだからやめとこう。私は電話を切ると戻ろうとする。その廊下の途中で話しかけられた。


「ティア殿ですか?」

「どちら様?」

背鬼せき一族のくノ一、背鬼博美と申します」

「咳一族?」

「先程の莞児様が仰っていた様に忍びでございます。日頃は諾子様を付かず離れずで護衛しております」


 おー、やっぱり諾子さんにそういうの付けてたんだ。これ、諾子さんにバラしたらなんか怒られたりしないかな? いや、今は協力しないといけない場面だからやめとこう。


「……一族のものがこちらに向かっておりますのでティア様は席にお戻りを」

「私の名前も知ってるのね」

「はい。その内ティア様にも一人くノ一が付くことになるかと」


 それでいいのかとは思うけど今まで付いてなかったのがびっくりするくらいだからね。いやまあ私は古森沢だからそんなに注目されないんだろうけど。


「新しい会社を起こしたら警戒されるでしょうから。特に右記島の楓魔は厄介ですから」


 そうなのかな? って疑問もあるけど、戦闘力よりも情報収集能力とか妨害工作とかの方が厄介らしい。その辺は私も苦手だから任せたいところではある。


 私が部屋に戻るとハヤトのクソガキが話しかけてきた。


「デカいのでたかぁ?」


 いやらしい笑いだ。誰も止めない。諾子さんも静観してるからね。クロエさんもメアリー嬢も悔しそうにしている。よく見ると執事が三人とも取り抑えられている。ジョキャニーヤさんは大人しくしている。刀は突きつけられているけど。


「おおっと、お前も確かボディガードだったなあ。大人しくしねえとぶっ殺しちまうぞ!」


 そう言って私の後ろに回った黒服に私を取り抑えさせる。うーん、まあちょっと痛いけど長男……ではないな。長女、でもないか。まあ貴族……は元だね。とにかく我慢出来る!


「はっはっはっ、ざまぁねぇなぁ! オレに楯突くからこんな事になってんだぜ?」

「あなた、本気ですの? こんなことが知れたらタダではすみませんわよ?」

「そうですわ。国際問題になりますわよ?」

「はっ? いくらでも言い訳は聞く。例えば、プランシャール家とパラソルグループのお嬢さんが婚約を不服としてボディガードに襲いかからせた、とかなあ」


 あまりの悪辣さにみんなが絶句する。しかし、ここは相手のホームグラウンド。当然ながら目撃者などは全て四季咲の有利に働くような証言をするだろう。


「それでやむなく制圧。完璧な筋書きだ。おおっと、さっきも言ったが抵抗するなよ? 四季咲の全ては掌握してねえが一国や二国程度相手取れない様な資本力はしてねえからな!」


 四季咲の本質は金融。金の貸し借りに関しては鷹月歌たかつかでさえ手が出せない巨大な銀行連合の総本山である。

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