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傍流(episode158)

目付きの悪い男の子って何となくいいかなって

「で、そのプランシャール家との婚姻を申し入れている家はどこなんですか?」

「ええ、その、四季咲しきざきなんです」


 おおっと、なんかびっくりする名前が出てきたな。それならあのクソジジイに頼めば……いや、私から頼んでも一蹴されるか、なんかとんでもない交換条件出されるかだな。ケーンとかホロロとか鳴きたい気分だ。


「四季咲……ふむ、年齢的には本家筋だとタケルだが」

「いや、タケルはそもそも古森沢でしょうが」

「それもそうだけど、中には勝手に縁談を進めて四季咲に取り込もうとする奴らもいるみたいだからね」


「勧める」ではなく「進める」……つまり、勝手に話を段取っておいて、断れなくなってから伝えるとかそういう風に仕組むとかそんな感じ? やる事えげつねえ。


「そうだね。まあ莞児かんじ翁がそれを許すわけもないから当分は大丈夫かな」

「じゃあ誰が……あ、タケルって妹居なかったっけ?」

「サクヤちゃん? ああ、まあ居るけど、あの子は女の子だから婚約とかにはならないと思うんだけど」

「政略結婚なら性別の差とか大した問題じゃないのでは?」


 性別が問題なら性転換ポーションでも使えばいいんだし。……あっ、そういえばこの世界にはそういうの無いんだっけ? 元の世界には女の子にしか恵まれなかった貴族が娘を男にして育てて家を継がせるとかあったからね。いや別に女性が継いでも私はいいと思うんだけど、女性の授爵には色々と難易度がね。


「あの、相手の方のお名前もちゃんと聞いてきましたから。ええと、四季咲ハヤトさんという方で」

「なるほど。年齢的には少し下だが年齢差はタケルよりもこっちの方がマシだね」


 一体幾つなのかといえば当年とって十歳なんだとか。んんっ、まさかのメアリー嬢以下。ご注文はショタっ子ですか?


「……あー、あの子ですか」


 メアリー嬢も心当たりがあるみたい。聞いてみたら裕也さんの伴侶にはメアリー嬢のお姉さんであるデイジー嬢が嫁いで、メアリー嬢は四季咲のハヤトとやらが候補に上がってたらしい。八洲八家のツートップと縁を結ぼうとするとか、パラソルグループの人って野心家だったりする?


 その縁でメアリー嬢も人となりはそれなりに聞いていたらしい。なんでも自分が一番だと思い込んでる痛い子供だとか。いや、子供なんてそんなものだと思うんだよね。メアリー嬢が出来すぎなんだよ。


「数年前に会食でお会いしたんですが……確かその時はこんなのよりもコーラとポテチが食べたいとか騒いでいましたね」


 なお、体型的にはちゃんとスラッとしていたらしい。肥満体にはならないように身体を動かしたりしていたみたい。運動神経も良いらしく、得意なスポーツはサッカーなんだとか。友だちは蹴り飛ばすもの!


「そんな子どもとは嫌だとは拒否出来ないんですか?」

「相手は四季咲ですから。私の方も伴侶候補がいるのでしたら良かったのですが」


 はぁ、とため息を吐くクロエさん。年頃なんだし伴侶くらいいるのでは?って思ったら学校はミッション系の女学校で先生にも男性は皆無なんだとか。なんか昔のエロゲーみたいな設定。


 となると身近にいるのが執事の方々ということになるが、執事の方々はどちらかと言うと兄とかおじとかそういう分類になるので恋愛感情とかは抱いたことないんだって。


「さすがには私もそれはまずいと思ってますので、婚約するのには障りはないのですけど」


 なんでも、向かうの条件が四季咲に嫁入りして八洲で暮らすというもの。それだとプランシャール家を継げなくなってしまうので、是非ともお断りしたいのだとか。


「そのハヤトとかいう子はイケメンだったりします?」

「クソガキですね」

「クソガキですわ」

「クソガキと聞いております」


 裕也さん、メアリー嬢、クロエさんが一斉に異口同音に述べた。これはどうしようも無い感じかな。なんならタケルにも聞いてみたいところだ。


「ええと、それなら諾子さんを頼った方がいいのでは?」


 そんな感じの意見が出たので私が電話してみた。


「結論から言えばダメね」

「ダメなんですか」


 諾子さんの答えは私の想定と違うものだった。てっきり諾子さんなら一秒で了承してくれると思ったのに。


「私は飽くまで古森沢だから四季咲の次期当主に関わるものには口出し出来ないの。それがタケルやサクヤに関するものなら口も出すけど。特にあの子のところは次期当主に意欲的だから。親子揃ってね」

「その人と諾子さんはどんな関係なんでさ?」

従弟いとこよ。ハヤトちゃんの父親が私の従弟」


 なるほど。だから割とよく知ってるのか。諾子さんが本流の娘だから傍流なんだろう。


「だから今度は力になってあげられないわ。まあせいぜいが会談をセッティングしてあげる程度ね」


 いや、それだけでも十分にありがたいんですけど。早速私たちは諾子さんにお願いした。会談予定日は一週間後。クロエさんの予定もあるんだけど、と思ったらクロエさんは一度帰って色々準備をしてくるそうな。また執事さんたちも着いてくるのかな?


 それから洋館の方は家具を手配したり、必要な備品を揃えたり、ついでに渡辺翁にクロエさんのお爺さんの絵を洋館内に飾らせてもらったりした。これが見事な風景画と……まあ、飾る訳にはいかない絵もあったよ。裸婦像だよ、言わせんな! それも洋の東西を問わずね!


 そんなこんなで一週間後。再び空港に迎えに行った。今度は裕也さんに車を出してもらったよ。このまま会談場所に移動するんだとか。


 車を走らせて辿り着いた場所はなんかすごい立派な八洲家屋。神殿造りとかいうんだろうか。なんか聞いた事ある。それにしちゃ神々しさよりも自然が沢山な感じだけど。池にいる鯉とかカラフルだよね。そのうちきょうあくになったりしないよね?


「あらぁ、着いたのね。四季咲別邸にようこそ」


 中で迎えてくれたのは諾子さん。そしてその向こうには不貞腐れた顔で座っている目付きの悪い少年と、厳しそうな見た目のメガネかけたオッサン、そしていかにも神経質そうなオバハンが並んで座っていた。

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