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法問(episode156)

執事の名前は十二勇士から取りました。

 そこに居たのは背の高い執事服を着た男が三人と、ふわふわした感じのお嬢さん……年齢的には私より少し下かな。胸のサイズも私より少し下くらい。十分大きいけどね。いわゆる巨乳の範囲ではある。


 そんなお嬢さんがこれまたふわふわなドレスに身を包んで……いや、あの、そのウェディングドレスかと見紛うくらいのふわふわさな衣装を飛行機の中でも着てたんですかね?


 三人の執事服のうちの一人(仮称:メガネ)がこちらにゆっくりと歩み寄ってくる。そしてお爺さんの前に来て一礼した。


「渡辺翁でございますね? 私、法国はプランシャール家に使えております筆頭執事のフロリマールと申します」


 渡辺翁って誰のことかと思ったらお爺さんの事か! そういえば名前聞いてなかったよ。


「これはご丁寧にどうも。アンリの奴は息災かね?」

「お陰様をもちまして。今回も八洲に来ると言って聞かなかったのですが、何とか宥めて諦めていただきました」

「ワシは別に構わなかったんだがな」

「いえ、貴族たるものやる事が沢山とありまして。物見遊山はご遠慮いただきました」


 物見遊山。なるほど。この度の訪問はそういう認識なのか。ちょっとお爺さんが可哀想な気もするが。


「そうか。まあよろしく言ってくれ。それであそこのお嬢さんがこの度の主賓かの?」

「はい、そうでございます。プランシャールの次代、クロエ様です」


 そう言うとフロリマールさんは後ろの二人の執事に指示を出した。二人に連れられてクロエさんはゆっくりと歩いてくる。


「お初にお目にかかります。クロエ・プランシャールと申します。在洲中は祖父が大変にお世話になったとか」


 にっこりと笑いながら八洲語で挨拶された。喋れるのか。いやまあ確かに外国から来るなら八洲の言葉を取得してからにしろとは思うけど。まあ私はズルだから言う資格ないか。でも私は強制的に連れてこられたんだもん! 今は感謝してるけどね。


「この者たちは私の世話役兼ボディガードの執事たちです」

「ロジェロだ」

「マラジジという」


 執事の二人は軽く頭を下げるのみだ。まあボディガードということだし、警戒をしているのだろう。


「初めまして。メアリー・パラソルと申します。米連邦はパラソルグループのものです。この度は縁あって渡辺翁と知己となりました。よろしくお願いします」


 こちらはメアリー嬢。法国語でのご挨拶。この子も何ヶ国語喋れるんだか。めちゃくちゃ頭いいよねえ。おっと、私も自己紹介しないと。


「あー、えーと、ティア・古森沢です。この度別荘を貸していただくことになったものです。よろしくお願いします」


 執事たちのびっくりする顔が見えた。私のおっぱいを見てる訳じゃなさそう。メアリー嬢はともかく私は庶民だもんね。法国語喋ったらびっくりもされるかも。まあ喋ってるのは法国語ではないんだけど。


「まあ、法国語がお上手なのですね。これは密談も無駄そうですね」


 あれ? なんか警戒されてる? どういう事だ? そんなことを思ってたらメアリー嬢が教えてくれた。


「相手の国の言葉で喋るのは「あなたたちの言葉はわかってるから密談するつもりなら隠れてやってください」という意味合いでして。私とクロエさんだけなら上流階級に共通する挨拶みたいなものと言いましょうか」


 あー。それをいかにも庶民な私がやっちゃったから驚かれてる、と? つまり、メアリー嬢だけじゃなくて法国語を喋れるメンバーで固めてきたよってアピールになってるのね。


「しかし、この人数ではワシの車には乗り切れんの。仕方ない。電車で帰るか」


 クロエさんは電車という言葉を聞いて乗ってみたいと思っていたそうな。執事たちは護衛が難しくなるからと反対したが、お爺さんが「それなら車組と電車組で分かれるしかないのう」と言ったら電車での移動に納得してくれた。まあそうだよね。分かれちゃったらボディガードの意味ないもんね。


 空港の最寄り駅、いや、地下にあるんだけど、そこから電車に乗る。正直お爺さんところの最寄り駅なんてわかんない。だから一旦は鷹月歌たかつかのお屋敷に行く事になっている。


「すごいです。本当に時間通りに電車が来るのですね!」


 電車が時間通りに来るのは当たり前だと思っていたのだが、法国を初めとした欧州では時間通りに来ることはないそうだ。下手すると一時間以上待たされるらしい。


 暫くは地下を進んでいたがやがて地上にと出る。地上では高い位置にレールが敷かれており、空からの景色を楽しむことが出来る。


 八洲の街並みをみてクロエさんは楽しそうにしていた。周りを三執事が固めてるんだけど。


「ここで降りるぞ」


 お爺さんの言葉で電車を降りる。駅名は鷹月歌本邸前。いや、鉄道の駅があるくらい使われてんの、この駅? それにしちゃあ私たち以外降りる人居ないんだけど。


「鷹月歌の資本で作ったから二、三の駅はその意向が取り入れられておるんじゃよ」


 お爺さんの説明に理解は出来たが納得は今ひとつだ。それは完全な私物化ですよね? あ、鷹月歌に陳情に来る人が使うんですか。それはそれでどうなのかと。なお、四季咲の銀行統括本部前とかいう駅もあるらしい。これも八家の運命さだめなのかね。


 駅から出たらすぐに鷹月歌の正面玄関が現れた。門番がこちらに向かってくる。


「何者ですか? アポイントはおありで?」


 あー、やっぱりアポイントは必要だよね。って思ってたらメアリー嬢が進み出た。


「ただいま戻りました。裕也さんにメアリーが戻ったとお伝えください」

「!? メアリー様! しっ、失礼いたしました! お連れ様も一緒に中にお入りください。すぐに裕也様にお伝えしてきます!」


 そう言って門番の人はどこかへと通信を始めた。メアリー嬢はそのままスタスタと入口に向かって歩いて行く。もうすぐ入口というところで入口が開いて、息を切らした裕也さんが走ってきていた。


「メアリー! マイスィートハニー! お帰り!」

「ただいま戻りましたわ、裕也さん」


 うん、嬉しいのはわかったから抱き上げてクルクル回るのは部屋で二人きりになってからの方が良いと思うよ。

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