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第百五十三話 恐熊

みんな大好きやられ役のフィアーベアさんでした。

 障壁バリアを駆使してフィアーベアを翻弄していたら騒ぎに気づいた冒険者の方々が助太刀に来てくれた。


 そう、冒険者である。アーナさんが冒険者ギルドに行ってギルドマスターから強請ゆすって来てくれたパーティだ。カッパー等級のパーティが三つ。欲しいのは実力もさることながら人手なのでありがたくお願いしたんだけど……


「何の騒ぎだ! うわっ、フィアーベアじゃないか!」

「な、なんだよ、こんなのが出るなんて聞いてないよ!」

「みんな! ここは僕に任せて早く逃げるんだ!」

「バカか! この人数連れて逃げ切れる訳ねえだろ!」

「もうダメだー」


 助太刀? うん、助太刀じゃあないね。ええとまあ銅等級ならこの為体ていたらくも仕方ないんだけど。ゴールドのグスタフさんは事も無げにずんばらりんしてたけど、あれはあの人がおかしいんだよね。


 フィアーベアではないけど野生のクマとなら戦わされたことがある。あの時は私も能力覚醒前だったから死ぬような思いで殺した記憶がある。その時よりもサイズ的には大きい。


 もしかして赤カブトとか言わない? 言わないかあ。あれは確か二十メートルくらいあるって話だし。どんだけ大きいんだか。お犬様の中に絶天狼抜刀牙が使える熊犬は居ませんか? 居ませんよね。そうですか。


 ともかくクマの身体能力は舐められない。舐めて手加減してくれるなら舐めろって言いたい。いや、臭そうだからやっぱなし。


 とりあえずクマの行く手を障壁で塞ぐ。素早く飛び退かれるとダメなので前後左右に満遍なく障壁を並べた。


 み出す混濁こんだくの紋章(中略)結合せよ 反発せよ 地に満ち己の無力を知れ 破道の九十・黒棺! ……ちょっと詠唱したくなりました。もちろん何も起こりません。せめて色を黒く出来れば雰囲気出るんだけど。あ、プリンおかわり。


「グオオオオオオオオオ!」


 吠える吠える。音までは遮断しないからね私はうるさいから耳でも塞ぎたく……あれ? なんか私の治癒ヒーリングが自動発動した?


 とか思ってたら周りの冒険者たちが地に伏していた。えっ、何事!? 一人に手を当てて鑑定サイコメトリ。えっと恐慌状態? あー、なんか聞いた事あるわ。恐怖で身がすくんで動けなくなるんだよね。


 残念だけど、私らはそういうのないように訓練されてたからね。いや、一号の這い寄る恐怖(ニャルラトホテプ)に比べたらまだマシだよね。三途の川が見えたもん。


 さて、目の前のフィアーベアを料理しなければいけません。キューちゃん三分間クッキングお好みのお時間ですよ。今日の食材は熊肉です。臭いがキツイですが、きちんと処理すれば滋味深い味わいになります。カレー食べたい。


 さて、まずは材料の確保です。というかそれが全てです。とりあえず拓けた場所にクマを移動させます。これは短距離転移ショートテレポートで接近して転移テレポートで連行すれば簡単です。


 よし、さっき肉焼いた広場だ。炎がまだ少し残っている感じ。微妙に焦げた人肉の臭いがするよ。発火パイロキネシス持ちのバカとかは嗅ぎなれた臭いなんだろうけど。あいつら家ごと燃やしたりするからなあ。だから隠密行動だってあれほと!


 はあはあはあ、ちょっと昔の記憶がフラッシュバックしたよ。まあいいや。そう、目の前のクマである。そいつは私の首を狙って振り下ろしの一撃を右袈裟の軌道で放ってきた。


 もちろんまともに食らう私ではない。そこには障壁を置いてある。私の位置からして右袈裟が来るのは必然だったもんね。……ヒップアタックとかで弾かれなくてよかった。


 私は接近したままの状態でクマの脇腹に手を当てる。纏絲勁てんしけい通背拳つうはいけん虎砲こほうか無空波? 違う違う。使ったのは転移だ。


 飛べ飛べくーまー、空高く。なーけなーけくーまー、星空に。ぎゃーおおぎゃーおおぎゃーおおぎゃーおお、悲しげに空でもがいて。以上、メロディラインはとんび。小学校で習った人もいるんじゃないかな。私はビデオ学習だったよ。いつかは私も空を飛びたいとか思ってたな。


 さて、無理矢理跳ばされたクマさん、空中で手足をバタバタさせてます。そりゃあそうだ。あ、近くにいると振り回した腕に当たるかもだから少し離れとくね。


 元の世界に限らずこの世界でも当然ながら重力というものはあります。当然ながら落下による衝撃は体重に比例するわけで。あと落下距離ね。


 十メートルくらいの上空から地面に叩きつけられたクマは「ぎゃん!?」と鳴いて這いつくばってた。うん、まだ死んでないのか。よーし、もう一回。クマさんのちょっといいとこ見てみたい!


 再度クマさんを連れて上空へ。今度は十五メートルくらいだね。クマはぐったりしている。諦観ってやつかな。転移の慣性を解除してやると真っ逆さまにクマが落ちていく。ぐしゃり、という音がして地面に大きな血の花が咲いた。


 私は地上に再転移してクマの様子を見る。へんじがない。ただのしかばねのようだ。いや、しかばねじゃなくてもクマは返事しないかな。ともかく死亡確定だ。あ、どこぞの怪しい王大人ワンターレンの方じゃないよ。


 さて、それじゃあアイテムボックスにクマの死骸を入れて。あ、血の跡が残っちゃってる。どうしよう。よし、冒険者呼んでこよう。


 冒険者たちの方に戻るとかろうじて動けるようになったみたいでクマの様子を気にしていた。きちんと倒したことを伝えたらほっとしていたよ。ついでに血の跡の処理も頼んだ。村の倉庫にスコップがあったのでそれで土をかけて貰ったんだよ。単純労働は苦手なんだよ。


 熊肉を出したら冒険者たちが処理して携帯食料にしようと加工してくれた。器用なものだ。まあ私には携帯食料は必要ないんだけど。だってアイテムボックス内は腐らないし。


 夜が明けて私は夜通し活動していたから眠くなったので寝させてもらった。ミリアムさんが膝枕してくれるっていうので甘えさせてもらったよ。ザラさんは悔しそうにしていたなあ。

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