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第百五十二話 帰路

マリナーズフォートへの道

「たす、たすけ、助けて、ぐだざい! お願いします! 欲しいものなら渡します。金ですか? 男ですか? 奴隷ならここだけじゃなくて屋敷にも居ますから!」


 おいおい、屋敷にまだ奴隷が居るのかよ。ってまあそりゃあそうだわな。この女のことだ。見目のいい奴を屋敷に確保してるんだろう。エイリークさんかさっさと屋敷に連れていかれなかったのはその有能さゆえだろう。


「あ、そう。じゃあそっちのお屋敷にも案内してもらわないとね」

「は、はひ」


 まあそれはともかく一旦はこいつらをマリナーズフォートに運ばねばならない。あと船の手配とかもね。長い旅にはなりそうだ。


 一先ず商都まで辿り着いた。ペペルさんは宿の手配があるとかで自分のお店に向かった。アーナさんはここまでかな?


「私は一旦ギルドに報告してきます」


 あれ? 「一旦」って今言った? まだご一緒なんですかね? まあ考えても仕方ない。私は屋台で食べ物を買って口に運んでいた。あー、うん、捕まってた皆さんにも食べさせてあげたいのはやまやまたけと、私が自分の懐から出すのにも限度があるんだよ。いや、金額的な限度じゃなくて心理的な限度ね。施しするほどでは無いもの。


 私は宿屋をとる。というか取ろうとして動き出したらペペルさんのお店の丁稚さんとやらが走って来て高級そうな宿屋に案内された。なるほど。まあ王女様を下手な屋敷に泊める訳にはいかないよね。


 ホテルは入った途端に天井の高さが高く広く開放的な風景に感じられた。白髪の男性がきちっとしたスーツを着てお出迎えしてくれた。他の従業員も整列している。


「ようこそいらっしゃいました! ミリアム王女殿下! 我ら一同、心寄りの歓迎でおもてなしいたします!」


 キュケロさんというらしい彼はこのホテルの支配人なんだとか。どうも王族や大商人などの御用達で、いわゆる老舗というやつらしい。


 で、他の皆さんはというと、ペペルさんの従業員用の宿舎を開放しているそうで、周りに家もない事からテントを駆使してみんなを寝かせたりしているらしい。


 とりあえず私はそっちに向かった。いや、確かにこの宿はいい所だけど、ちょっと他の皆さんが気になったんですよ。


 空き地に馬車が何台も止まって、出てきた人たちがテントを立てている。喧嘩とかは起こってないみたいだけど、皆さんなんかイライラしてるみたいで。あー、そうか、お腹すいてんのかな?


 まずはお腹を満たさないとどうにもならないよね。ペペルさんが料理道具やらは用意してくれてたみたい。材料は……用意してないらしい。そりゃあまあそうか。こんなに沢山な予定はなかったもんね。


 とりあえずアイテムボックスに入れている狩ってた肉類を出して提供する。ギルドに持っていけば多少の金銭にはなるけどそこまでお金に困ってないし。


 とはいえ、私の料理はいわゆる煮るだけ焼くだけ食べるだけのシンプルなもの。味付け? お腹に入れば同じでしょ。いや、作れないことはないよ? 本当だよ?


 私の後を追ってきたのかザラさんが手伝ってくれた。メイドさんということで私よりは料理できるだろうと思ってたらガッツリと料理をしてくれた。調味料とかは塩しかなかったはずなのに、いつの間にやら持っていたハーブやらなんやらで飽きのこさせない出来栄えだ。あ、食器がない? ちょっと買ってくるね!


 とか思ってたらアーナさんが冒険者ギルドから食器を持ってきてくれた。なお、まだあるとかで私が運搬の任を負った。まあアイテムボックスあるからね。


 みんなで食べる料理は味はともかく雰囲気が美味い。なんというかテレビで見た林間学校とか臨海学校とかそういうやつみたいな。私らが体験してたのはそういうのじゃなくてサバイバルだったもんね。タッチの差で三号に奪われたウサギの肉は忘れられないね! あの野郎、元の世界に戻ったら(シメ)てやる。


 お腹空いたら後はそう、お風呂だ。いや、お風呂というか身体を洗わせるのが正しいかな。だってこいつら臭いし。私のデリケートな鼻はもう限界だよ。いや、ご飯食べてる時から気にはなってたけど、まずは腹を満たさなければ始まらなかったからね。


 とはいえ、私には水を出すことなんて出来ない。魔法じゃあるまいし。解決してくれたのはアーナさん。冒険者ギルドに掛け合って、水門の使い手を集めてくれたんだと。みんなでブシャーって水浴びすれば途端に汚れが洗い流されて……うわっ、流れてくる水が汚ねえ! 私は大慌てで溝を掘って流れを街の外に誘導した。汚染水とか言われないよね?


 なんでも森には城下能力を持つスライムとかいうのが居るんだそうで。ボク、悪いスライムじゃないよ! とかそういうのだろうか。私としてはドラ〇エの方の丸くてプルっとしたスライムだと嬉しい。エフ〇フの方は割と原点に近いスライムだからね。触るな危険みたいな。


 夜は騒がずに就寝。明日になればマリナーズフォートを目指してまた旅だ。まあそこまで離れてないからね。途中で例の村に寄ったら廃村みたいになってた。こりゃあ酷い。当然ながら死体を片付けてる人も居ないので村中に腐臭が充満していた。


 お金を払うから埋葬を手伝って欲しいと帰還者の方々にお願いしたら有志が手伝ってくれた。ありがとう。自分がやった事だからちゃんと片付けないとね。とりあえず村の中央に積み上げて火を放つ。


 燃え盛る炎が肉を焼く臭いがして、なんとも言えない気分になった。えっ、料理? いやいやいやいや! この場で肉焼いて食えってのはちょっと勘弁して欲しい。村の中には果樹園があったのでそこから果物を拾ってきました。


 村を素通りして、少し開けた位置での夜営。これだけ人がいればモンスターは襲ってこないだろうって思ったらクマが来ました。フィアーベアとかいうやつですね。


 私もこの世界に来たばかりの頃なら苦戦していたでしょうが、今では違います。まあ戦い方的には苦手な部類なんですけど。今の私は念動サイコキネシス障壁バリアだって作れちゃうんだから! オラァ、かかってこいや!

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