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白駒(episode152)

白駒一家は黒駒一家から取りました。

「それでお家賃なんですが」

「タダでええ」

「えっ? いや、そういう訳には」


 お爺さんに家賃が月いくらかを聞こうとしたら受け取りを拒否されてしまった。なんで? あ、もしかして私が諾子さんの知り合いというか身内だから優遇してくれてる?


「この屋敷の清掃から何からやってしまいおって。業者に頼んだらいくら掛かるかわからんっちゅうのに。だからタダでええんじゃ」


 あー、屋敷を使うために掃除したのがとてもありがたかったらしい。でもそれでも本当の持ち主には認めてもらわないといけない訳で。それでお爺さんは法国のその人の家に連絡をとってみる事にしたんだって。いや、今までも時候の挨拶とかで手紙のやり取りはしていたみたいなんだけど。


「ふむ、ふむ、なるほど。分かりました。お待ちしております」


 国際電話を架けて、受話器を置く。なんとびっくり、黒電話だ。スマホは持ってないんだって。便利なのに。あ、借金取りに居場所を把握されたくない? 連絡がつくと困る? そうですか。


「先方さんはなんと?」

「ふむ、その方の孫とやらが様子を見に来るらしい。三日後じゃな」


 という事で三日後に再集合する事が決定。屋敷に家具などを用意しても良かったんだけど、その視察で「認められないわぁ」とか言われても嫌だったので許可を貰ってからにすることにした。


 そんな事を話しながら店に戻ると、黒服の男たちが店を囲んでいた。


「あっ、ジジイ、どこ行ってやがった!」


 その黒服の中にいる白いスーツの男。まあ確かに目立つ。他の男たちが黒服なだけに際立って目立つ。恥ずかしくないのかな?


「ふん。物件の案内、仕事じゃよ。それより、お客さんの前じゃ。帰ってくれんか?」

「そうはいかねえ。おいジジイ、返済期限はとっくに過ぎてんだ。大人しくこの店と不動産を寄越しやがれ!」

「何を言うておる。不動産に設定した抵当権設定でチャラになるだろうがよ。そういう契約じゃねえか」

「土地の価格は下がってんだ。元本割れしてんだよ! 大人しく追加で金払いやがれ!」


 白スーツの男は憤慨した様に叫ぶ。この場合、私は法律とかに詳しくないのでどうなのか分からない。口を出していいことかすらも分からないのだ。と思ってたら未涼みすずさんが口を出した。


「待ってください。追加で元本割れ分を取り立てる場合にはそれについて契約が別途必要でしょう。その約定は契約にありますか?」


 何言ってんのか全く分からないけど未涼さん、かっこいい!


「なっ!? お、オレらにはそんなもん必要ねえんだよ! オレらが損しないのが大事なんだ!」


 どうやらそういう約定は結んでないのか、それとも結んでるけど把握してないのからしい。


「どうしても払わねえってんなら身体で払わせてやろうか? よく見たらそこの女ども、全部いい女じゃねえか。大人しく差し出すなら許してやるぞ?」


 事もあろうに私たちにターゲッティングしてきた。いや、私たちはさっきお客って言われてたよね?


「紗霧、許します」

「はっ!」


 胡蝶さんがボソッと呟いた。それに紗霧さんが反応して姿を消す。何をやるつもりなのか。


 次の瞬間、白スーツの背後にいた男が一人倒れた。ガクン、と膝が落ちてゆっくりと前のめりに。だが誰も気づいていない。


「美鶴、うずうずしてますね?」

「分かるっスか? 友さん、やって来ていいッスかね?」

「飲酒しなければ」

「ちぇっ」


 そういう会話も聞こえてきたあと、美鶴さんがつかつかと歩いて黒服達に向かう。


「これはうどんでいっていう正中線を維持して歩く秘技の歩法ッス! 相手は無理な状況から打ち込まなきゃいけないんで隙は無くなるっス!」


 おお、なんかかっこいい。なるほど、打ち込むのに体勢崩さなきゃいけなくなるのか!


「あたっ!?」


 とか言ってたら黒服の一人に殴られたらしい。美鶴さんが頭を抑えていた。


「殴られてんじゃないですか!」

「あるぇ、おっかしいなぁ。確か漫画ではそうなってなかったんスけどねえ」


 って出典はマンガかい! いや、本当にそういう技術があるのかもしれないけど!


「なっ、なんでこいつ思いっきり殴ったのにピンピンしてんだよ!」


 殴った黒服が狼狽えた。あー、美鶴さんはタフだからなあ。強靭性は鬼化しなくてもあるみたいだし。


「お返しっス。ちぇりゃあ!」


 そう言って黒服に正拳突きをかます。黒服は吹き飛んだ。


「メアリー様、行ってもいい?」

「ええ、好きにして」

「はーい。殺さないようには気をつけるね!」


 そして満を持して最終兵器が起動した。ジョキャニーヤさんにとっては紗霧さんも美鶴さんもズルい!というところだろうか。


 ジョキャニーヤさんはその場で軽く二、三度ジャンプすると、着地と同時に消えた。強化反射神経なんて常時かけてないんだから見えないってば。


 気付くと黒服が四人地面に倒れ伏していた。血は……流れてないみたいだから当て身なんだろう。首の骨とかも折れてないと思う。折れてないよね?


「な、な、なんなんだ、お前らは! オレは、オレは、白駒一家のモンだぞ! どうだ、驚いたか!」


 白駒一家。聞いたこともない。まあ名乗られたら名乗り返すのが礼儀というもの。古事記にもそう書いてある。


「ドーモ、白駒一家=サン。ニンジャスレイヤー……じゃなくてティア・古森沢デス」


 ちゃんと古来より伝わるというオジギをした。ハイクは読んでない。合掌もしたよ!


「古森沢だと? どうせ分家かなんかだろ? ふん、舐めやがって!」

「私たちも自己紹介しますわね。右記島胡蝶よ」

「十条寺友子でございます」


 右記島、十条寺の名前を聞いたら顔色が変わった。ダラダラと冷や汗を流している。


「古森沢だけじゃなくて右記島に十条寺だと? 舐めてんじゃねえぞ? 八家の名前だしたらビビるとでも思ってんのか? なんなら鷹月歌とか四季咲でも連れて来てみろよ!」


 あー、まあ鷹月歌も四季咲も居るんですけどね。メアリー嬢も諾子さんもニコニコしている。

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