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恐喝(episode2)

ちょっと冗長? いや、でも必要な展開だと思うので丁寧にいきます。

「金貸し? あー、まあそうだな。借りるんだよなあ。返さねえけどよ」

「そうそう、気が向いたら返してやるって。そんな日は来ないけどな!」


 なんということでしょう! お金を貸すのに返済しなくていいだなんて。これは将来性を見込んだ投資、というやつでしょうか。そういえばうちのお父様もいくつかの事業に投資していらっしゃいました。成否はともかくとして。


「あのー、私も貸していただけませんか?」

「良いぜえ、その身体で返してくれよ」


 真っ黒な着物を着た人たちが答えた。いや、私はそちらのヒョロっとした方に貸していただきたいとお願いしてるんだけど。もしかして、この人たちと私のどちらかしか貸せないとかそういうのかな?


 となれば、蹴散らしてでも勝ち取るべし。ですが、どのようにすれば良いのでしょう。生憎と魔法に関してはあまり得意では無いし、この人たちはそれなりに屈強そうでもあるから肉弾戦も避けたいところだけど。


「あの、どのようにすれば」

「しつこいな、まあいいや。こんな公園誰も来ねえんだからついでにこいつ犯しちまうか」

「おお、良いなあ。じゃあお前ら、そいつの服破いちまえ」


 なっ!? 服を破くだって!? そんな事されたら街中を歩けないじゃない! こうなったら先手必勝。拙いけどそれなりに護身術は学んだ。まずは身体強化だ。油断してるならこれで不意をつける。発動の早さには定評があるんだから!


「〈強化ブースト〉」


 ボソリとコマンドワードを呟く。聞こえてなければいいけど。中にはジャミングしてくる人も居るから。


「えいっ!」


 力いっぱい私を抑えようとしていた人たちを吹き飛ばす。あれ? あの人たち身体強化使ってなかった? ラッキー。後は一人だけ。どうやって倒すか。そろそろ向こうも身体強化を使ってくる……


「なっ、なんなんだよ、お前は!?」


 ぶるぶる震えながら懐から何かを取り出す。あれは、ナイフ? もしかしてナイフ術の使い手、という事は暗殺者ギルドか何かなんだろうか。おそらくあのナイフには毒が縫ってある。間違いない。


「お、おい、お前、それぐらいにしとかねえと、これで刺しちまうぞぉ!」


 足をガクガク震えさせながら男がナイフをチラつかせる。あれ? 投げて来ないし、死角に入ろうともしない。初手で投げてくるかと警戒してたんだけど。まさかあのナイフ一本しか武器がないなんて事はないだろうし。そうだよね、暗殺者ギルドだもん。


「〈落とし穴(ピット)〉」


 私は隙を見せてる相手の足元に穴を開けた。下が地面で相手が警戒してない時しか引っかからないと思うんだけど、睨み合っても仕方ないし、何より、刺されるのは勘弁して欲しい。私の回復だと毒の強度によっては解毒出来ないからね。


「はぁ!?」


 いきなり足元に穴が空いて、ナイフ男はバランスを崩して穴に落ちた。うぐっとか聞こえたから打ち所が悪かったのかもしれない。穴を覗き込むと、気絶していた。


「あ、あの、ありがとうございました!」


 ヒョロい人が私に頭を下げてきた。えっ、どういう事?


「あなたのお陰でお金を盗られずに済みました。是非お礼をさせてください」


 あ、もしかしてこいつら盗賊だったってこと? いや、でも、こんな武器も大して持ってない、肉体強化もしない奴らが盗賊? 普通に警備隊に捕まるでしょ。しかもここ、街中だよね?


「あー、ええと、お金貸して貰えたりとかは」

「いや、まあ、少しくらいなら構いませんけど、お金に困ってるんですか?」

「お金っていうか色んなことに困ってるっていうか」


 なんと説明したものか、まずは現在位置を聞いた方がいいのかもしれない。そう思った時、私のお腹は空腹を訴えた。恥ずかしい! 貴族の娘に有るまじき失態。いや、もう冒険者だけど。あ、試練の途中だった。


「どうやらお腹が空いてるみたいですね。お昼ご飯をご馳走しますよ」


 ご飯をご馳走してくれるだって!? やっぱりこの人、いい人だ! よし、お世話になろう、すぐなろう。


「ありがとうございます」


 私は取っておきのスマイルで微笑んだ。そして彼に連れて行かれたのは何やら騒がしい場所。道を歩いているとなにかの店なのかかなり背の高い建物が幾つも乱立している。ヒョロい人はその内のひとつに入ろうとした。


 扉を開くとひんやりとした冷気が漂う。このひんやりさは感じたことがある。確か、それは、墓地。それも地下墓地カタコンベと呼ばれる場所だ。


「いらっしゃいませ、二名様ですか?」

「はい、そうです」

「こちらの席にどうぞ」


 女性が私たちを席に案内する。もしかして彼女は人では無い? 墓所の番人なのか? しかし、食事をするということだったが……もしかして私たちが食事にされるのか?


「ええと、ぼくは日替わり定食で、あなたは?」


 日替わり定食、確かにそう言った。つまり本当にここで食事ができるのか? よし、ドラゴンの巣に飛び込んだつもりで!


「私も、その、日替わり定食で」

「わかりました」


 そう言うとヒョロい人は何かのスイッチを押した。どこからともなくピンポーンという音がした。これは、なにかの魔道具だろうか?


「はーい、ご注文はお決まりですか?」

「すいません、日替わり定食二つ」

「日替わり定食二つですね、かしこまりました。お水などのお飲み物はドリンクバーのところからご自由にお取りください」


 そしてどうやら墓所の番人ではなく給仕らしき女性が引っ込んで行った。私が呆然としていると私の前にコップに入った水が置かれた。木のコップではない。ガラスでもない。不思議な素材だ。中の水には氷が入っている。もしかして高度な火門の使い手でも居るのか?


「ええと、自己紹介がまだでしたね。ぼくは古森沢タケルって言います」

「む、そうだね。私も名乗らねば。ええと、ティア……いや、ただのティアだ。家名はない」


 そう、ブルム家の名前は出さないことにしたのだ。私は冒険者だからな。とりあえずこのコモリザワタケルとかいう人物にここがどこなのかを聞いておかねばなるまい。早く試練に戻らねば。

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