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退職(episode148)

安美弥やすみやが保乃さんで洞爺丸とうやまるが未涼さんです。

「とりあえず落ち着きたまえ。……さて、いいかな。ええと、話を整理しようか。胡蝶さん、あなたはティアを得て何をしたいのですか?」


 オーナーの源三さんはとても冷静だ。みんなを落ち着かせて胡蝶さんに問いかける。


「そんなの決まってますわ! まずはあの豊満なおっぱいに顔を埋めて」

安美弥やすみや君は黙ってようね」


 保乃さんの妄想爆発ファイヤーな妄言をたしなめて源三さんは胡蝶さんの答えを待った。


「私は、ティアさんと会社を起こしたく思います」

「ほう? 法人の設立かね?」

「はい。ティアさんの能力を活かすため、そして八洲での影響力を考えて貰うためにはその方法がベストだと考えます」


 それを聞いて源三さんは「うん、そうだね」と頷いた。


「ティアちゃん、前も言った通りにパチンコ屋はいつでもやめてくれて構わないから。やりたいことが見つかったのならそっちをやりなさい」


 そう言って源三さんは頭を撫でながら言ってくれた。元の世界では父親ですらこんな風にしてもらったことなどなくて、思わず涙が出てしまった。私に選択権はなかったし、そもそも私を見てさえくれなかった。貴族の子女、それも順番の低いのは道具だもんね。


「ありがとうございます、……お父さん」

「ははは、未婚なのに娘が出来てしまったな」


 源三さんは撫でる手に力を少し入れた。髪の毛がぐちゃぐちゃになりそうだけど安心するから撫でていて欲しい。


「ええと、胡蝶さん。法人設立?に誘っていただいてありがとうございます。正直、パチンコ屋で働いていたくはあるんですけど、そうしない方がいいんですよね?」

「察しがいいわね。そうよ。正直に言えばナジュドから帰って来てすぐぐらいからあなたの周りには様々な諜報機関からの探りが入ってるわ」


 ぶっちゃけられた。というか気づいてはなかったんだけどやっぱりかという感じ。でもそれってラティーファさんとかメアリー嬢が一緒だからじゃないのかな?


「もちろんそれもあるだろうけど、あなたにも間違いなくついているわね。何しろ鷹月歌たかつか総裁候補の「本命」彼女ですもの」

「なっ!?」

「そ、そんな、やはり、裕也さんは、私のことなど……」


 いや、メアリー嬢が驚いてるけど本当に眼中に無いのは私の方なんだよなあ。というか裕也と書いてロリコンと読むくらいにはあの人終わってるもんなあ。裕也ロリコン、おお、なかなか。


「もちろん外野が騒いでるだけでメアリー嬢への愛は変わってないでしょうから疑うだけ時間の無駄なのですけど、それでもスキャンダルとして騒ぐやつは鷹月歌の内外に枚挙にいとまがないくらいです」


 まあ裕也さんの経歴にほんの少しでも瑕疵が付けられるならと騒ぐくらいはやりそうだよね。まあ声優が下ネタを配信で連発したとか騒ぐバカもいたんだし。どう見ても通常運転です。本当にありがとうございました。


「私が法人設立する事がその事の対処になる、と?」

「そうですね。裕也さんに近付いたのは法人設立資金を得る為で、鷹月歌で失敗したから右記島に近付く先を変えた、と見られるのではないかと」

「ティアちゃんが望むなら四季咲でいくらでもお金出すわよ?」

「義姉さんはややこしくなるから黙っててください」


 まあ胡蝶さんの説明はわかった。ということは鷹月歌は関わらせない方がいいんだよね。右記島だけでやるの?


「右記島、十条寺、鷹月歌、四季咲、古森沢。八家の中の五家が名乗りを上げているんですからなかなかに見ものでは?」

「あら、妖世川も加わって来るんじゃないかしら? ラティーファさんがいるんだし、外交案件でしょ」


 妖世川にはアナスタシアさんとかアンネマリーさんとか居るからなあ。まあ居なくても私が話せるんだけど、アラービア語。


伽藍堂ぐんたい清秋谷けいさつは関わってこないでしょうね。まあ脳筋しか集まってないと思うけど」


 そう言ってみんなでクスリと笑う。まあ妖世川は遅かれ早かれ来ると思う。アンネマリーさんはお友達だからね。


「随分大きな話のようにも聞こえるけど、まあ今更目立たないようにとは言えないよね。会社設立のノウハウなら相談に乗るよ?」

「ありがとうございます!」

「さしあたってはそこの二人かな」


 そう言って源三パパは未涼みすずさんと保乃さんを指差した。


「二人とも、ティアを手伝ってくれるつもりは無いかい?」

「ええー!?」


 パチンコ屋の店員だった二人を私に付けるって? いや、それは二人の都合というものが。


「はい、はいはいはいはい! やります! お姉様のそばにいるならやらせてもらいます!」


 食い気味に飛びついて来たのは保乃さん。いやいや、雇うにしてもメリットがね。


「は簿記二級持ちだからね」

「一応一級まで持ってますよ?」


 未涼さんが源三パパに答えた。まあパチンコ屋に勤めててもどっちも必要無いもんね。源三パパは入った時に二級取得の勉強中とか言ってたから二級は受かったんだろうなと見てて思ったらしい。実際はその上まで受かってたんだけど。


「連れて行ってもいいんですか?」

「もちろんだ。うちのパチンコ屋には勿体ないからな」

「ありがとうございます、オーナー!」


 とまあそういう訳で未涼さんと保乃さんが仲間に加わった! そういえばまだパチンコ屋からスカウトしていいぞ?って言われたんだけど、思いつくのは三馬鹿だったので慎んでお断りしました。


 えっ、凪沙? 凪沙はほら、すぐに寿退社しそうだし。というかタケルはいつまで凪沙を待たせてんのさ! 結婚式を二三回挙げられるくらいの金はあるんでしょうに。


「よし、メンツは集まったから次は会社ね。ついでにティアちゃんの新居も決めちゃいましょう」


 それから諾子さんの案内で不動産屋に行くことに。会社の場所を決めるんだって。やっぱりこういうのは表通りの高層ビルの一室ってのが定番なんだろうなあ。

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