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第百四十五話 拝謁

ミリアムさん、王位継承から脱落。

 さすがに年増の濡場をパノラマ大画面で観る趣味は無いのでそのままその場を離れた。ううーん、嫌なもん見ちゃったな。


 情報を整理すれば、ミリアムさんの生命を狙ってたのはあの側室のババアで、リシューとかいう奴が密通してたって事? 息子のグレイは妹の心配するいい子みたいなのに。でも顔の形からしてリシューの胤なんだろうな、グレイは。下手するとエルリックまで別の胤の可能性はある。


 さて、これからどうするべきか。私の主目的は王家のバックアップを受けて奴隷を解放して連れて帰ること。それにはミリアムさんかラムザの協力を得たい。しかし、ラムザは人格的にはあまり信用出来ない。となればミリアムさんのバックアップをした方がいいのだが。


 それから私は少しベッドでウトウトしていた。そしたら謁見をして欲しいという事で国王陛下に呼ばれた。昨日の徘徊がバレた? いや、そんなことはないな。


 謁見の間には国王陛下、王妃様、側室の方が居た。ついでに言えば第一王子のラムザもいる。エルリック以下他の王子は顔を出していない。


「そなたが東の大陸から来たというキュー殿か?」

「はい。その通りでございます」


 特に隠す事もないので肯定する。


「東の大陸からの客人は時々来るが王都まで来られるのは外交使節以外は珍しい。だいたいはマリナーズフォート辺りで取引をしておるみたいだからな。それで、そなたは何を求めてここまで来られた?」


 これまた隠す必要もない。というか協力しろとかそういう話でもないのだ。


「はっ、我が国より連れ去られました奴隷となった人々を連れ戻しに参りました」


 私の言葉を聞いて国王陛下の眉がピクリと動いた。ありゃ、もしかしてマズった? うーん、相手の立場に立ってよく考えてみよう。


 他の大陸の国から自国民が奴隷として連れ去られたから取り返しに来た。あれ?

  つまりはお前らの国民のせいでうちの国民が攫われて奴隷にされてるって殴り込みに来たってこと? つまり、トップの責任追及!


「……詳しく聞かせてもらえるか?」


 おっ、挽回の機会が与えられた。卍解じゃないよ? 万象一切灰燼と為せとか言わないからね。あれはまだ始解か。


「我が国を荒し回っていた海賊団が我々の国民を乗せて別大陸へと旅立ったと聞きまして。足取りを追っていたらこの国に辿り着きました」

「そうか。海賊団がのう。それは災難だったな」


 あっぶね! まあこれだと原因はこっちの国にあるみたいに思われたりするのであまりいい感じでは無いと思うんだけど、私はそもそも国使とかでは無いので別に構わんだろう。


「そうか。我が娘の生命を救ってくれたのもその縁ということか。しかし、それならば何故王宮に?」

「はい、東の大陸のポーションを求められまして、そのポーションが本当に必要なのかというのを確認するためです。冒険者ギルドから打診されておりましたので確認を」

「本来なら王宮への侵入は重罪なのだがなあ」


 国王陛下にチクリと言われる。言われなくても分かってんよ!


「存じております。しかしながら一介の冒険者である私ですから面会を申し込んでもすぐには面会できない可能性もあり、症状から一刻を争うことを感じ取りましたので強硬手段を取らせていただきました」

「ふむ、確かにな。そのお陰で娘は回復したわけだ。うむ、王宮への侵入はやむを得ない事として黙認しよう」


 おっ、この国王陛下は話の分かる人物だ。が、それに待ったが掛けられた。


「お待ちください父上。確かにミリアムが回復したことは喜ばしい事です。ですが、それはそれとして罰は与えねばなりません」


 第一王子、ラムザである。まあ私が妹回復させちゃったからまたミリアムが聖母として復活しちゃうもんね。でもあんたの奥さんはその役目嫌がってたよ? 言わないけど。


「罰と言われましたら甘んじて受けざるを得ません。死罪以外なら受け入れましょう」

「ならばこの者を奴隷として鉱山に送りましょう!」


 おいおい、あんたは平民の味方じゃなかったんか? あ、いや、「犯罪奴隷」は別なのかな。しかし、助ける側のはずなのに私が奴隷落ちかあ。


「何をバカなことを。娘の生命を助けて奴隷落ちだと? どこまでワシを恥知らずにするつもりだ!!」


 国王陛下がラムザを一喝した。まあ私からしても何バカ言ってんだ?って思ったよ。正直付き合ってられないって逃げようかと思ったくらい。でも国王陛下は大丈夫そうだ。


「私からも例を言います、天使様。娘を助けて下さりありがとうございました」


 王妃様が微笑みながら礼を言ってきた。その天使様はやめて欲しいなあ。まあ言い出したのはミリアムさんだけど。


「なるほど。天使が降臨したとなれば我ら人の子の法では裁けぬな。それで天使様はご降臨の見返りに何かお求めですかな?」


 すごいノリノリだ。まあそれなら私も要求出来るってもんよ。


「まずは、鉱山で働かされている違法奴隷を連れて帰る許可を。国王陛下の命令書でお願いします」

「うむ、貴族派の者共が違法な奴隷を使っているというならば取り締まらなければなるまい。それは引き受けよう」


 一つ目の要求はあっさり通った。まあ国王陛下としても本来は違法なはずの、しかも国際問題になりそうな奴隷なんて解放した方が安心だもんね。二つ目の要求はミリアムさんの事だ。


「二つ目はミリアムさんです。このまま王宮内に置いておくよりは静養の為に空気の綺麗な場所へ移した方がいいかと思います」


 本人の意思としては炊き出しなどをしたいんだろうけど、さすがに身の危険があるからね。本人的にも時期王位なんて狙って無さそうだし、あのザラとかいうメイドさんと一緒に王都から避難させたい。


「ふむ、静養か。確かにその方がいいかもしれんな。その静養先までの護衛をお主に頼むことは出来るか?」

「分かりました。乗りかかった船です。お引き受けしましょう」


 とりあえずどこに静養させるのかは分からないけど、王党派と貴族派がしのぎを削る王都に居て戦火に巻き込まれたら目も当てられないからね。

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