第百四十四話 王族
人間関係ドロドロです。
さて、第三王子ジュラルの部屋だ。こいつもどうしようもないクズだったらどうしようかな。いや、この人はノックして入る許可を求めてた人だったはず。ならばクズということもあるまい。
部屋の中を透視で覗き見ると中では静かに、かどうかは音が聞こえないので分からないが、大人しく寝ている姿があった。傍に女性がいるということもない。
部屋の中に転移する。ピクリとも動かない。こんなんで大丈夫なのかな? そう思いながら鑑定を行う。
【ジュラル:妹の病状を心配している。妹ながらスラムに赴くのは立派だと思う一方、スラムの人間には自助努力が足りないと考えている。健全な精神は健全な肉体に宿り、病気は不健全な肉体だからこそ発症すると考えていて、ミリアムの病気をご飯を沢山食べて運動すれば治ると思っている】
あ、こいつは単なる馬鹿だ。まあ今のところ病気が回復して欲しいとは思ってるし、次期国王選定にも興味はないみたい。その暇があったら身体を鍛えるとかそういう頭しかなかった。完全にシロだよなあ。
さてと、最後は悪役面で一番に駆け付けたぐれいだ。透視で部屋の中を確認。隣に女性が寝ている。歳の頃はグレイと同じ歳ぐらいの女性だ。このままだと起こしてしまうかもしれないので、治癒をちょっと応用。幸せな気分で起きないようにイメージを送り込んでみた。
まずはグレイからだ。綺麗な顔してるだろ? いや、してないか。太ってるからか寝汗が酷いみたい。
【グレイ:身体が強い訳でもないのにスラムに出向いて病気を伝染されるだなんてミリアムは大丈夫だろうか。母様に逆らえなくてエルリック兄様についてはいるがミリアムが心配な事には変わりは無い。医者も原因が分からんと言うし、大人しく寝ていてくれて回復してくれるといいのだが】
……あれ? グレイ君、ミリアムさんの病状の心配しかしてないぞ? もしかしてこの子素直になれないだけのいい子だったりする? よくよく調べてみたらミリアムさんに対しては健康的な問題で王位継承権争いに巻き込まれずに静かに暮らして欲しいと思ってるみたい。なんだよ、ツンデレか?
「余計なことを」って言ったのも、病気のままなら静養を理由に王位継承権争いから離脱出来るし、スラムにも行かないで病気を再度伝染されないだろうと思ってるらしい。
さらに言えば、第一王子のラムザがミリアムさんを目障りに思ってることに気付いてるらしく、エルリック兄様に付けば逃がしてやることも出来るが、ラムザ兄様の場合は後顧の憂いを断つ為に殺すことを躊躇わないだろうと考えてる。
うん、グレイの考えだとエルリックにつく方がまだ良さそうに思うよね。さて、隣で寝ている子だけど。目鼻立ちが整っているまあまあ美少女だ。グレイ君とは釣り合わない気がするがまあグレイ君も王族だもんね。
【リリシア:全く、ミリアム様はまだ良くならないのかしら。ミリアム様が回復しないとグレイ様の心配がずっとミリアム様に取られてしまう。このまま治らないままどこか田舎の村で静かに暮らしていて欲しい。自分のこともままならないのに民衆に施すなど言語道断だわ。まあ、民衆たちが可哀想ではあるけど、アルマ義姉様がいらっしゃるなら大丈夫でしょう】
どうやらこのリリシアという子はグレイ君の婚約者らしい。グレイ君がなんだかんだとミリアムさんを気に掛けているのが気に入らないらしい。かと言って殺すとかそういう手段に訴えるつもりもなく、隠遁生活でもしてて欲しいとは思ってるらしい。アルマのババアの事は信頼しているみたいだ。泥沼じゃね?
詳しく見たらリリシアとしてもグレイ君と婚約者になってからミリアムさんとはそれなりに仲良くしていたみたいなのでそれなりにではあるが気に掛けているみたい。他人のことよりも自分のことを優先しろって言いたいみたいね。
さて、せっかくなので国王陛下と皇后陛下にも聞いてみましょう。お二人共に同じ部屋で休んでいらっしゃる。二人とも服がはだけているからお励みになってたのかもしれない。いや、これ以上弟妹増やしてどうする。
まず国王陛下。心情的には民衆の味方をしたいところだが、宮廷内の貴族派の連中が猛反発していると。特にミリアムさんの病気を持ち出してスラムを焼けとまで言われているみたい。いやいやさすがにらんぼうすぎん?
王妃様はミリアムさんの母親。子供はミリアムさんのみ。というか国王陛下にはもう二人伴侶が居るらしいのだが、一人は第一王子であるラムザの母親。第三王子のジュラルを産んで死亡。後添えとなったのが現在の側室である第二、第四王子の母親。現王妃が後から入ってきて自分を押し退けたのを恨んでいるみたい。
王妃様は恨まれているのが分かるらしく申し訳ないと思ってるらしいが、実家の力関係でどうしようもないらしい。なお、他国の王族だということ。ミリアムさんはいざとなったら母の祖国まで逃げることになってるという。
ここまで来たら側室である方にも行ってみたかったんだけど、側室さんはなんか寝ないで頑張っていたみたい。何に? なにかの呪いに。いや、これ、確実にミリアムさん呪ったのこいつじゃん! って思うくらいには呪いの道具が転がってたよ。ありがとう鑑定。
そんな側室さんの部屋を訪ねてくる人。なんか気難しそうな顔をした男だ。ちょっとジュラルに似ている。ん? ジュラルに似ている?
「待たせたね、ハニー」
「ああ、お待ちしておりました、リシュー様」
二人はそのまま抱き合う。おいおい、側室って王様の嫁じゃないの? つまり不倫ってやつか? 奴らは部屋の中に入って行った。慌てて私は透視を発動させる。
ベッドに行き側室が服を脱ぐ。生まれたままの姿になって、ベッドに横たわった。ゆっくりと服を脱ぎながらリシューってやつが近付く。あとは、分かるな? 私は睦事を実況する気はないからこの後は省略させてもらうね。