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酒宴(episode142)

美鶴さん、酒さえ無ければ

 凪沙が甲斐甲斐しく諾子さんのお手伝いをしている。ちなみに胡蝶さんと友子さんはすごくすごく手伝いたくしていたけど、諾子さんが「お客様なんだから座ってて?」って諭してやらせなかった。いや、どっちかと言えばお預け食らった犬みたいな顔してたんだけど。


 あ、私? 手伝おうと思ったんだけど、私が手伝うと「嫁でなくともいいのなら!」とか二人が言い出しそうだもんね。私は遠慮させてもらったよ。


 テーブルの上にどんどんと料理が並べられていく。この中に男はタケル一人だ。ちょっとしたハーレムだね! 凪沙以外誰もタケルを見てないけど。


 みんなが着席して、諾子さんがそれぞれにジュースやお酒を注いで回る。ジュースなのは私とジョキャニーヤさん、メアリー嬢、それと紗霧さんだ。同じボディガードでも美鶴さんは気にせず飲むことにしたのだという。美鶴さん曰く、


「あたいが動けなくても友さんは十分強いし、何よりあたいは飲めば飲むほど強くなるんだよな!」


 酔拳ドランクモンキーかな?


「それじゃあ護衛の意味が無いじゃあありませんか。まあ諾子様の領域内でことを起こそうと思う人は居ないでしょうが」


 友子さんはため息を吐きながら黙認する事に。諾子さんが信頼されているのはすごいと思う。まあそうそう何かあるとは思わないんだけど。


「じゃあみんな、今日はお疲れ様。胡蝶ちゃんも亭主を無事つとめあげたみたいだから良かったわ。では乾杯!」

「乾杯!」


 狭いながらも家中に歓談が響き渡る。胡蝶さんと友子さんが諾子さんの両隣に陣取っており、キャイキャイと楽しそうに話している。凪沙はタケルとイチャイチャしてる。指摘すると照れて離れるだろうからそっとしておこう。


 ジョキャニーヤさんは紗霧さんと話をしている。いや、話というか、なんかお互いに情報交換してるみたいな感じ。上手く進まないので、ラティーファさんとメアリー嬢が通訳をしている。


 そして私は、なんか美鶴さんに絡まれてる。解せぬ。美鶴さんが私に手を伸ばして肩を抱かれ、引き寄せられている。力強いな! あと酒が入ると丁寧さが無くなるみたい。


「あっはっはっ、あんた強いんだなあ。あのジョキャニーヤとかいう小娘も強えけど、あんたのはなんか別格って感じ? なんで強えのか全くわからんね」

「そりゃあどうも。美鶴さんも強いんでしょ?」

「まあねえ。そんじょそこらのザコに負けるこたぁないよ、あたいは」

「おお、怖い。私も敵いませんね」

「いーや、あんたにゃなんかわからんが強さを感じる。面白いもんだよ」


 そう言って美鶴さんは酒を飲む。もうなんというかコップに注いで飲んでるのが面倒になったのか、手には一升瓶が握られている。


「なあなあ、ちょっとでいいからあたいとやってみないかい?」

「やってみる、というのは……私はそういう趣味はないんですけど」


 もちろん意味は分かってる。るじゃなくて戦闘るってことだよね。冗談じゃない。私は戦闘よりももっと平和的な暮らしがしたいんだ。いや、あんまり叶えられてないんだけど。


「面白い。私も見てみたい」


 ジョキャニーヤさんがいつの間にやら近付いて来ていた。紗霧さんも一緒だ。どうやらラティーファさんがメアリー嬢の愚痴を聞くフェイズに入ったらしい。貴種のの伴侶ともなればそれなりの苦労もあるんだろうね。一時的には私もその一人だっけど。あ、ジョキャニーヤさんもか。


「私はこの中ではティアの次に強い」

「おっ? あたいを差し置いて最強を名乗るたあ、おもしれえ。って、ティアの方が強いんかい!」

「正直、ガンマさんの話ではジョキャニーヤさんは兄様と同じくらい強いガンマさんから強いと認められたとか。その強さに興味はあります」


 おおう、紗霧さんまで煽る煽る。そこに諾子さんが声を掛けた。


「こーら、やんちゃはダメよ。今日はたくさん料理を食べてもらわなくちゃなんだから。戦いたいなら明日にしなさい」


 助け舟でも何でもなかった。これ、戦う流れになってない? 諾子さん諾子さん、私がどうにかなってもいいんですか?


「ここに居るメンバーならちゃんとティアちゃんの事を説明しておいた方が面倒はないわ。右記島うきしまの黒曜と呼ばれた胡蝶ちゃんと十条寺の金剛石ダイヤと呼ばれた友子ちゃんですもの」

「あの、そんな、諾子様にそこまで言っていただく程では」

「そうですよ、私たちの二つ名なんて諾子様の四季咲しきざきの真珠に倣って付けられたものですし」


 四季咲の真珠! なんか黒曜とか金剛石とかの方がすごそうな気がするけど、違うらしい。なんでも黒曜は磨かれてつくられるものだし、金剛石はカットされて価値が出るもの。つまり、手を加えられて育てられたもの、という「最高傑作」みたいな位置付け。


 一方で諾子さんの真珠というのは自然に育まれた「最高傑作」で、特に作られてないのに君臨してるみたいな存在らしい。というか諾子さんに対抗すべく女傑を作り上げようとそれぞれの家が頑張ってたらしい。それまでは女性の立場は家も継げない弱いものだったと言われている。


 そんな諾子さんが四季咲の後継候補という地位を捨てて、古森沢でも傍系のリュージさんのところに嫁いだ時はかなりの衝撃だったのだとか。まあそうだよね。そんなリュージさんは現在出張中らしい。諾子さんが寂しそうに教えてくれた。


 その日はお風呂に入ってみんながそのまま泊まるかことに。広い部屋に布団を敷いてみんなでゴロ寝だ。安宿の大部屋みたいな感じだけど、みんな女だから良いよね。あ、タケルは残ってる自室に籠りました。


 翌日、私たちは前に魔法の練習をした訓練施設にみんなで来ている。一晩寝たら忘れてくれないかなって思ってたんだけどそういう訳にはいかなかった様だ。


「いやー、酔っ払っちゃって申し訳なかったッスねえ。でも、戦ってみたかったのは本当なんでよろしくお願いするッス!」


 再び腰が低くなってる美鶴さん。お酒飲まなきゃいい人なんだよなあ。

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