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茶席(episode137)

人数一気に増えました。まあそのうちそのうち。

 会場には右記島うきしまの代表としてなのか、胡蝶さんが座っていた。メイドさんがテーブルに案内してくれる。主賓はラティーファさんだ。お誕生日席へとご案内。


 メアリー嬢はラティーファさんの横の席へ。まあこれも穏当。アラービア語を話せるのはそうそう居ないから。


「失礼します」


 そう言って出て来たのは白髪……いや、シルバーブロンドというのだろうか。ちょっと迫力ある北欧系の美人。シャドーバイキングタイガークローとか出さないよね?


「妖世川アナスタシアと申します。アーリャ、と呼んでいただければ嬉しいです」


 どうやら妖世川の人間らしい。八洲語も堪能みたいだ。いや、八洲の人だからそれは当たり前なのか。彼女はラティーファさんの反対隣に座った。メアリー嬢が通訳出来ない場合の通訳担当なのかもしれない。


「お目汚し失礼します」


 そう言って入って来たのは割と庶民っぽい格好の人だ。いや、普段着とかじゃなくてドレスコードはしっかりしてるけど身から出るのが下っ端オーラみたいな感じ。


「十条寺友子と申します。この度はお招きいただきましてありがとうございます。右記島の胡蝶様にはいつも並々ならぬご配慮をいただいておりまして」

「友子、もういいわあなたも座りなさい」

「は、はい、胡蝶様、それでは失礼いたします」


 残るは一席。そうしていたら場に緊張が走った。こつり、こつりと優雅に歩く音が聞こえる。音を出さずに歩くのではなく、わざと音を出して歩いている。何の意味があるのかは分からないのだが、自分の来訪をみんなに知らせるためなのではないかというラティーファさんの予想が正解なのだと思う。


 あ、私もジョキャニーヤさんも着席は許されていない。私はラティーファさんの、ジョキャニーヤさんはメアリー嬢の後ろに立っている。胡蝶さんの後ろには鼓太郎さんではなくすらりとした女性が、友子さんの後ろにはガラの悪そうな女性が立っている。


 足音はゆっくりと茶会の場へと近づいてくる。姿を現した瞬間に大輪の真っ赤な薔薇が咲いた。凄くゴテゴテした真っ赤なドレスを身にまとい、その女性は皆を一瞥した。


「出迎え、大義」


 上から目線すぎて頭がクラクラする。おいおい、鷹月歌たかつかはいないかもしれないが、ラティーファさんは外国の賓客じゃないのかよ!


四季咲しきざきからは姫が出られるとは。お久しぶりでございます」


 亭主となる胡蝶さんが姫と呼ばれた人物に頭を下げる。歳の頃は胡蝶さんよりも若干年長だろうか。三十路はギリギリオーバーしてそうな雰囲気だ。顔の造形は美人なのは間違いないが険が取れてない。ギザギザハートの子守唄ララバイかな?


「四季咲が姫、四季咲藤乃です。拝謁を許します」


 藤乃さんというのか。自分で姫って言っちゃうのか。いや、この場合は姫という役割があるのかもしれない。今度、諾子なぎこさんに聞いてみよう。


 ちなみに藤乃姫の後ろには女性が三人くらいついている。横綱土俵入りなら太刀持ちと露払いなんだろうけど、この場合はなんだろう。三人官女?


 椅子を引かれて藤乃姫が座る。反対側のお誕生日席だ。みんなが揃ったところで胡蝶さんが立ち上がった。


「本日は当家のお茶会にご参加いただき、ありがとうございます。拙い亭主ではありますが精一杯務めさせていただきます。それでは主賓のラティーファ様に」

「待ちなさい」


 そこでストップが入った。藤乃姫だ。


「この四季咲藤乃がいる場で余の者が主賓となるなど有り得ない」

「い、いえ、ですが、この度は我が右記島がラティーファ様にご迷惑をおかけしたのが発端でして」

「そのような瑣末事、私には関係ないわ!」


 おやおや、随分と変な話になってきたものだ。というか四季咲はなんでこんな人をここに寄越したのだろうか?


「胡蝶様、ラティーファ様は気になさらずに藤乃様に主賓として振る舞って欲しいと」


 メアリー嬢がワタワタしていたからか、ラティーファさんは反対側のアナスタシアさんに通訳をお願いした様だ。というか、簡単な八洲語なら話せるし、聞き取れるよね、ラティーファさん?


「そうですか。小国ながら身の程を弁えていますね。褒めてつかわします。それでは胡蝶、始めましょう」


 斯くしてこんな奇妙なお茶会が始められた。本当に大丈夫なのか。大丈夫じゃない気しかしないんだけど。


 右記島の厨房はかなりな手練ぞろいみたいだ。出されてくる食べ物が全て美味しい。いや、基本的に食べるのはお嬢様方だけなんだけど、最初のひとくちは毒味の名目でボディガードが食べてるんだよね。これもしきたりらしい。おかげで私はラティーファさんと半分こ。


 メアリー嬢の方はジョキャニーヤさんが余ったやつを食べるからみたいに言ってて、お残しはないみたいだ。私とジョキャニーヤさんをチラチラ見てるのは右記島のボディガードのお嬢さん。


 友子さんのボディガードは警戒することなくむしゃむしゃ食べている。藤乃姫のボディガードは三人でローテーションしながら毒味をしている。アーリャさんは通訳で忙しそうだ。ボディガードの女性も食べ物は口にしていない。


 話は他愛もない世間話みたいなやつ。最近の八洲の流行がどうだとか、こないだの動物園アンド遊園地な場所はどうだったのかとか、観光地がどうだとか、メアリー嬢には米連邦がどうだとか。


 ラティーファさんには石油の輸出、宝石類の輸出、八洲からの技術協力、インフラの整備、などの政治的な話もされていた。


「さて、少しお花摘みに失礼しますわね。皆様、ごゆっくりどうぞ」


 胡蝶さんと藤乃姫が連れ立ってお花摘み(おトイレ)に。ボディガードは動かないらしい。いや、動いた。胡蝶さんのボディガードたる女性が近寄ってくる。


「あなたが鼓太郎兄さんより強いっていうジョキャニーヤとやら?」

「???」


 ジョキャニーヤさんには八洲語はあまり通じないからね。私が通訳してあげよう。


「そうだが、お前は?と言ってます」

「私は楓魔紗霧。楓魔のくノ一よ」


 どうやら一波乱はありそうだ。ここでおっぱじめないよね?

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