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胡蝶(episode136)

男子禁制のお茶会。ソロリティかな?

「さて、邪魔者だんなが居なくなった事ですし、皆で一席どうですか?」


 いや、しれっと旦那さんを邪魔者扱い。というか健介さんが目を覚ましたらどうするんだろう?


「いやあ、素晴らしい。さすがは右記島うきしまの黒曜と呼ばれているだけの事はある。つくづく貴方のような方を伴侶に貰った健介さんが羨ましいですよ」


 裕也さんのリップサービスだろうね。だけど、メアリー嬢が居る前でそれはちょっと迂闊過ぎません?


「ご冗談を。帝王として呼び名の高い鷹月歌たかつかの裕也さんが私を伴侶にと望んでくださるなら一も二もなく飛びついてましてよ?」

「ひうっ!?」


 メアリー嬢が泣きそうになってる。裕也さんは気付いてないみたいだけど、でも、この子は泣くのを必死で耐えている。健気だなあ。


「お嬢様、今すぐあの二人を始末してもいいか?」

「や、やめてください、悪いのは、私なのですから」


 ジョキャニーヤさんがとんでもないことを言い、メアリー嬢がそれを制止する。話してるのは八洲語では無いが、私には分かるので問題なしだ。


 ちなみに、裕也さんと胡蝶さんの間に甘い空気などひとつもない。多分、居心地悪くて五分も持たないと思うんだわ。あれは、うん、やばい。


「どちらも有名だったのならそれこそ話が持ち上がっても不思議ではなかったのでは?」

「まあそうだね。実際に婚約一歩手前まで話が進んでいたらしいから」


 なんと! 実はそこまで話がいっていたのか。詳しく話を聞いたら画策したのは裕也さんの父親。自分が後継者になる為に息子をエサにして右記島を得ようとしたらしい。まあ下衆いこと。


 当時の裕也さんはどっちでもいい、という感じで興味の持てない人形みたいな感じだったらしい。ある意味「お似合い」ではあるよね。


 ちょうど同じ頃にパラソルグループのメアリー嬢がお姉さんであるデイジー嬢と共に八洲に来たそうな。当時デイジー嬢は二十歳。ボンッキュッボンなスタイルに煌めくような美貌の女王様みたいな感じだった。


 あわよくば裕也さんを篭絡出来たら、みたいな感じで会談に臨んだそうだけど、裕也さんの目に映ったのは愛らしいメアリー嬢。おい、だから当時は一桁だったろ?


 裕也さんは寝ても醒めてもメアリー嬢のことが忘れられず、また、メアリー嬢も初めて自分を女性として見てくれた裕也さんにベタ惚れになったのだとか。お巡りさん、こっちです。


 パラソルグループとしては、鷹月歌と縁続きになれるならと、メアリー嬢を差し出した。いやもう差し出したと言った方がしっくりくるぐらい。デイジー嬢の時は積極的に売り込んでたらしいんだけど。


 結局、デイジー嬢はハリウッドスターになって三回くらい結婚と離婚を繰り返しているんだそうな。現在の旦那さんは五歳歳下の若手俳優。


 一方の右記島は決まりかけていた裕也さんとの結婚が破談になったので、代わりに誰か、ということで、裕也さんよりも歳上で次期総帥の呼び声も高い(自称)健介に白羽の矢が立ったそうな。


 健介は女癖が悪く、部下の妻に手を出したりしていて問題になっていたが、右記島の才媛が伴侶になるということでそれらを一切精算したそうだ。まあ力づくだったのか、金を積上げたのかは知らないが。


 胡蝶さんとしては、そんな健介の行状を知っていたが、後々に自分が優位に立てる材料として黙認していたそうな。おお、怖い。


「あの、胡蝶さんには誰か想い人などは」

「そんな方は居ませんね」

「賢介兄さんとかは?」

「アレを慕えと?」

「ごめんなさい」


 などというやり取りもあった。まあ彼女もまだ若い。これからの人だ。出会いなんていくらでもありそうだが。いや、健介さんとの婚約は変わらないのかな?


「今回の件は鷹月歌が我々右記島に借りを作った、ということでいいですね?」

「……確かにそうだね。健介さんはまだ鷹月歌の人間だもの。例え、右記島と婚約していたとしても」

「破談にして貰えますか?」

「貸し借り無くなるなら喜んで」

「それはちょっとこちらが損しますわね」


 静かに話し合っているようで水面下ではバチバチやり合って落とし所をみつけようとしているのかもしれない。胡蝶は、側室でもいいから裕也さんの、次期総帥の伴侶になりたいみたいな要望を出していたが裕也さんが笑って流した。なお、メアリー嬢は過呼吸になっていた。


 一通り話して、胡蝶さんが鼓太郎氏に健介を引きずって来させて、微笑みとともに去っていく、ということでそれなりの決着となった。ただ、後日ラティーファ妃を交えてお茶会をしたいということは了承させられた。まあ実際に頭を下げる機会は大事だよね。


「メアリー、怒っているのかい?」

「別に、なんとも、怒っていませんわ! ええ、怒っていませんとも!」

「いや、あそこではああしないと色々と問題がね」

「ですから! 怒ってないって! 言ってますよ! 知りません!」


 そこまで言うとメアリー嬢は顔をぷいっと横に背けてほっぺをぷっくりと膨らませた。これは、なんというか高くつきそう。


 鷹月歌のお屋敷に戻ってラティーファさんにお茶会の話をすると、ラティーファさんも了解したもよう。条件として鷹月歌、右記島だけでなく、四季咲しきざきと十条寺、妖世川あやせがわも出席をして欲しいと言われたそうな。


 四季咲はタケルかな? いや、タケルは古森沢だって言ってるからおそらくは別の人だろう。十条寺はガンマさんが何とかするかな。まあいざとなったら不参加でも何も言われなさそうではある。妖世川はアンネマリーさん? いや、でもあの人単なる通訳だからなあ。もっとトップに近い人が来るんじゃないかな。


 裕也さんは関係各所への連絡で忙しそうで、その間メアリー嬢はどこにも行かずにただ部屋でじっとしていた。何やら物思いにふけっていたのかもしれない。


 そしてお茶会の当日。メアリー嬢とジョキャニーヤさん、私、ラティーファさんの四人で会場へ。裕也さんは来ないのかと聞いたら男子禁制なんだと。

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