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忍会(episode134)

富士林のおばあちゃんは年齢不詳のコンピューター。算数国語社会なんでもドンと来いさ。

 鷹月歌たかつか健介。年齢的には裕也さんよりも五歳の年長。もちろん、八洲の家督相続は年功序列が基本なのだが、裕也さんよりも年長なのに、次期候補になれてないのは裕也さんが飛び抜けているからだそうで。


 健介ってやつもそれなりに良い学府を出て、鷹月歌の官僚として働く若きエースみたいな人材らしいんだよね。だからこそ、右記島うきしまとの婚約話も持ち上がった訳で。そのままなら裕也さんの右腕として活躍したかもしれなかったんだけど。


 ところが、何年か前の新年の賀で、裕也さんに「オレはお前のかませ犬じゃない!」とか言い放ったらしい。革命戦士かな? ちなみに当時の裕也さんはメアリー嬢と婚約の話が持ち上がったばかりで天にも昇る気持ちだったとか。数年前ってメアリー嬢、一桁じゃなかった?


 それ以来、仕事はすれど、裕也さんにはあまり従わないやつらみたいな話になってふんだとか。ちなみに先程裕也さんが会議していたのも、その身内を「どう」するかって事らしい。


「父はあれでも積極的にはぼくを狙わないでしょう。それなりにポジションを用意してあげれば大丈夫だと思います。それに、父がどうしてもやりたければぼくが補佐に回ってもいい。それなりの権限は貰いますけど」


 どうやら滝塚という隠れ蓑はその為のカモフラージュでもあったらしい。色々考えるものだ。


「米連邦の方は未だ解決は出来てないが、八洲で事を起こすほど馬鹿ではないと思う」


 私の時は起こしてたけどなあってのは黙っておいた。まあ、あの時の赤鷺金融は米連邦の大事な橋頭堡だったらしいんだけどね。おばあちゃん元気かなあ。まあ五十年は生きるって言ってたし。


四季咲しきざきのタカ派の奴らは動いたらすぐに粛清されるようにトップから指令が下りてるらしい。食えない爺さんだ。ありがたい」


 あー、諾子さんが頼んだやつだろうね。あのおじいちゃん、諾子さんの頼みは絶対に断らないからなあ。


「で、残るは同年代なんだけど、楓魔ふうまを子飼いにしてるのは右記島なんだよね」


 ああ、そこで犯人が特定されちゃうわけか。しかも、今回は右記島のお嬢さんと結婚する予定の外様の人間って事だから、おそらくは楓魔忍軍ほんたいは動かなかったんだろう。おそらくはガンマさんが言うところのボンクラ三男坊の暴走だろうね。口車に乗せられたか金に目が眩んだか。


「健介さんは決して無能では無いんだけどね。気が急いたんじゃないかな。まあぼくは頼まれてもあんなオバサンと結婚なんて勘弁して欲しいけど」

「相手の右記島の人はそんなに歳がいってるの?」

「だって二十歳超えてるんだよ? 有り得ないだろ?」


 普通は二十歳超えてから婚約とかの話をすると思うんだ。まあ右記島としても主流かどうかはともかくとして鷹月歌たかつかと地続きになるなら歓迎なんだろう。


「……とりあえず裕也の感性は置いといて……ってそれだとお前、メアリー嬢が成人したら婚約破棄するつもりか?」

「何を言ってるんだ。メアリーはぼくの宝物だ。誰がなんと言おうと手放したりするものか。年齢とか、そういうのは、ちょっとしか関係ない!」


 言い淀んでる上にちょっとは関係あるみたいに言われちゃった。というかメアリー嬢が頑張ってバストアップとかスタイルアップとかしてるのを聞いたら目を回すんじゃないかな? 裕也さんの心の平穏のために黙っておこう。


「しかし、それならどうする? 楓魔のトップに話を持っていくか?」

「右記島に借りを作ることになるからそういうのは避けたい。出来たら影は影で何とかしてもらいたいものだが……」


 そう言って裕也さんはガンマさんを見た。ガンマさんはアイス食べてる。うんうん、それなりに暑くなってきたもんね。って室内だから快適なのに!


「ジョキャニーヤさんとティアさん、そして私の三人がいれば楓魔忍軍ほんたいが出てきてもなんとかなると思いますが、血が流れるのも良くないですよね?」

「そうだな。要するに一部の暴走なんだからちゃっちゃと処理したいものだ」

「分かりました。私が古巣に渡りを付けて話し合いに引っ張りだします」


 そう言ってガンマさんは部屋を辞した。アイスは持っていきました。ついでに手におかわりのアイスも持って。どんだけだよ。


 それからラティーファさんを連れて観光に行くことも控えて、その代わりにナジュド王国への経済協力を鷹月歌と四季咲から取り付けたらしい。さすがはラティーファさん。


 ガンマさんが戻ってきたのは翌日の夜。集会は秘密裏にとの事で私とジョキャニーヤさん、更に裕也さんとメアリー嬢の合計五人で出向く事に。場所は一軒の民家。


「ようこそいらっしゃいました。私が富士林ふじばやし炎群ほむらでございます」


 口調の丁寧で小柄なおばあちゃんが土下座しながら現れた。いつの間に? 何にも感じなかった。ジョキャニーヤさんは嬉しそうな顔をしている。


「鷹月歌裕也である。まだご息災の様で何よりだ」

「このババを覚えていて下さったとは光栄でございますなあ。ささ、奥の方へお進み下さい。皆、もうそろっております」


 奥の方に進むと狭い通路を通らされて奥の広い部屋に出た。まずジョキャニーヤさんが入る。次にガンマさん。メアリー嬢、裕也さん、そして私。最後にババ様だ。


 広い部屋の中には気配が幾つも存在する。姿は見せてない。そして真正面に三人の人間が座っている。


「やあ、久しぶりですね、健介さん」

「ふん、裕也か。まあそうだな」


 どうやらこのぶっきらぼうな男が健介とかいうやつらしい。横に居る美人さんは三つ指着いてこちらに頭を下げて来た。


「右記島が娘、右記島胡蝶と申します。この度は手違いから粗相を致してしまったようで深くお詫び申し上げます」


 頭を下げているから表情は読めない。下げる前の頭はとても整った顔立ちだ。私や凪沙よりも美人だよ。


「楓魔忍軍が、頭領、楓魔鼓太郎でござる。弟の不始末お詫び申し上げる」


 胡蝶さんの後ろから頭を下げる中肉中背の男。顔立ちはそこそこ整っているが、人間味のない能面みたいな顔だ。こいつがトップなのか。

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