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帰投(episode133)

ガンマさんは忍者でした!(知ってた?)

 左腕の薬指、いや、エンゲージリングをはめるとかじゃなくて粉砕骨折になった指なんだけど、そこから中指、人差し指、親指と砕いて「じゃあ次は右腕ね」とアンネマリーさんが言ってカウントダウンしたところで相手がギブアップ。右腕の指は丸々無事なようだ。というかよく気絶しなかったな。もしかして苦痛耐性とかそういうの訓練されてる?


「では、話してもらいましょうか」

「わかった。実は……」


 話し始めた辺りでジョキャニーヤさんが動いた。遠くから飛来する何かをナイフで弾く。狙われたのは……アンネマリーさんだ。頭がいい。アンネマリーさんが死ねばジョキャニーヤさんに情報を得る手段が無くなると考えたのだろう。まあ、実際は私が居るんだけど。


「みぃつけた」


 ジョキャニーヤさんが嬉しそうに言うと茂みの中に飛び込んだ。あっ、そんな無闇に動いたりしたら……


「がふっ!」


 あーあ、尋問してた黒装束が血を吐いて倒れちゃった。これは奥歯に毒でも仕込んでたかな。


 続けて攻撃が飛来する。狙われたのはやっぱりアンネマリーさんだ。絶対アンネマリーさんから狙って意思疎通をしにくくしていく魂胆だよね。


「水門〈流水防御リフレクト〉」


 詠唱破棄だからあまりもたないけど、飛んでくるのは単発武器みたいだから大丈夫。ついでにラティーファさんとメアリー嬢も魔法の内側に入れる。


 頭上から何者かが飛び込んで来た。手には刀のようなものを持っている。ジョキャニーヤさんはまだ戻っていない。


「木門〈風槌エアハンマー〉!」


 私はそいつらをまとめて風のハンマーで吹き飛ばす。詠唱破棄だから殺傷力はほとんどない。遠くにやるだけで精一杯だ。人数は三人か。一般攻撃魔法ゾルトラークとか使えたらなあ。あんなに無詠唱でバンバン使える即死攻撃魔法なんてある訳ないじゃん! 五行のことわり無視すんなよ!


 とか言ってる間に私は小さく詠唱を続けている。まあ言ってたのが頭の中での独り言だからね? 口に出てたのは別のものだよ。詠唱ってやつだ。


「炎熱の理よ、我が呼び声に応え、その姿を表せ、荒れ狂う円環よ、炎の輪光となりて、敵を穿て! 火門〈炎熱円舞チャクラム〉!」


 火門の攻撃魔法。正直費用対効果で火門に勝る攻撃術式は無い。木門の雷も強いけど、単体攻撃には向かなかったりするしね。私が愛用してるのは何となく火門に苦手意識があるからだ。この世界に来た時は火門は種火しか使えなかったしね。


 まあそれを言ったら木門だってそよ風レベルだったろっていう話だが、水生木だからね。水門の威力が上がってたら木門もいけるかもってのは感覚でわかるんだわ。


 でも、火門は水剋火の関係。つまり、水門が強くなれば火門は弱くなるんじゃないかと思ってたし、実際向こうの世界に居た時はそうだったと思う。


 ただ、この世界だと私の魔法は五行全部強化されてるんだよね。だから火門もいけるかもって実験したら上手くいったんだ。少ない魔力で制圧出来るのはありがたいからね。魔力回復ポーション位は錬金術で作っとくべきかなあ。


 私の力ある言葉と共に、魔法の円環チャクラムが飛んで黒装束達に命中する。着火はしてない。威力重視だからね。


「ごめーん、つい夢中になっちゃった」


 そう言ってジョキャニーヤさんが戻ってきた。手に持ってるのは生首。ラティーファさんもメアリー嬢も顔色が真っ青。アンネマリーさんは腰を抜かしてガタガタと震えている。


「ジョキャニーヤ、それは見えないようにこれで包んで」


 私は風呂敷を渡した。八州の伝統的な持ち運びアイテムらしい。ジョキャニーヤさんはええーとか言いながらも生首を包む。あ、首から出血止まらない。とりあえず乾燥させとこう。止血止血。


「メアリーさん、残念ですが、お出かけはここまでにしましょう。おそらくはもう狙っては来ないと思いますが念には念を入れないと」


 私の進言にメアリー嬢は泣きそうになりながらもこくこくと頷く。ラティーファさんは……凄い、もう何事も無かったかのように立ち直ってる。メアリー嬢があの境地に行くにはもう少し時間が必要そうだ。


 車に乗り、鷹月歌たかつかの家に帰る。玄関先に裕也さんが出迎えていた。


「メアリー、無事だったかい!?」

「裕也、様? 裕也様! うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」


 裕也さんの顔を見た途端に緊張の糸が切れたのか、メアリー嬢は裕也さんの胸に飛び込んでわんわんと泣いてしまった。


 ラティーファさんは自室で休みたいと言ってそのまま部屋に行ってしまった。せっかくの八洲観光なのに、とんだ状況になってしまって申し訳ない。


 私、ジョキャニーヤさん、アンネマリーさんは、裕也さんに集められて状況の説明をする事に。メアリー嬢は泣き疲れて寝ちゃったようだ。裕也さんに、私が、私がいなければ、みんなは、こんな目に!とかすごい勢いだったそうな。いやいや、悪いのは狙ってきたやつだからね。


楓魔忍軍ふうまにんぐん、やつらは確かにそう言ったのかい?」

「そうですね。楓魔虎三郎ふうまとらさぶろうって名乗ってました」

「ガンマ、君なら何かわかるかな?」


 裕也さんがガンマさんに意見を求める。なんでガンマさん? とか思ってたらガンマさんが深いため息を吐いた。


「楓魔の里の出来損ない三男坊ですね。可愛がられてはいますけど、忍びとしての素質はかなり低かったかと」

「タイマンなら勝てる?」

「相手にもなりません。楓魔なら長子の鼓太郎こたろうでも出てこない限りは相手にならないです」


 どういうことなの?って聞いたらガンマさんは忍者なんだと。なんと! びっくり! ちなみに、十条寺を名乗ってるのは養子として入ったからだそうな。元はなんか富士林とか加唐とかそういうくノ一と呼ばれる女忍者の家系らしい。八洲の忍者はよく分からない。


「おそらくは従兄弟の健介だろうな。ぼくが居なくなれば後継候補に躍り出るだろうし。何より結婚相手が右記島うきしまのお嬢さんらしいからな」

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