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第百三十二話 鉱街

キュー一人で頑張らせる予定だったのに……

 翌朝。ベッドの上にはアーナさんがいた。いや、服は乱れてないし、私は何もしてないよ? というかアーナさんは乱れてるけど、誓って手は出してない。……おっぱい大きいな。


 とりあえずアーナさんを起こす。あと三日とか訳の分からないことを言われたので無理に揺さぶって起こした。今日お仕事は? お休み? そうですか。


 私は、今日から鉱山に向かうので宿のチェックアウトを……ってアーナさんが寝てたらチェックアウト出来ないじゃないですか! ほら起きろ!


 結局、あまり覚醒してないので、アーナさんも連れて集合場所へと向かう。ペペルさんはもう来ていた。えっ、誰かって? あのリッピちゃんのお父さんの知り合いの鉱山持ちの商人さんだよ!


「おはようございます」

「おや、キューさん。おはようございます。早かったですね」

「すいません、ちょっとなかなか起きなくて」

「そちらの方は……冒険者ギルドの受付の方では?」

「どぉーもぉー、冒険者ギルドのピチピチ美少女受付嬢のアーナって言います!」


 まだ酔っ払ってるんだろうか。


「ほほお? もしかして、キューさんはそういうご趣味で?」

「違います。この人が勝手に飲んで勝手に潰れて勝手にベッドに入って勝手に寝てただけです」

「買って買ってって言ってないもん! ちゃんと自分のお金でお酒買ったもん!」

「そっちの「買って」じゃねえ!」

「あははははははははははは!」


 ダメだ。これはまだ酔ってるな。治癒ヒーリングしといた方が……待てよ? 鑑定サイコメトリ


【アーナ:状態、素面。健康状態良好】


 この人、素面なの? ということはこれは演技? もしかして鉱山に行く商人を調べてたりする?


「キューさん、その方を鉱山に連れて行くのは出来ませんが」

「分かってます。アーナさんもわかってると思います」

「ええー、私も鉱山行ってみたーい!」

「ギルドのお仕事あるでしょう!」

「今日は休みだもーん」

「日帰りは出来ませんよ。ですよね?」


 ペペルさんの方を見る。すごく困った顔をしている。まあ鉱山に連れて行くまでは自己責任として、帰りも連れて帰らなければということを考えるとねえ。


「そうですね。まあ、冒険者ギルドの許可があれば連れて行くに吝かではないのですが」


 ペペルさんがそう言った時、アーナさんがニヤリと笑った気がした。そして懐に手を入れる。おっぱい揺れてますね。


「じゃあこれ、はい。どうぞ」


 アーナさんが取り出したのはギルドの調査員派遣依頼。つまり、アーナさんが冒険者ギルドのお仕事として同行するためのものだ。


「こっ、これは一体……」

「先程言っておられた冒険者ギルドの許可、ですよ。これで構いませんよね?」


 そう言ったアーナさんの姿は先程までの醜態とは程遠く、獲物を絡めとった蜘蛛のように不気味だった。


「あなたは、一体……」

「誤解しないでください。あなたと敵対したい訳ではありません。もちろんキューさんとも。私は私の仕事で鉱山に行くのに都合が良かっただけですよ」


 ヤバい。もしかしてこの人は昨日の晩から私についてくる為にわざと部屋に居座ってたのか? だとするといつから私は利用されていたのだろう。アーナさんの方を見たらにっこりと微笑まれた。得体が知れなくて怖い。


「はぁ、分かりました。一人分でしたら空きがあります。そこにキューさんと一緒に乗ってください」

「はい、ありがとうございます!」


 アーナさんはそう言うと私の手を引っ張って馬車へと駆け込んだ。


「アーナさん、どういうことですか?」

「あなたが捕まえた女衒せげんのダイス、そして美人局つつもたせのルレット、こいつらの兄であるタローが鉱山にいるって情報が入ったの。だからそれを確かめにね」


 なるほど。元はと言えば私が持ち込んだ仕事だったらしい。それはアーナさんには悪い事をした。と思ってたら特別ボーナス貰えるし、代休もあるから出張仕事としてはそこまで悪くないんだとか。


 しかも鉱山の街は女が少ないからちやほやされるらしく、色々サービスしてもらえるんだって。いや、そりゃあまあ鉱山なんて屈強な男が行くところだもんな。


「私はギルドでも数少ない女性の調査員だから色々しがらみが多くてね。たまには羽根を伸ばしたいじゃない?」


 まあアーナさんがいいならいいんだろう。しばらくすると物資の積み込みが完了したのか馬車が走り出す。今回は馬車三台分の荷物だ。私たちは一番後ろの馬車に乗せてもらってる。中には女性が二、三人同乗している。


 彼女たちは女性の奴隷で、鉱山で娼館の様なところで働くそうな。なんでも他のところより実入りもいいし、貴族の横やりも入りにくいので人気の職場らしい。なお、割と筋肉フェチな人ばかりだ。これはもうウィンウィンという事でいいだろう。


 そういやティアも筋肉フェチだったなあ。あんなむさいのの何がいいのかって言うと説教されそうだから言わない。ちなみにアーナさんも筋肉フェチでは無い。どっちかと言うと頼り甲斐のある大人のダンディがいいらしい。わからん。


 途中で休憩を挟み、夕方近くには鉱山の街に辿り着く。門をフリーパスで抜けて、そのまま馬車は街の中心街へと入っていく。中心街の西の外れくらいにある御屋敷がペペルさんのものらしい。


 屋敷に着くとメイドさんが迎えてくれた。女性の奴隷をお風呂に入れるそうだ。私達も一緒でいいと言ったのだけど、時間をずらされた。まあ仕方ないか。


 私は明日から動く。とりあえずは情報収集からだ。アーナさんが手伝ってくれるらしい。なんで、と思ったが、私が二人を捕まえたことは既に噂になってるとかでここに来たことが分かれば狙ってくる可能性も高いらしい。おお、怖い。


 晩御飯はペペルさんのご好意でいいものが食えた。奴隷の女性たちも一緒に食べてる。まあ、最後の晩餐というやつかな。明日以降、彼女たちは娼館に運ばれる。あ、私も娼館に入れてもらおう。情報集めるならそういう場所の方がいいだろうし。

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