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粉骨(episode132)

「折る」ではなく「砕く」なのです。粉砕骨折。

 観覧車が下に降りて、ジョキャニーヤさんが警戒しながら先に降りた私が魔法を解除しながらラティーファさんとメアリー嬢をゴンドラから降ろす。アンネマリーさんはゴンドラ内でお留守番してた。一緒に降りるかって聞いたら怖いから嫌だって。高所恐怖症なのかな?


「先程のものたちは?」

「おそらくは国内の手の者では無いかと。狙われたのはラティーファさんではなく」

「私、ということですわね」


 メアリー嬢が悲しげに顔を伏せる。ラティーファさんだって狙われるあての一つや二つはあるのでメアリー嬢の気持ちはわかるのだろう。自分のせいで周りを巻き込んでしまう申し訳なさ。自分が悪いんじゃないんだから気にしなきゃいいのにとは思うんだけど。


「ラティーファ様、申し訳ありません。国賓の方にこの様なご迷惑を」

「いえ、メアリー様。私、とても楽しうございます。砂漠の国ではこの様なアトラクションはありませんもの!」


 そう言ってラティーファさんはメアリー嬢の今を撫でる。ちなみにメアリー嬢はアラービア語を喋れるらしい。ナジュドに来るからと練習したそうな。練習したからってすぐ習得出来るか? もしかしてメアリー嬢ってめちゃくちゃスペック高い?


「最初からこうすれば良かったのだ」


 先程のボスが今度は二十人前後の仲間を連れてやって来た。正面から数に任せて強行突破ってやつか。芸がない。


「名乗っておいてやろう。楓魔ふうま忍軍が頭領、上忍の楓魔虎三郎ふうまこさぶろうである」


 小次郎ですらないらしい。まあ木刀も持ってないみたいだし。


「ニンジャ!?」


 ラティーファさんとメアリー嬢の声がハモった。驚くところそこなの?


「いかにも現代の時代の闇に跋扈するもの。それが拙者たち忍びでござる」


 というか忍びが己の正体をベラベラ喋ってもいいのか? いや、楓魔なんて忍者たち使ってるやつらとか割り出せないこともなさそうなんだけど。待てよ?


「無駄。全部見えてる」


 次の瞬間、ジョキャニーヤさんが動いた。飛来して来る何かをナイフで弾く。ナイフの刃が欠けたみたいだ。


「気付かれたか。こちらに意識を向けていたはずなのだが」

「後五分意識を逸らされていたら警戒を外していた」

「あれを防がれるとは、こちらが未熟だったということか」


 どうやら上忍だか頭領だかが話していたのは意識を逸らすのが目的だったらしい。それでもまあ私の意識は逸れていたんだけど。ジョキャニーヤさんが居てくれて助かった。ちなみに話が通じているようで、各々が好き勝手に話してるだけだったりする。お互いに意思の疎通は出来ていないと思う。


「かくなる上は力押しにてつかまつる」

「殺気。雑魚は頼んだ」


 ジョキャニーヤさんは雑魚を私に丸投げした。頭領とタイマンを張るのだろう。そんな実力者なん?


「貰った、死ねぇ!」

「ばか! 殺してどうするんだ!」

「しまった、連れて来いって命令だったな」

「ダメなら殺せって言われただろ?」

「さらう前から諦めてんなよ、諦めたらそこで試合終了だぞ?」

「いや、終了させんなよ。もうちょっとだけ続くんじゃ」


 もはやカオスと言うよりほかはない。まあさすがに三十人以上の忍者なんだから統率なんて取れないよね。


「木門〈木精拘束ドライアドバインド〉」


 遊園地には緑もあるし、集団拘束用の魔法を使ってみた。二、三人が残ってしまった。あのままだったら味方を助けるよなあ。助けられないように釘付けにしようか。魔法の弾丸を三人に撃つ。あ、一人に当たってそのまま蹲ってる。ダメだな、あいつは。残りの二人は攻撃を避けてこっちを睨んでいる。


 ジョキャニーヤさんの方はどうだろう。そっちの方を見るとジョキャニーヤさんが楽しそうにしていた。相手は防戦一方だ。どう考えてもジョキャニーヤさんの方が上だ。何を警戒しているのかは知らないが容赦していない。


「私から、逃げ果せた人が、こんなに、弱い、訳が無い! 隠し玉があるんだろう!」


 まあなんか言ってるが相手には当然ながら通じていない。頭領は当然ながら逃げようとするが、懐に手を入れる度にジョキャニーヤさんの攻撃が激しくなり、なかなか取り出せない。


「あれはなんだ!」


 突如、頭領があさっての方向を指して、大声を上げた。ジョキャニーヤさんは……お構い無しに距離を詰めて振り上げた腕を逆にきめ、地面に押し付けた。


「バカな、気逸らしの術が!」

「いや、あの、言葉通じてないからね?」

「しまった! そうであったわ!」


 いや、まあ、ジョキャニーヤさんなら言葉が通じても引っかからなかったと思うよ。目標に一直線な人だからね。ぶっちゃけボディガード勤まるのか疑問なんだけど。


「それではちゃきちゃき喋ってもらわないとねー」


 アンネマリーさんがニンマリとしながら頭領に微笑みかける。守りたいこの笑顔、とまではいかないが、それなりに魅力的なんだろう。


「それじゃあ尋問を始めます」

「ふっ、無駄なこと。何をされようが話すものか!」

「アンネマリー、私の言うことを通訳してもらえるか?」

「えっ? まあいいけど、ふんふん。オッケー」


 ジョキャニーヤさんがアンネマリーさんを呼んで耳元に何かを囁いた。他の部下は私が拘束中だからね。アンネマリーさんには危険は及ばないはずだ。


「ええと、今から骨を一本ずつ砕いていく。修復が可能かどうかは分からないが、後遺症が残らないうちに話せればいいな」

「グキャゴァラブベラッ!」


 そう言いながらパキリ、と何か音がした。頭領が絶叫を上げた。痛みには弱いのだろうか? いや、もしかしたら想像を絶する痛みだったのかもしれない。


「左腕の小指からだ。次は薬指にしよう。三十秒だけ待つ」


 アンネマリーさんの通訳のタイムラグがあるから、と思ったが、アンネマリーさんがカウントダウンしていた。そしてカウントダウンが終わったらジョキャニーヤさんに合図している。パキリ、またひとつ骨が砕けた。また絶叫が上がる。

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