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第百二十八話 商都

受付嬢の名前はアリナさんではありません。

 転移テレポートを繰り返して馬車のところに帰る。空はもう白み始めて居たがみんな寝ているらしい。私も馬車の中で少し眠る事にしよう。馬車が揺れたら目も覚ますだろう。


 目が覚めたらお昼ご飯を食べると言っていた。まあ中間休憩だね。解せぬ。馬車って結構揺れるはずなのに起きなかったのか。それだけ自分が疲れていたという事かもと思い直してご飯をいただく。


 どうやら護衛の方々が森に入ってイノシシを狩って来てくれたらしい。なんとかボアとか言ってたけど、聞きなれないからスルーした。お肉は……塩で味付けされた丸焼きだけど、美味しい。滋養強壮にいい味だ。ふぁいとぉ、いっぱぁつ!


 目的地は鉱山なのだが、この馬車は鉱山には行かない。まあ内陸部の商都と呼ばれる場所が目的地なんだけど。そこから鉱山に行くには鉱山町行きの馬車に乗るんだって。まあ働き手が乗る馬車でとても臭いとは聞いた。大体の位置が分かれば連続転移で向かおう。


 途中でもいくつかの集落と遭遇したが最初の集落ほどのイベントは起こらなかった。まあ強いて言うなら子牛が生まれて無事生まれてよかったね祭りが開かれたくらいだ。食事が美味しかったよ。


 それから一週間くらいして、馬車は商都マッカに着いた。八洲の建物ほどでは無いが高い建物も建っている。乗合馬車の乗り場でおりて若夫婦に別れを告げる。幸せになって欲しいものだ。


 私は商業ギルドに渡りをつける事にした。場所を聞いたら目の前のあれだと言われた。まあ乗合馬車の乗り場から近い方が便利いいもんね。ちなみに冒険者ギルドも近くにあるんだって。


 商業ギルドに入ると人が活発に動いているのがわかる。やたらと大声で話す人が多くて辟易するが、まあそういう場所なのだろう。


 受付の若いお姉さんにヤッピの父親の紹介状を見せながら、鉱山の持ち主と繋ぎが取れないかと聞いてみた。今、ちょうど商都に帰ってきてる? それはラッキー。面会する為に部屋を借り、呼び出してもらうか、そのお店に向かうかしたいと申し入れた。


 二時間ほど経って借りた部屋に通された。そこには少し太めの男性がニコニコ笑顔で座っていた。


「やあ、リッピの紹介状を持ってるというのはキミかな?」


 そういえばヤッピの父親の名前をよく聞いてなかった。でも、音がそれっぽいから肯定しておく。


「いやあ、てっきりヤッピちゃんが来るかと思ってたんだがねえ。それで鉱山かい? まあ歓迎は出来ないけど、連れて行く事はできるよ」


 ヤッピの名前が出たので少し安心した。まあ連れて来ても良かったんだけど、お父さんがダメって言ってたしなあ。


「お願いします」

「なんで、行きたいのかは聞かないでおくよ。私はなるべくなら知らぬ存ぜぬでいきたいからね。そりゃあまあ奴隷の出処なんて鉱山の運営にはマイナスだからね」


 この人は一瞬で線引きした。私が奴隷を連れ出して行く所まで想像したのかもしれない。まあこの人も鉱山奴隷くらいは使ってるよね。


「ああ、うちの奴隷は年季奉公みたいな借金奴隷が殆どだよ、たまに犯罪奴隷を押し付けられたりするがね」


 詳しく話を聞くと待遇を良くすれば奴隷も気持ちよく働いて、その分効率が上がる、みたいな発想の持ち主らしい。うむうむ、やはりやる気は大事だよね。


「宿はとったかい? なんならうちに泊まって行くといい。なあに、女子従業員の寮だってあるんだ」


 お言葉に甘えず、宿屋に泊まることにした。あまりにも親切にされすぎるのもいざ行動を起こすときの足枷になるかもだから。


 それでも宿屋の善し悪しは判断つかないので案内してもらった。冒険者でも割と上位の人達が泊まる宿屋らしいんだけど、懐には余裕がある。


 個室に寝転がってしばらく微睡む。そこまで眠くは無いのだが、休息は心地いい。頭を空っぽにしたいところだ。じゃないとキリングマシーンスイッチが入ってしまう。いや、馬車旅でだいぶ落ち着いて来たんだけど。


 宿にお風呂がある、ということで入浴。身体を洗った後に湯船にゆらゆら揺られて気持ちよくなってる。安宿にはお風呂がない。なぜなら安宿に泊まるようなやつは汚れが落ちないままに湯船に入ってあっとゆう間に汚すからだ、宿としてもたまったもんじゃない。ここくらい高級だとマナーをわきまえている客が多いので問題ないと言ったところか。


 私も八洲人だからね。風呂は命の洗濯、リリンの生んだ文化の極みだよ。フタエノキワミッアーッ! ん? なんか今混ざった?


 お風呂から上がって、鉱山に行くまでに二日ほどあるらしい。いや、人足を運ぶのは毎日出てたりするが、あの商人さん、ペペルさんが鉱山に行く時に同乗させてもらう事にしたのだ。その方が面倒がないんだって。


 明日は商都をぶらついてみよう。冒険者ギルドに行くのも悪くないかな。そうしてその日はそのまま眠りに就いた。


 翌朝、連泊だから鍵をフロントに預けてギルド証を提示して鍵を受け取る事をお願いして、外に出る。そういえば冒険者ギルドはすぐそこだって話を聞いたんだけど、宿屋に行くのに乗合馬車の乗り場は離れちゃったからそこまで行ってみる。


 冒険者ギルドの建物はそこまで大きくなかった。扉を開けると手前側は食堂のような感じになっていた。横にカウンターがあって注文ができるようになっている。朝ごはんは宿で食べたのでスルーして奥へ。


 奥の受付さんも美人な人が多い。愛嬌の良さそうな身長低めの、こっそりダンジョン潜ってハンマー振るってそうな……のかどうかは分からないが、美人な女の子に話しかけた。


「あの、すいません。ちょっと色々聞きたいんですけど」

「はい、いらっしゃいませ。なんでしょうか? お仕事の受諾でしたら向こうの掲示板をご覧下さい。お仕事の依頼でしたらあちらのカウンターで」

「来る途中に盗賊を全滅させてきたんですけど、賞金とか掛かってないですか?」


 私の言葉に目の前にいた美人さんが顔を硬直させた気がした。面倒なものを持ち込んでくるな、私に残業させる気か!? とか思ってるのかもしれない。

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