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詐欺(episode125)

水門の未来視さきみは割と才能的なものがあり、適正が高ければかなり先の未来がはっきり見えたりします。ティアはそこまでではありません。

 占い師のおばちゃんは続ける。そう、おばちゃんなのだ。まあ水門の魔法使いは女性が多いので不思議でもなんでもない。水門、木門は女性が多く、火門、金門は男性が多い。なんでかは分からない。あ、土門は半々くらいかな。


 で、火門の男性には木門が相性良くて、金門の男性には水門の女性が相性がいいと言われる。土門はどの属性とも可もなく不可もなくというところ。まあこの世界の相性占いみたいなものだ。生まれに星座とか関係あるなんて凄いよね。タケルは乙女座なんだって、凪沙が笑ってた。なんか似合うね。


 それはともかく占い師のおばちゃんだ。メアリー嬢はなんか不安そうにしている。おばちゃんは続けて言った。


「あんたと、その彼は相性的に良くない。そうだね、あんたの子どもっぽさに相手がついていけない感じかねえ」

「あ、当たって、ますわ……」


 震える声でメアリー嬢は呟く。おばちゃんは満足そうな顔をした。いや、メアリー嬢はまだ子どもと言っていい年齢だ。それでも大人のレディになれるように日々努力しているという。今の一言はそれを台無しにする言葉だ。


「あの、私は、どうすれば」

「そうだねえ。まあ方法がない訳じゃあない」

「! ほ、本当ですか!?」

「ああ、そうだよ。あんたに足りないのは大人の色気だ。何しろべっぴんさんだからねえ」

「あ、ありがとうございます」


 べっぴんさんどころの話では無い。メアリー嬢はこの世界において、私が見てきた中でも一二を争う美少女だ。まあこの世界やたら美少女やら美人やら多いけど。


 諾子さんとか私よりも年上の子ども産んだように見えないぞ? タケルの後妻かと思ったらそうじゃないって、全く変わってないアルバムを見せられた。もしや、不老長生と噂のエルフというやつか?


「普通はここまでしないんだけどねえ、お嬢さんなら特別だ。私の魔法を込めたこのネックレスを売ってあげるよ」


 そう言っておばちゃんが取り出したのは赤い石がハマってるペンダント。まさか、エイジャの赤石!? なんてボケは置いといて、キラキラ光ってはいるけど、イマイチ魔法が掛かってる感じがしない。


 よし、調べてみるか。鑑定。ええと、なになに? 【偽ルビー:単なるガラス玉】それだけかいっ! つまり、このおばちゃんはこのペンダントを売りつけるために占い師やってるの? ついでにおばちゃんも見てみる。なになに?


【占い師に扮した詐欺師:霊感商法でペンダントやツボ、聖水(ただの水道水)、破魔の護符(適当に文字を崩して書いただけの落書き)を売っている】


 うわっ、クズじゃん! やっぱり魔法じゃないんだね。これは、仕方ない。私が本当の占いというものを見せてやろう。


「メアリー様、安心してください。この人の言うことはデタラメです。魔法使いの私が証明しますよ」

「あの、ティアお姉様、様付けは」

「いいですか、メアリー様、本当の占いというのはこうやるのです」


 私は空中に小さな水の玉を生み出した。メアリー嬢はびっくりしている。ジョキャニーヤさんはなんかぱちぱちと拍手していた。驚いてはないみたい。まあバトルの時に沢山使ったもんね、魔法。


 偽占い師……詐欺師は、ガタン、と椅子から滑り落ちていた。あわわわわとかわなわなしてる。


未来視さきみの瞳よ、我が問いに答えて、この者の将来を映せ! 〈未来予想図プレコグニション〉」


 水球の中にゆっくりと映像が形になっていく。そこには綺麗に着飾ったメアリー嬢が嬉しそうに微笑み、隣で裕也さんが笑っていた。ふう、今の私じゃこれで精一杯だよ。


 ばしゃん、と水球が割れて地面に落ちた。私はとても疲れたよ。なれないことはするもんじゃないよね。


「メアリー、私の魔法ではすぐ未来の事しか見えませんが、二人とも幸せそうでしたね」

「ありがとう、ございます、ティアお姉様……」


 メアリー嬢はボロボロと泣き始めた。これはきっと嬉し涙だ。このまま泣かせておいてあげよう。さて、問題は占い師、いや、詐欺師のおばちゃんだが。


「ひいいいいい!?」

「お前、お嬢様を騙そうとしたな? 死を以て償え」

「お、お許し、ください、お許しくださいぃぃぃぃ!」

「ジョキャニーヤ、やめた方がいい」

「何故止めるのだ? 人を騙す人間は人として扱われなくて当然だろう?」


 解放闘士フィダーイーンの間では信義が原則らしく、仲間を騙そうとするやつはみんなから制裁を受けるので騙そうという奴は居ないとの事。ならギカールは良かったのかというと、本人に騙す意志はなかったとのこと。本当に王太子になって国費で依頼料払う気だったんだ。


「あのね、今、ジョキャニーヤがそいつ殺しちゃうと、メアリー嬢まで殺しを疑われて、帰りが遅くなり、結果的にさっきの絵は成就出来なくなるんだよね」

「そ、そんな、それは、それは困りますわ!」

「……雇用主はメアリー様だ。メアリー様の意に反することは出来ない」


 ジョキャニーヤさんは分かってくれた様で占い師の首筋に食い込ませていたワイヤーを緩めて首から外した。あの一瞬にいつの間に。


「ありがとうございます、ありがとうございます!」

「もう詐欺なんかしちゃダメだよー」


 後ろから声を掛けては見たものの、まあ多分まだやるんだろうな。詐欺師って一度経験するともうまともに働きたく無くなるとかいう話を聞くし。


 その後、デザートのお店に寄って、ケーキと紅茶を楽しんだ。そういえばあの白い部屋……いや、もう白くもないか。あの女神がサボってるあの世界でのお茶会も長らくしてないな。久々にキューにも会いたいものだ。


 そんな事を考えながら帰ってきたら奥から走ってきた裕也さんがメアリー!と叫びながら抱き着いて来た。おっ、これは情熱的。


 なお、私もジョキャニーヤさんも抱き着くのは分かっていたが、身の危険はないどころか、メアリー嬢が望んでいる状況になるので放っておいた。まあメアリー嬢は別の意味で身の危険というか意識の棄権はあっただけど。ぷしゅーって言いながら気絶したもんね。

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