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砂袋(episode123)

魔法ってチートだよねえ。

 黒服の男たちが額縁の裏の金庫に隠してあったコルト……なのかは分からないが銃を捨てた。まあ恐らくはベレッタとかワルサーとかそういう名前のやつだろう。私はコスモドラグーンがいいなあ。


 ブラックジャックを手にした男たちは雪崩込む様にして、私とジョキャニーヤさんに殺到する。割合で言えば私の方が若干多いみたい。あー、まあ、密集状態からあっという間に五人が倒されたからね。ジョキャニーヤさんは近接特化って訳ではないみたいだけど、近接主体ではあるからね。


 というか私と離れたんならジョキャニーヤさんに銃弾が通じるとは思わないのかな? いや、身体の表面に薄く〈流水防御リフレクト〉張ってるんだけど。


 それよりも接近してくる奴らとの戦闘だ。こいつらは冒険者ギルドのシルバー級くらいの実力はありそうだ。えっ、冒険者にもなってないのに、偉そうなこと言うなって? わ、私だったらきっと直ぐにゴールド級になれたもん! ……ごめんなさい、嘘です。多分細々とカッパー級辺りでうだつが上がらなかったと思います。


 で、黒服の男たちが銀級ってのは飽くまで「技術」的な面での話。魔法で身体強化も出来ないのに、私に勝てるわけないじゃない。金門の魔力を巡らせて、身体強化をする。ジョキャニーヤさんとやった時みたいなのは必要ない。あれ、疲れるんだよ。


 攻撃は見える。技撃軌道というのだろうか、どこから攻撃が飛んできて、どういう風に避ければいいのかなんてのは何となくわかる。漫画で読んだからね!


 というかブラックジャックの攻撃パターンなんて振り下ろすか薙ぎ払うかしかないんだからどっちかに注意してればいいんだよ。突きとかないからね。そして武器の特性上、複数の攻撃が重なって飛んでくる事はそこまでない。


 正直、つまんない。いや、私はバトルジャンキーじゃないから別に構わないんだけどさ。ある意味空間把握がちゃんと出来ていれば何人が来ても相手に出来るよ。剣の先生は相手の武器のリーチを見誤るなって微妙に長さの違う剣を使われたからね。


 このブラックジャックは規格が全部同じなのか長さが全部同じなんだよね。だから突然長いのが飛んでくるとかもなくて、向こうが疲れたら交代する、みたいな形になってる。


 ジョキャニーヤさんの方を見ると、相手のブラックジャックを奪い取ったらしく、なんからレクチャーが始まってる。ジョキャニーヤさんは攻撃じゃなくて防御にしか武器を使ってないから軌道を読まれるとかもないみたい。


 私もそろそろ動きますか。私の得意は水門。つまり、水の魔法だ。まずはこの辺りを水で覆ってしまおう。


「水門〈濃霧フォグ〉」


 そのターンの戦闘ダメージを無かったことにする、みたいな効果はないよ。空間に水分が満たされるだけ。砂漠の国ではこれだけでも戸惑うでしょう。あ、涼しいと思うよ、多分。


「すずしー」

「ジョキャニーヤさん? そっちは終わったの?」

「飽きちゃったからもういいかなって。でもこれ、やっぱり涼しいね」


 ある意味この魔法の危険性を一番よく分かってて、身をもって体験したはずのジョキャニーヤさんは涼しさに寛いでいる。


「怯むな、単なる霧だ!」


 どうやら霧を見たことはあるようだ……って、そういやこの人たち、メアリー嬢のおつきなんだっけ。まあそれなら色んなところに行ってるよね。


 数人の男が懐から懐中電灯みたいなのを取りだした。黄色い光がこちらを照らしている。どうやら位置の確認が取れたらしく、こっちに向かってくる。


「そこだな!」

「残像だ」

「なにィ!?」


 いや、言いたかっただけなんだけど、霧の水分を使って鏡像を作ってたんだよね。こないだの戦闘の時に使った〈水月鏡花ミラーイメージ〉の簡易版だ。あそこまで何人も出す必要が無いからね。


 さて、なんで私が霧を出したか、なんだけど、ブラックジャックに詰まってるのは夢、じゃなくて、お金だったり、砂だったりする訳ですよ。


 この場合、お金を詰めるというのはコストもかかるし、換金の手間などもあって効率が悪い。となれば詰まってるのは十中八九、砂である。砂なら割とどこでもあるし、極論、ここみたいな砂漠とかならいくらでも補充出来る。


 さて、レクチャーだけど、水を吸った砂はどうなると思う? そう、答えは簡単。砂に水の重量が加わるって事だ。一応皮革で砂が出てこないように固定はされているが、水というのはどこからでも入り込む。余程密閉してない限りはね。そして、ブラックジャックはその特性上、砂の補充などが出来るために密閉はしてても隙間はある。


 私の水は少しづつ、少しづつ、ブラックジャックを侵食していくのだ。重くて持てないくらいにね! あ、いや、持てないってほどではなくても自由に取り回せないくらいには。


「ぐっ、な、なんなんだ!」

「急に重く」

「どうなってんだ?」


 さすがに魔法でぶっ飛ばしたくはないので、降伏を勧告した。リーダーらしき男だけが気を吐いて立ち上がったよ。


「やろうか?」

「私がやるよ」


 ジョキャニーヤさんがワクワクしながら構えたけど、相手は私の担当だ。リーダーはブラックジャックを投げ捨てた。なるほど、いい判断だ。


「この俺の投げを食らって立ち上がった奴はいない!」


 もしかしてスクリューパイルドライバーとかされちゃう感じ? ワンボタンで技が出る仕様とかだったらびっくりだよね。まあいいや。付き合ってあげよう。手四つだよ。


「バカめ、力で俺に張り合おうと言うのか? これでも元プロレスラーで……」


 経歴とかどうでもいい。私には魔法があるからね。〈筋力増加フィジカルエンチャント〉。詠唱無くなって普通の人間の筋力くらいは凌駕出来るよ。筋肉が足りないんだよね!


「よっこら、しょっ!」


 そのまま私は持ち上げて後ろに投げる。背中から落ちたリーダーさんは気を失ったみたいだ。まあ硬い地面の上で投げたらそりゃあ気絶もするか。気絶で住んだのかは分からないけど、元プロレスラーっていってたし、大丈夫でしょ。

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