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筋肉(episode121)

共に八洲へ帰還しましょう!

「筋肉……? というのはM・U・S・C・L・EなMUSCLEの事でしょうか?」


 さすがにネイティブスピーカーだ。完璧な発音だね! あー、まあその通りではあるんだけど。


「そうね。やっぱり魅力的に見えるのは大胸筋だと思うんだけど、そこに至るまでの僧帽筋や上腕三頭筋なんかも見逃せないところよね。それに内外の腹斜筋による腹筋の引き締めも悪くないと思うの。あとね、大臀筋から大腿四頭筋、ハムストリングスに至るラインがまた……」

「あの、もういいです、もういいですわ! 何か大事なものが零れ落ちそうになってしまいますもの……」


 なんか失礼なこと言われた! 別に肩にちっちゃい重機載せてるとか……えっ、重機じゃなくて元ネタはジープ? こまけぇこたぁいいんだよ! あと背中に鬼の(かお)とか求めてないからね!


「ええと、つまり、裕也さんはティアさんの好みではないと?」

「うーん、まあそうだね。絶望的なまでに筋肉が足りない。タケルもだけどもっと身体を鍛えた方がいいと思うよ?」

「ムキムキな裕也さん……想像したくはありませんわ」


 どうやらこのお嬢さんとは男の好みが被らないらしい。まあそれはそれで構わないんだけど。


「じゃ、じゃあ、裕也さんとティアさんの馴れ初めというのは」

「ええと、洞窟の中で熊に食われそうになってたから助けただけだよ」

「くまぁ!? くま、クマ、熊、BEAR!?」


 それはちょっと色々まずいのでやめて欲しい。あのクマスーツってとても高性能だから私も欲しいんだけど。あと、あの可愛いクマ召喚したい。


「あ、安心して。フィアーベアとかじゃなくて普通の動物のクマだったから」

「クマは動物しかいませんわ!」


 そうだった。この世界には魔物とか居ないんだっけ? チョモランマの魔物? あれはよくわかんない。


「で、たまたま助けた人がタケルの知り合いだった訳。これが馴れ初め」

「吊り橋効果、ですわね。危機的状況に陥った男女が生命の危険のドキドキを恋愛的なものと錯覚するという……その手がありましたか」


 いや、私的にはたかが動物のクマごときでドキドキなんかするわけもないんですけど。というかあれくらいなら血抜きをして美味しくいただくレベル。まあ熊肉ってかなりクセが強いんですけど。食べるなら鹿肉とか猪肉がいいなあ。


「だからね、私と裕也さんはそういう仲ではなくて」

「最初はお互いに違うといいながらも段々心惹かれあっていく、そんな話をCARTOONで読んだ事がありますわ!」


 あー、私も親が決めた許嫁と過ごしていくうちにみたいなのは見たことがあるぞ? まあ確かにタケルに情は持ってるけど、どっちかって言うと凪沙への恩とか親近感とかそういうのの方が上なんだよね。


「ええと、メアリーは裕也さんとそういう風になりたくないの?」

「なりたいに、決まってますわ!」


 多分、この子が寂しそうな目をして抱いてくださいとか言ったら一発て裕也さんは落ちると思うんだけど。というか裕也さんでなくても危ないと思います。まるでお人形さんみたいな綺麗さだもの。


「それなら、裕也さんとの仲を私が協力しましょう!」

「!? ほ、本当に?」

「ええ。嘘は言いませんよ」

「おっ、お願いしますわ!」


 などとやってたらジョキャニーヤさんが起きた。いや、それより前から起きていたのかもしれない。


「あなた、ファハド王子の婚約者じゃなかったんだ」

「あ、ええと、その、まあ、そんなところで」

「心配ない。私もギカール王子とは単なる雇用関係。というかギカール陣営は正妻以外は金で雇われたやつばかり」


 あー、なるほど。イウディさん以外は雇われでしたか。というかイウディさんとの間も愛し合ってるって空気じゃなかったような。どっちかと言うとイウディさんが固執していたのはラティーファさんの方だったと思うし。


「また遊びたいけど、王宮に居ないなら残念」

「あー、うん、私は八洲の人間なんだ。いや、正確には違うんだけど今居るのが八洲でね」

「大八洲国。知ってる。私も行こうとしたら許可が下りなかった」


 まさか、あの豪華客船に乗り込んで来ようとしてたのかな? アフマドさんだっけか。あの人は相当だったけど、この子程じゃあなかったしな。


「すごく、楽しかった。勝てなかったのも初めて。ティアは私に初めてをたくさんくれた。嬉しかった」


 そう言いながらジョキャニーヤさんは身体を擦り寄せてくる。はためで見てるローティーンの少女は口をアワアワさせながら見てる。手を両手で覆ってるように見えて、指の間から全部見えてる感じのやつだ。


「そろそろ目が覚めた? ……って何やってんの?」


 入ってきたのはアンネマリーさん。そういえばこの人も居たんだっけ。い、それはさすがに失礼な物言いだったか。


 アンネマリーさんはますメアリーに話しかけて、その後にジョキャニーヤさんに話し掛けた。そして大きなため息をついた。


「ティア?」

「私が悪い訳じゃあないもん!」

「そりゃあそうだけど、この二人をどうするつもりなの?」


 えっ? どうするって、メアリーには裕也さんとの事を協力するって言ったし、ジョキャニーヤさんとはこのままお別れでは?


「私は八洲に着いていくよ?」


 ジョキャニーヤさんから爆弾発言をいただきました。


「あ、あなた、解放闘士(フィダーイーン)じゃなかったの?」

「そう。ついでに言えば次期頭目」


 ふひっ!? なんかとんでもないNGワードが飛び出してきたんですけど? 確かにあのスタジアムで他の解放闘士たちに指示を出していた気がする。そうかー、次期頭目だったか。まあそれならあの強さも納得出来るね。


「困ったな……」

「それならどうにでもなりますわ!」


 メアリーさんが高らかに宣言した。そして言う。


「そこのジョキャニーヤさん?とかいう方を私の専属ボディガードにしますわ!」


 あまりにもあまりな提案にその場にいる全員がメアリーさんのドヤ顔を見て途方に暮れていたのであった。嘘だと言ってよバーニィ。

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