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令嬢(episode120)

ティアの好みはマッチョです。それもボディビル的なものではなくて自然に鍛えられたやつ。

「お怪我はなく、よくおやすみの様でしたのでそっとしておきました。目覚められてほっとしました」


 金髪の美少女が微笑む。私も金髪だけど、美少女とは思わないからね。私の金髪が少しくすんでる位としたら、この子のは正しく輝くトラペゾヘド……じゃない、ブライトゴールドだよ。王者の風格だよ。


「あなたは?」

「これはこれは。自己紹介が遅れましたわ。私はメアリーと申します。裕也さんの婚約者(フィアンセ)ですわ」


 どこかで聞いたことが……って裕也さんの婚約者(フィアンセ)って確かパラソルグループのトップの娘とかいう話では? 今見るだに年齢的には十代前半、というか十一になってるかどうかくらいのレディだ。十一歳と十二歳の間では平均身長的に大きな壁があるからね。ちなみにメアリー嬢の身長は百四十……いってることにしておこう。


「ああ、これはどうも。私は……ええと、一応ファハド王子の婚約者という事になってる」

「皆まで言わずともいいですわ。全部わかっておりますもの」


 どうやら聡明という話は嘘でもないらしい。てっきり裕也さんの贔屓目だと思ってたんだけど。


「分かっております。分かっておりますが、一言だけ、言わせてくださいませ」


 そう言ったかと思うとメアリーさんは大きく息を吸い込んだ。そして声を高らかに叫ぶ。


「あなたに、裕也さんは、渡しませんわ! 宣戦布告ですわ!」


 分かっていらっしゃらないじゃないですか!


 隣のベッドで寝ているジョキャニーヤさんは大人しく寝息を立てている。その寝顔は無邪気な少女のものだ。わー、可愛いなー。なんて現実逃避をしている場合ではない。私は目の前にいるメアリー嬢の誤解を解かねばならないのだ。


「あの、メアリー様?」

「呼び捨てで構いません」

「あー、じゃあメアリー? あのさ、私は別に裕也さんの事とかは」

「経緯は存じ上げております」

「ええと、経緯って?」

「滝塚の方で婚約者として選ばれて、今回の件でファハド王子に一時的に協力していると。終わったらそのまま滝塚裕也の婚約者として発表されると」


 なんか情報がねじ曲がってる感じなんですが?


「分かっております。私は所詮パラソルグループの娘。鷹月歌(たかつか)の利益のために裕也さんが縁を結ぶことを選んでくれたのだと」


 いや、多分そんなことはないんじゃないかな? というか裕也さん、メアリー嬢にメロメロだったはずなんだけど。


「そもそも裕也さんの様な素敵な紳士(ジェントルマン)が私などのようなちんちくりんを選ぶはずがありませんもの」


 いや、あの人、「だが、それがいい」って言うと思うよ。マジで。


「だから、私は素敵なレディになれるように日々学んでいるのですわ!」


 あーうん、メアリー嬢の努力がどんなものかは知らんけど、あのハイパーハイスペックな裕也さんに釣り合おうと思ったら確かに生半可な努力では無理だろう。


「その為ならば敵であっても教えを乞う事に躊躇いはありません。ティア様、ひとつお聞きしてもいいでしょうか?」

「あ、はい」

「その、貴女の様な、立派な、バスト、そのおっぱいになるにはどうしたら良いのでしょうか。私はこれでも数多くの豊胸術を試してはいるのですが、なかなか結果に繋がらず……」


 顔を赤らめながら言うメアリーに私は天を仰いだ。いや、それ教えて効果あったら裕也さん発狂するやつじゃん!


 とりあえず落ち着かせました。こういう時に無詠唱魔法は役に立つ。まあ水門で良かったよね。


「取り乱しました。その、私は本当に、素敵なレディが何なのか分からなくて。それで裕也さんが自ら選んだというティア様の事を参考にしようかと」

「あー、その、私もティアでいいよ? あと、私を選んだのは成り行きだからね。たまたまタケルと仲良かっただけで」


 メアリー嬢はキョトンとした顔をした後、ああ、と合点がいったかのように手をパチンと叩いた。


「確か、四季咲(しきざき)の跡を放棄したとかいう古森沢の方でしたわね。恋人の方もお胸が立派な方だと聞いております」


 まあ確かに凪沙のお胸は立派だけど。あー、そういえばこのメアリー嬢との婚姻を組もうとしてたやつもいたんだっけ? そもそもタケルは凪沙が居るし、四季咲じゃないんだけど。


「裕也さんと仲良さそうにしているのを羨ましく思っていますわ。私は、あの様に、コミュニケーションを取ることは出来ませんから」


 寂しそうにメアリー嬢が言う。どういうこと? 今まで裕也さんとデートとかしてないの?


「一度プライベートビーチで一緒に遊びましたわ。ですが、裕也さんは私の水着すがに一瞥をくれただけで。そのまま去ってしまわれました。きっと私がちんちくりんだったからでしょう」


 うん。多分違う。あれだ。恐らくは不意打ちで不随意筋である海綿体の膨張を阻止できなかったんだろう。それでそんなものを見せる訳にはいかないと去った。まあこんなところか。


「調べましたところ、裕也さんとタケルさんは「同好の士」だそうで。だからタケルさんのいい人である凪沙様の体型を目指して頑張っていたのですけども」


 タケル、裕也さんと同好の士だったんだね。あーまあ、凪沙は別にって言ってたからそういう可能性もあるかなとは思ってたけど。


「そうこうしておりましたらいつの間にやらタケルさんのところにティアさんが現れて……裕也さんと出会ったらと思ったらもう、我慢出来なくて」


 それで私がファハド王子に貸し出される事になったから私を見ようとナジュドまで駆け付けた、と。あー、裕也さん? これは拗れる前に誤解解いとかないとどうなっても知らないよ?


「敵わないまでもティアさんのよつになるにはどうすれば良いかと。もう、どうしようもないのです。私は、私は形だけの妻でも一向に……」

「あー、とりあえずメアリー?」

「はい、なんでしょう」

「裕也さんもタケルも筋肉が足りないから私の好みじゃないんだよね」


 私の言葉にメアリーはキョトンとした顔をした。よし、掴みはオーケーだ。

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