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美貌(episode115)

ついに始まりました妻大戦ザウジャハーブ

まあ結果は見えてるんですけど。

 イウディさんというなんと知力担当の妻と出会ってしまった。なんでも大学の花と呼ばれた才媛というのは嘘では無いらしい。学校始まって以来の才女とも呼ばれたとか呼ばれなかったとか。さすがに嘘だろ。


 で、残りは戦闘担当のジョキャニーヤさん。で、舞踏担当はシンクレアさん、美貌担当はズレイカさん。シンクレアさんは踊りを生業とするショーダンサー出身なんだとか。それ故に踊りも妖精の踊り(フェアリーダンス)と呼ばれるそうなんだって。なるほど。


 ズレイカさんははにかんだら花が咲くと言われるくらいの美人さん。常に美容に気を使い、専用の美容エステを家に建ててるくらいには美に傾倒してるとの事。どっちも凄まじいんですけど!


 それから私は特訓を再開した。相手の手強さが分かって、じっとしては居られなかったからだ。そのお陰なのか、八門遁甲は何とか取得出来たと言える出来だ。


 まあ戦闘中に時盤を参照出来ないのでやる前に方角を頭に叩き込む必要があるんだけど。大丈夫、二時間とか戦い続けるわけでもないからきっと大丈夫。


 明日が妻大戦ザウジャハーブという日の晩、廊下でジョキャニーヤさんにばったり出会った。一緒にいる男は……誰だ?


「ほう、貴様が戦闘の担当か? なかなかに美しいな」


 人を値踏みするような目でこちらを見てきた。なんだコイツは。お世辞にも筋肉が足りない。優男と言うならまだマシだけど、口だけ男みたいな感じだ。


「おい、跪け。オレはこの国の王子だぞ?」


 居丈高に跪くことを要求してくる。こいつが王子なら、私は別の陣営に属している敵なのだが。それでも跪かせると?


「ジョキャニーヤ、こいつの足を切り落として跪かせてやれ」


 なんかとんでもないことを言い出した。ジョキャニーヤさんは静かに首を振る。


「出来ません」

「なっ!? 雇い主である、オレに逆らうのか? 貴様、貴様の所属してたある教団がどうなっても構わんと言うのか?」

「やらない、のではなく出来ないのです。ギカール王子が人質に取られても構わないならやってみますが」


 ジョキャニーヤさん、鋭い。私がこの状況なら雇い主って名乗ってるバカ王子を人質に取るかもしれないと瞬時に判断された。というか、人質に取るだけなら簡単だ。射出系の魔法を使えばいいだけだもの。捕縛術式込めて。


「ぐっ、それはダメだ。痛い目にあいたくない」


 こいつ、随分と軟弱なこと言い始めたな。観察していて思ったのは自尊心が高くて、尊大で、スケベで、それでいて臆病な、クズ野郎である。こんなのに比べたらファハドさんじゃなくても他の人が王になるべきだと思うだろう。


「ジョキャニーヤさん」

「勘違いしないで。あなたとはちゃんとした場で殺し合いたいの。楽しみにしてるわ」

「おい、ジョキャニーヤ、そいつは殺すな。そのおっぱいはオレのモノになるんだからな!」


 いや、頼まれても嫌なんですけど。それとも妻大戦ザウジャハーブに負けたら身体を自由に出来るとか思ってんの? いや、思ってんだろうね。規定はともかく、王になったらなんでも自由に出来ると思ってそうだ。視線だけなら国王陛下とそっくりなんだけどな。あの舐め回すみたいな視線。


 ジョキャニーヤさんたちと別れて最後の特訓に入る。清真寺マスジドに入り、白い部屋へ。魔法の最終確認と、八門遁甲をより正確に発動するための練習だ。疲労は残るかもだが、この中で寝るならそれも軽減されるだろう。寝すぎると戻って寝れないかもだけど。気力の尽きるまで全力で頑張るのだ。


 妻大戦ザウジャハーブの当日。円形闘技場コロッセオと呼ばれるような大きめのスタジアムに私たちは集められた。観客はポツポツといる。なんでも近隣の王族や部族長みたいな立場の人らしい。一緒に来たのに影が薄かった裕也さんや黒峰さんの姿もある。


 妻大戦ザウジャハーブはここ百年ほど開かれてなかったようで、見世物として騒がれてるみたいだ。さすがにお酒がダメなお国柄、ビールの売り子なんかはいないけど。えっ、あれって八洲オリジナルなの?


 まずはファハドさんとギカールのバカ王子が共に王の前で妻大戦ザウジャハーブの開催を宣言する。そして国王陛下の許可。これで準備は整った。


「まずは第一の試練、美貌の競い。

 双方いでませい!」


 マイクを持つ手の小指がピンと伸びてるような片方の目を眼帯で隠してる司会者が双方の第一選手を呼ぶ。私たちの方が白虎の方角……西側で、相手が青龍の方角、東側だ。いや、東と西の差は東が第一王子って事らしい。いわゆるチャンピオンサイドだね。


 その東側から出てくるのは輿に乗った女性。透き通るような白い肌を持っている、ズレイカさんだ。輿から降りて観客席、それも国王陛下に向かって扇を持ちながら微笑むと確かに花が咲いたかのような錯覚に陥る。何か魔術的なものでも使われてるみたいだけど魔力は感じない。


 西側からはおっぱいがドーン、おしりがプリン、腰ほっそなお姉さん、ファティマさん。ズレイカさんは確かに美人だけど乳と尻と太もものボリュームはファティマさんに軍配があがる。いわゆるセクシーだ。いや、おっぱいの大きさはどっこいどっこいだけど、それ以外の色気は完全に負けてるからね、私。


 ズレイカさんの時はボーッと見ていた観客が、ファティマさんの時は前を抑えてかがみ気味なんだ。まあどちらが綺麗かには主観的なものもあるので名言は避けよう。世の中にはキューくらいのサイズじゃないと役に立たない人も……この話はやめよう。


「そ、それでは、審査に入ります。審査は各国の王族、部族長の判定と、国王陛下の決断によります!」


 なんだかんだで最終決定権は国王陛下なのか。それなら大丈夫かなあ。だって、あの国王陛下、スケベだもん。


「第一の勝負、勝者はファハド!」


 奥さんの名前じゃなくて王子の名前ってところが納得いかないが、そういうものだと割り切る。まあ予想通り勝ちである。だが、ギカールには結果に納得いかないみたいだ。

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