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第十二話 潜入

了解、スネーク。

「ううっ、ここはどこだ? そうだ、侵入者だ! おい、何をしてやがる、こいつらを捕まえ……ろ」


 頭に血が上った状態で一気呵成にまくしたてたところで、やっとここがどこなのかに気付いたらしい。


「お久しぶりね、クレリバンさん? どうしてあなたがこのギルドマスター室に居るのか説明してもらっても?」

「エレノア様!? そ、それにギルドマスターのアリュアス様まで!? そ、それじゃあ本当にここはギルドマスター室?」


 オーナーのクレリバンは汗をダラダラ流しながら頭を働かせているのだろう。というか状況を把握するのに時間がかかるはずだ。


「エレノアさん、この人の店の地下にリリィちゃんが居たんです!」

「まあ、じゃああなたが誘拐犯だったってこと?」


 エレノアさんが凄い闘気、いや凍気が漂ってくる。氷の美女(クールビューティ)とはまさにこの事か。


「ち、ち、ち、違うのです。こ、こ、こ、これには、訳が。……そ、そうです! ボブのやつが勝手に攫ってきたので保護しようと」

「あの、その人、ぐへへって笑いながら近寄って来て、味見がどうとか……」


 リリィちゃんが振り絞るように言うと凍気の温度が一段と下がった気がした。


「いいわよ、別に。誤魔化そうとしてても足の一本や二本凍り付けば喋りたくもなるでしょうし」

「エレノア、足は二本しかないと思うよ」


 アリュアスさんが頭を抱えながら止めようとする。エレノアさんが怖い。


 その後、クレリバンは別室に連れて行かれ、様々な「オハナシ」をしたら代官に協力して誘拐をしていたことを認めた。


 クレリバンの手口としては、店に来た子ども連れの家族にサービスをし、その子どもに今度店に来た時には両親に内緒で美味しいものをあげる、と誘惑するというものだった。


 子どもたちの中には両親に報告して、両親と一緒に来る子たちもいたが、そういう場合には本当にデザートを出してあげて喜ばせてたりしたんだとか。


 で、後から怒鳴り込んでくる客も居たそうだが、そういう客にはここには来てないとハッキリ突っぱねたそうだ。店の中を探させたりもしたが、地下室への扉は魔法で隠しているので見つけ出せなかったという事だ。


 リリィちゃんはボブが勝手に連れて来たが、器量良しだし、何よりスラムの子どもでその兄も捕まえる予定だったから遠慮が要らんということで代官に渡す事にしたらしい。それで取られる前に味見をとか言ってたからそこでエレノアさんが黙らせたそうな。永遠に黙らせそうで怖かったらしい。


「代官が何のために子どもたちを攫ったのかは分からなかったわね」

「衛兵に聞いても分からんだろうな。恐らく隊長格でも知らされてないのでは?」

「という事は」

「屋敷に忍び込んで証拠を掴むしかあるまい」


 エレノアさんもアリュアスさんも凄く困った顔をしていた。屋敷に忍び込むとか多分私ならそこまで難しくないと思う。転移テレポート透視クレヤボヤンスもあるし。第一、私のいた鱗胴研究所の方がセキュリティ的には上だろう。何せこの世界には監視カメラみたいなのもないんだから。


 ただ、問題なのは魔法だ。私は魔法についてほとんど知らない。「そのとき、ふしぎなことがおこった!」とか言われてもぽかーんなのだ。


 それでも大概の事は私の超能力で何とかなりそうではある。さすがに透明化とかあればもっと楽だろうけど。……試してみるか? よし、透明化インビジビリティ! ……特に何も起こらなかった。ううっ、恥ずかしい。


「な、何をやってるのかしら、キューさん?」

「あ、いえ、その、ははは……そ、それより、あの、その潜入捜査、私がやってもいいですか?」


 私の言葉にエレノアさんもアリュアスさんもびっくりした様だ。


「だ、だが、あなたを危険に晒す訳には」

「いざとなったら転移テレポートで逃げます。お願いします!」

「そ、そんな高価な魔道具を使わせる訳には!」


 おや? 私の転移を魔道具の効果だと思ってるのかな? ということは転移魔法なんてこの世界には無いのかも。


「大丈夫です。それにリリィちゃんたちの事は私が持ち込んだ案件です。私にやらせてください」


 キリッとした目でアリュアスさんを見る。アリュアスさんははぁ、とため息をひとつ。


「止めても無駄のようですね」

「大丈夫です。私が死んでも私の実家は出て来ませんから」

「そうか。君はもしかしたら疎まれて……いや、悪かった」


 アリュアスさんが都合よく勘違いしてるが、貴族でもないし、そもそも世界が違うから出てこないだけなのだ。私が死んでも代わりはいるもの。いや、本当に。だって私は九番目だから。


 エレノアさんは凄く心配そうな顔をしてくれた。エレノアさんにはビリー君とリリィちゃんの保護をお願いしておいた。冒険者ギルドの見習として働かせると約束してくれた。


 私はそのまま代官の屋敷に向かった。場所はエレノアさんが教えてくれた。行ったことのない場所だったので転移での移動は出来ない。でも視認してしまえばこちらのものだ。


「ここがあの代官のハウスね」


 代官のお屋敷はとても大きかった。代官が男か女かはそう言えば聞いてなかったな。門扉の前には衛兵が立っていた。やる気は無さそうだ。


 私は転移で死角になってる部分から空中に跳び、それから庭の中に再び跳ぶ。二段階で壁を超えると庭はシーンとしていた。警戒されてない? 壁を登って忍び込んだりとか考えてないのだろうか?


 窓から屋敷の中を覗き込む。薄暗い屋敷の中はシーンとしていて人が通っていなかった。念の為に透視で先を確認する。壁の先は大きな廊下で誰も通っていなかった。


 私は迷わず転移する。屋敷の中に侵入。警報の類は鳴った感じは無い。あ、よく考えると私の考えてる警報とは違う感じで鳴ってるのかもしれないがそこを確認することは出来ない。


 ともかく探すのは地上か地下か。そう言えば地下にリリィちゃんが捕らわれていたなと思って地下から探す事にする。地下室への扉をまずは探さなくてはいけない。

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