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鍛錬(episode112)

モスク、というのはマスジドが訛った言葉だとか。マスジド(アラビア語)→メスキータ(スペイン語)→モスク(英語 )になったらしい。

「私が才能に恵まれた? 面白いことを仰るのですね」

「あら、違うというの? そんな余分なものをつけているのに生き残ってるのだもの。さぞかし才能がおありだったのでしょう?」

「才能なんというものはありませんでしたよ。胸の大きさは努力の上でしたけど。努力する才能というのならあったのかもしれません」

「そう。じゃあ、努力とか才能とかと別次元の執念というものを教えてあげます。まあ、それは試合での話で今はお風呂ですから背中でも流してあげますわ」

「いや、今身体洗ってたの見えましたよね? なんなら隣で身体洗ってましたよね?」

「女は殿方のために何度でも身体を磨くのですよ。ご存知でしょう? 生娘でもあるまいし」

「きむすっ!?」

「あら、あなた()()なのね。それは失礼。優しくして貰えるといいわね」


 ジョキャニーヤさんはコロコロと笑った。曲刀を持ってる時と随分とイメージが違うものだ。ということはこの人は()()なのだろうか?


「私は所詮、あの人の妻としての形だけ与えられた殺戮人形よ。肌を重ねるなんてしていないわ」

「じゃああなたも()()じゃないんですか?」

「あら、私の相手が王子だといつ言ったのかしら?」


 くすくす笑われた。ううむ、テンポが掴めない。いやまあ馴れ合うつもりはないんだけど。


 それから風呂から上がって部屋の方向は別方向だったからそのまま別れた。私は外に出る。魔力の流れを感じようとするが、魔力はやっぱりこの世界にない。


 翻って体内に巡る魔力を感じてみる。それは尽きることなく、身体に蓄えられていた。どうやら魔力量を増やすのは出来なさそうだ。いや、時間を掛ければできるのかもしれない。でも、世界に魔力がない以上は魔力増幅ブーストは出来ない。


 となれば一つ一つの精度を高めて無詠唱での発動強化をするしかないだろう。短期間に出来るか分からない。だけどやらなきゃいけない。どうしたらいいのか。こんな時に頼れるのはお局様……調和神様なんだけど、さすがにダメだよね。


 ともかく、ヘトヘトになるまで魔法の練習をしなければならない。出来れば秘密裏にやりたい。手の内を見せたくないってのもあるし、魔法を知る人間を増やしたくない……あれ? それだとジョキャニーヤさんとの戦いで魔法大っぴらに使えなくない? 観客とか居たらダメだよね。


「随分と熱心だな」


 声を掛けられてビクッとした。声の主はハリードさん。特訓を見られたところでハリードさんなら魔法のことも見せてるから構わないか。


「実は対戦相手の事で悩んでまして」


 そう言って私はジョキャニーヤさんとの事を話して聞かせた。すると、暗殺要員というところでハリードさんが顔色を変えた。


「まさか、解放闘士フィダーイーンか……なんて事だ」

「えっ?」

「相手は人を殺す事に長けた職業暗殺者だ。八洲のヤクザなんかとはレベルが違う。正直、逃げた方が賢いと思うぞ」


 ハリードさんが血相を変えてそう言ってくるってことはかなりなものなのだろう。やっぱり只者じゃないじゃん!


「ええと、でも、彼女は私が居なかったら暗殺要員として待機させられていたって」

「むう、となるとティア殿がやり合わねば暗殺される危険性があるということか」

「まあ陰ながら守ってもいいんですけど、そうなると四六時中警戒しないといけない上に、向こうは気配を消すことに長けてるみたいですから」

「まあティア殿が負けるとは思わんが緊張が切れた時に襲われたら一溜りもなかろう」


 やはりジョキャニーヤさんとは公の場で正々堂々と決着をつけた方がいいと思う。まあ問題は私の技量が足りないことなんだよね。


「ティア殿の魔法ならば展開してしまえば勝てるのではないか?」

「ええと、まず、展開するまでに敵の攻撃をしのがなくてはいけないということ」

「直ぐに出せていたやつもあったのでは?」

「そういうのは強度が弱かったり、持続してなかったりしますから。ある程度をやるには詠唱が必要ですし、水とか生み出しちゃった日には」

「まあおそらくは八洲には帰れなくなるな。帰す訳にはいかなくなる」

「ですよねー。何となく分かってました」


 御多分に漏れず、ナジュド王国も国土に砂漠を持つ国だ。水資源の貴重さは八洲と違う。八洲のヒネルトジャー、水道はそこまで発達していない。


 そんなところにいつでも水が出せます、な、私が居たらどうなるだろうか? あっという間に水製造装置みたいになって扱き使われるだろう。本当に結婚させられるかもしれない。


「私としても貴殿にはこの国にいて欲しいと思うが、国に帰るべきだろうな」


 えっ、もしかしてハリードさん、私に気がある? いや、まあ、ハリードさんはそこそこ筋肉もついてるし、それなりに強いから候補としてはありはありだっていうかありよりのありだけど、ま、まあ、こういうのは文通からって。


「ファハド王子は自由奔放な方なのでな。交代要員が居れば私も妻の元に帰りやすい」


 は? 妻!? あー、解散。解散です。奥さんいます。この人、奥さん持ちです! よく聞いたらお子さんも居たよ。ちゃんと妻子持ちだったよ。写真見せてもらったよ! 慎ましやかなおしとやかそうな奥様と聡明そうなお子さんだったよ!


 どうやら妻大戦ザウジャハーブの間は護衛は一時お休みになるとかで明日にでも帰るんだそうな。ハリードさんに稽古つけて貰えたらマシになったかもしれんのに。いや、でも、家族団欒の邪魔したくないからなあ。


 ハリードさんはいつでも言ってこいって言われたけど、魔法の練習をするからと丁重にお断りした。


 どこか魔法の練習をする場所がないかと思って探してみるとなんか荘厳そうな建物を見つけた。ラティーファさんに尋ねると、清真寺(マスジド)という建物なのだそうな。礼拝堂みたいなものだとか。


 入ってもいいかと尋ねたら今は大丈夫だと言われたので中を見せてもらうことに。中に入ると広い空間に何か魔力では無い気が満ちてる様な感じがした。

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