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公館(episode107)

アンネマリーさんおっすおっす

 とりあえずお腹もいっぱいに……いや、なってないけどそれなりに満足はしたから寝ることに。また襲撃して来られると面倒なので結界を張っておく。さすがに解呪できる人間はこっちには居ないだろう。向こうでも稀有な才能だったし。


 朝起きたら部屋の外でガンガンと何かを叩く音が聞こえた。朝から騒がないで欲しい。もし敵か何かだったら遠慮なく……あれ? 黒峰さんだわ。


「おはようございます」


 黒峰さんは何か叩きながら口をパクパクさせている。なんて言ってんのか聞こえないよ? もっと大きな声で……あ、遮音結界なんだった。外で騒がれても大丈夫な様にしてたんだっけ。とりあえず結界は解除しよう。


「黒峰さん、おはようございます」

「あ、良かった。無事だったのね」

「ええと、何が?」

「昨夜襲撃を受けたと聞いて朝一番で駆け付けたんですよ」


 朝一番、ということは襲撃受けてすぐじゃないのか、と思ったら報告受けたのが朝一番だったらしい。そこから慌てて身支度をしてここに来たのだとか。お手数お掛けしました。


「では、こちらに着替えてください」


 黒峰さんが差し出したのは黒いスーツ。胸のサイズが合ってるかは分からないが、黒峰さんが用意してくれたということは大丈夫なんだろう。


「これは?」

「今からナジュドの大使館へ参ります」

「ええっ、そんなこと言われても」

「あなたはファハド王子の恩人なんですよ。それで大使館に招待されてます。断るのは失礼にあたります」


 いや、恩人だからって招待しといて受けなかったら失礼っておかしくない? そういうのは招待じゃなくて強要って言うんだよ。いやまあ私も貴族の娘だから自分のうちより上位の貴族からの招待は断れないって分かるけども。公爵家とか言われたら泣く泣く参加するしかないもんね。


「……分かりました。じゃあ支度しますので」

「四十秒で支度してください」

「嫌がらせですか?」

「じゃあ三分間待ってあげます」


 私、知ってるよ。それ、実際は一分もなかったって。嘘つきだよねえ。


「そんな時間だと着替えられません」

「分かりました。私がお手伝いします」


 そう言うと黒峰さんは手をワキワキさせながら私をベッドに押し倒した。いや、押し倒す必要あったの!?


 ひゃあ、なんでいきなり上着脱がすんですか! あ、あ、下半身も。ズボン脱がして何をするつもりなんですか! あ、はい、着替えさせてくれるんですね。いや、分かります。分かりますけども!


 パンツは脱がさないんですね。まあその方がいいですが。えっ、ブラは脱がすんですか? 新しいのがある? 分かりました。そもそもサイズがあってなかった? そんな馬鹿な!


 うつ伏せにされておっぱいをブラに押し込められた。ううっ、もうお嫁に行けない。行く気もないけど。で、このスーツ、肩幅とかも測ったようにピッタリなんですけど。いつの間にこんなの……えっ、凪沙に連絡したんですか? その発想はなかった。確かに服選んでくれてたのは凪沙だもんなあ。


 上も下もピッタリとスーツに包まれて完成。足元はスニーカー脱がされてパンプスってやつ。フラットヒールとか言ってた。実際、足元は歩きやすいように平べったい。黒峰さんのはハイヒールというやつだけど、よくあんなので歩けるよね。


「では、参りましょう」


 カツカツカツとホテルの廊下を歩いてエレベーターに乗り込み、ホテルからチェックアウトする。料金の支払いはしたのかと言ったら、入る時に精算なんだって。


 外に待機していた車に乗り込む。タクシーとかじゃないんだ。運転手がついてるから裕也さんが回してくれたやつだろう。黒峰さんも特に疑問もなく乗り込んだからね。


 しばらく高速道路のような高架道路を走って二十分くらいで降りる。少し自然が残ってる山の中的な場所だ。下道で車を走らせていると鹿が目の前に出て来た。脂が乗って美味しそうだから狩ろうと思ったらここでは狩猟禁止なんだって。


 更に走っていくとなんか大きな御屋敷が見えてきた。なんかデカい門が自動的に開き、車に乗ったまま庭に進んでいく。周りに生えてる木々はあまり見た事ないやつだ。


 そのまま玄関前まで着いたらいかにも執事さんみたいな初老の方が迎えに出てくれていた。


「ティア様、黒峰様、ようこそいらっしゃいました。こちらはナジュド王国の大使館でございます。ファハド王子は中でお待ちでございます」


 恭しく下げられた頭に恐縮しながらそのまま邸内へと足を踏み入れる。廊下にはなんか綺麗なカーペットが敷いてあり、廊下の横にはなんか綺麗な絵とか綺麗なツボとか綺麗な宝飾品が飾られていた。多分高いんだろうね。そういえばうちの廊下にもツボくらいはあったかな?


 そのまま真正面の部屋へと辿り着き、ドアを執事さんがノックする。扉が自動的に開き、中にはファハドさんとハリードさん、そして何故か裕也さんも居た。あとよく見るとカチコチになったアンネマリーさんがそこにいた。


「あれ? アンネマリーさん?」

「来たわね、このトラブルメイカー!」

「酷いですよ、せっかくの再会なのに」

「あんたね、ここがどこだか分かってる? ナジュド王国の大使館よ? しかもそこに鷹月歌たかつかの御曹司までセットだなんて、場違いにも程があるわよ!」


 いや、別に私が呼んでくれなんて言った覚えはないんですけど。ちなみに呼んだのは裕也さん。ナジュド王国の大使館ということで、外交官である妖世川の人間がいた方がいいんだって。それで私と旧知の仲のアンネマリーさんが呼ばれたそうだ。やっぱり私、悪くないじゃん!


「ミス、ティア。改めてお礼を言わせてください。あなたがいなければ我々の命はなかったと思う」


 いやまあ確かに銃弾は無効化したからそれだけの働きはしてると思うんだけど、そこまで言われることかな。ちょっと魔法の適性があれば直ぐに……あ、この世界魔法なかったんだっけ。


「まあ座ってください。食事でもしながらゆっくり話しましょう」


 そう言われてみたら朝ごはん食べてなかったな。時間的にはもうブランチだけど。

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