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弾丸(episode106)

作者はドロドロ豚骨派です。

 凪沙に電話したらむちゃくちゃ怒られた。いや、仕方ないやん、正当防衛だよ! えっ、豪華客船に勝手に乗ってずるい? 私も乗りたかった? さいですか。


 タケルの方は獅子王組と船越の人間が何かやってこないか心配してくれていた。そこまで気にする必要があるのかは分からないけど。


 晩御飯にルームサービスとやらを頼んだ。いや、外に食べに行くって言ったんだけど危ないからやめてくれって裕也さんが。料金は滝塚で持つと言われたから遠慮なく。鷹月歌たかつかじゃないのか、とも思ったけど。


 せっかくだし、お高いものでも食べようかと思ったけど、フライドチキンとカレーにしておいた。さすがにフレンチのコース料理なんてものは用意されてないらしい。


 注文して直ぐに料理が来た。いや、いくらなんでも早くない? そういえばラーメン屋でチャーハン頼んだ時、奥でチーンと音がして温かいチャーハンが直ぐに出て来たこともあったな。もしかしたらこのホテルもそういうところなのかも。まあお腹に入ればいいんだ。ドアにチェーンを掛けたまま、外を伺う。


 外にいるのはボーイさんというのだろうか。ホテルの制服を着ている男性だ。だけどなんか違和感がある。食事を運んできたであろうワゴンに白い布が被せてあるのだ。


 私が頼んだのはカレーだ。いや、蓋をしてるのかもしれないがカレーに白い布がついたらどうするのだろう。それに下の方が何か膨らんでいる気がする。


 私はチェーンを外してホテルマンをまねきいれた。ガラガラと押して部屋に入ってくる。私はこっそりと口の中で詠唱をしている。


 部屋の真ん中でホテルマンさんが白い布をバッと外すと、そこから男が一人飛び出して来た。手に持ってるのは黒くて長い棒の様なもの。


「あんたにゃ悪いがここで死んでもらうぜ。おおっと、抵抗しても無駄だぜ? こっちは二人だからな」


 よく見るとホテルマンモドキの奴は拳銃を構えている。あれは恐らく脅しだろう。バックアップなのかもしれないが。


「本部長の仇だ。オヤジはお前を自殺に見せ掛けて殺せとよ。うちのオヤジを怒らせちまうなんてバカな奴だ」


 本部長とかオヤジとか言ってるってことはおそらくは獅子王組なのだろう。船越の方の報復では無さそうだ。というか本部長は背中の骨を砕いた位で殺してはいないと思うんだけど。


「まずは気絶させて手足の自由を奪ってから犯してやる。なあに、ここから飛び降りて死ぬんだ。少しぐらいは楽しんでもバチは当たんねえだろ」


 七階くらいの高さから落ちたらまあ死ぬかなあ。私なら生き残れるけど。それでも意識を失った状態なら無理だろう。


「死ね!」


 そう言って黒い棒を振り上げる。いや、殺しちゃダメなんじゃないの? そこまで頭回らないのかな?


「〈水滴矢ウォーターアロー〉」


 私は男の顔面に水を浴びせかける。まあ殺傷能力はないから安心して欲しい。


「冷てえ! てめぇ、何しやがった!」

「頭を冷やしなさいって事よ。本部長は死んでなんかないじゃない」

「うるせぇ! 本部長は半身不随になって車椅子生活になっちまったんだ。本部長は、優しい人だったのに」


 優しい人はいきなり口説いてきたり、セクハラしてきたりするのだろうか? いや、優しさと節操のなさは同居したりするからなあ。


「本部長はな、お腹を空かせた俺たちの為に、企業を恐喝こうしょうして、俺たちに仕事シノギを取ってきてくれたんだ! しかも、メシまで奢ってくれて……何も悪いことしてねえじゃねえか!」


 してると思うけどこういうやつには何を言っても通じないだろう。なのでより一層頭を冷やしてもらうことにする。〈雷霆槍〉だと死んじゃうかもだからね。


「火門 〈氷結地獄コキュートス〉」


 火門なら私の苦手属性だから大した威力は出ないだろう。そう思って相手の頭を凍らせることにした。あ、凍てついた。あれ? こんなに威力高かったっけ? 完全に凍ってるだけど!?


「ひっ、バケモノ!?」


 ホテルマンの方は持っていた銃を取り落として逃げていった。私は火門の魔法で少しずつ氷を溶かしていく。うん、こっちの火力も増えてる気がする。


「おや、扉が……何かございましたか?」


 別のホテルマンさんがやってきた様だ。ワゴンの上にはカレーとフライドチキンが載っている。


「あ、ありがとうございます。なんでもないです。ご飯ありがとう」

「はい、どちらに置いて……ひっ!?」


 部屋の中に入って頭が凍っている男を見るなりホテルマンさんの顔が歪んだ。


「人殺し!?」

「あ、大丈夫です。まだ死んでないんで。なんかいきなり押し入って来られたんで対処しましたけど……そのまま放っておいてもらっても?」

「すぐに刑部省と病院に連絡を!」


 そう言いながら電話を取り出して掛け始める。私は受け取ったカレーを口に運ぶ。うん。美味い。しっかりとしたコクが出てる。いつも食べてるレトルトカレーとは比べ物にならない。


「おいおい、こりゃあなんだよ」


 さっき帰ったはずの水無月さんが戻ってきた。そして私がカレーを食べてるのを見てため息をついた。


「なんでカレー食ってんだよ」

「お腹空いたから?」

「よくこの現場の状態で食べれるな!」

「まあ私がしたことだから特に不思議なことは無いし」

「……聞きたいことは多々あるが、また取り調べをさせてくれ」


 そう言いつつ水無月は私のフライドチキンを取って食べた。


「あー、私のフライドチキン!」

「うるせえ! せっかくラーメン食ってるところに呼び出しやがって! オレの晩飯はダメになったんだからこれくらい食わせろ!」


 どうやら私は彼の晩御飯を邪魔してしまったらしい。不可抗力とはいえ申し訳ない。なんならルームサービスでも頼もうか? ああ、当然ラーメンもあるみたいよ?


「オレはとんこつ以外はラーメンとは認めねえんだ」


 なんか生きづらい性格してるなあ。私はバターコーンラーメンとか好きだけどね。あ、二郎系はちょっと無理かも。

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