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取調(episode105)

取調室での取調だとそのまま始末されてしまうかもしれないという事でホテルへ。

 連行された先は取調室……ではなく、どこかのホテルの一室。高級感はないが、ちゃんと清潔で好感の持てるホテルだ。


 「取調室じゃないんですか?」

 「外交問題になるかもしれんからな」


 なるほど。ナジュド王国の影響は小さくは無いらしい。まあ大なり小なり、八洲以外の国ならそれなりに尊重するのが八洲のスタイルだ。八方美人とも言う。


 「妖世川あやせがわの人間も来るからな。清秋谷けいさつだけで済みゃあ簡単だったんだが」


 付き添いの人にジト目で見られる。そんなの私のせいじゃないんだけど?


 「待たせたな」


 しばらくすると偉そうなオッサンと顔の怖い男が部屋に入ってきた。偉そうなオッサンはサングラスを掛けていて、部屋の中を見回している。一方で顔の怖い男は私の事を睨みつけているような気がする。いや、被害妄想かもしれない。目つきが悪いだけかも。


 「刑部省、国際犯罪対策課、水無月だ。一応警視だな。強面なのは分かってるが睨んでるわけじゃねえ」


 どうやら睨んでないみたいだ。しかし、国際犯罪対策課とか来たもんだ。まあナジュド王国とか聞いたらそうなるよね。


 「治部省中東方面担当のサルマッド・妖世川だ。まあ妖世川と言っても傍流だから気にしなくていい」


 同じセリフをアンネマリーからも聞いた気がする。まあそこはスルーしておこう。


 「では、取り調べを始める。色々質問することになるが気を悪くしないでくれたまえ」


 割と丁寧な感じで言われて拍子抜けした。実は顔が怖いだけでそれなりに紳士なのでは?


 「まず、お名前を聞こうか。なるべくなら偽名とかはやめてくれると助かる。ここであったことは基本的に秘匿情報だから他には漏れないと思ってくれ」


 妖世川の人間がいる時点でオフレコも何も無いと思うんだけど、そこはそれ。紳士的に接せられたら紳士的に返すのみである。目には目をハニワハオ。


 「ティア・古森沢です。生年月日は皇紀二千七百八年 年八月二十日……」

 「古森沢の人間だと?」

 「あ、はい。と言ってもパチンコ経営してるオーナーに引き取られただけですが」

 「ふむ、本家筋ではないということか。ならば必要以上に警戒しないでおこう。まあもっとも古森沢ならそこまで警戒も要らんがな」


 なんだかんだで傍流が山ほどあるのが妖世川と古森沢、そして十条寺である。川はハーフな人間が多いらしい。古森沢は多産系。というか支店を出すのに子どもたちに暖簾分けしてるから多く産むことが推奨されてるとか。凪沙もたくさん産みそうだ。


 「では、続けよう。船のオーナーである船越氏については知っているね?」

 「はい、何度か挨拶も交わしました」

 「その船越氏の遺体があり、船の責任者である船長からは君が殺害したという証言を得ている。これについて何か言うことはあるかね?」

 「そうですね、確かに直接手を下したのは私です。ただ、正当防衛なんです」


 私が直接手を下した、とハッキリ言ったところで困った顔をした。いや、しらばっくれる事なんか出来ないよ? 真偽の箱とか使われたら……あ、この世界にはないのかな。


 「そうか。君がねえ。まあ正当防衛と言われたなら情状酌量の余地があるかもしれんが。相手は曲がりなりにも造船大手の船越だ。古森沢とはいえ、末端の君の身柄を守ることは難しいだろう」

 「妖世川としては、ナジュド王国との国交の為にも彼女の刑を軽くして欲しいのですが」

 「いや、だがね。事が殺人ともなるとそういう訳にも」


 強面さんと妖世川の人が何やら揉めている。私の処遇に関することだろう。


 「失礼します」


 コンコンとノックの音が響いた。この部屋には誰も入れないようにと言われてると言ってた気がする。となれば刺客か何かだろうか。


 「どちら様かな?」

 「弁護士です。依頼を受けて来ました」

 「弁護士の同席を頼んだおぼえはないのだが」

 「依頼主の希望です。鷹月歌たかつかから参りました」

 「何!?」


 鷹月歌たかつかと聞いた瞬間に顔が強ばった。裕也さんが手を回したのだろう。私が一人だと色々まずいからかな?


 「失礼します。初めまして。鷹月歌たかつか様とファハド王子より依頼を受けて参りました、弁護士の鳩屋と申します」


 電話は四一二六だろうか? いや、古いって? なんか昔のビデオ見てたらCMで出てきて覚えちゃったんだよ。


 「そ、そうですか。しかし、事は殺人事件でして」

 「彼女の殺人は正当防衛だと聞いています。船越氏が怪物となって襲いかかったと」

 「そんな馬鹿な話が」

 「ファハド王子と鷹月歌の御曹司が証言をしていて、法廷にも出る用意がある、と」

 「むむむ」


 水無月さんにサルマッドさんが肩を叩きながら話し掛けた。


 「水無月さん、もう大丈夫じゃあないですか? 我々としても事を荒立てたくは無いのですから」

 「内部的には説得力がないとつつかれたりしますからね。まあですがナジュドの王子と鷹月歌の御曹司が証人なら上も文句は言えんでしょう」


 水無月さんはどこかほっとした様子だった。取り調べ自体をしたくないような。もしかしたらこの人は最初から私を無罪と思いつつも、突っ込まれても大丈夫な様に色々聞いてくれていたのかもしれない。


 「私はこれから刑部省ほんぶに戻って報告させてもらおう。現場にいたっていう獅子王組の奴らのこともあるってのにまあ。上が鼻薬でも嗅がされてない事を祈っといてくれ」

 「私の方も報告はあるが、まあ形式的なものだろう。ナジュド王国との仲を悪化させて石油の輸入に響くといけないのでね」


 そう言って二人は帰って行った。弁護士の人は何かありましたら、と名刺をくれた。電話番号はよいふろじゃなかったよ。


 電話があって黒峰さんからだった。今日はこのままホテルに泊まり、明日改めて迎えに来てくれるんだそうな。晩御飯はホテルでは用意されてないらしい。何か食べに行こうかな。その前にタケルか凪沙に電話しとこうかな。

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