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逮捕(episode104)

逮捕されました。

 「大丈夫かい?」


 さすがに心配になったのか裕也さんが声を掛ける。とりあえずゴリラは黒焦げだから多分大丈夫だろう。いや、完全に動かないかどうか確かめるまでは過信しない方がいい。


 「おそらくは。だけどこっちにはこないでください」

 「わかったよ。よろしく頼む」


 裕也さんは黒峰さんと避難を継続する。ふと見るとハリードさんがアフマドとかいうやつの剣を必死に凌いでいるみたいだ。


 「ハリードはオレが抑える! 他のやつは王子を殺れ!」


 そんな指示を出していた。色めきたつ部下ども。ファハドさん絶体絶命! 仕方ない。私が介入しよう。私が、私たちが、ガン○ムだ! 違うか。


 「木門〈電磁網エレクトリックネット〉」


 触れると痺れる電磁の蜘蛛糸。網状に張り巡らされたそれは絡めとるように武器にまとわりつく。まあ相手の持ってるのがシミターみたいな剣だったからこれにした。


 「こんなもの、直ぐに蹴散らして……何っ!?」


 見事に引っかかって痺れたヤツがいるみたい。迂闊な。避けて通ろうとしても道がない。まごまごしてるから水滴矢ウォーターアローをぶつけてやる。


 「なんだ? 冷たいが単なる水か」

 「この程度で我らが怯むとでも?」


 いや、確かに身体を濡らすのがせいぜいな魔法ではありますが。ただね、今の状況において「身体を濡らす」というのがどのような効果をもたらすのかと言えば。


 「はぎょぎょぎょぎょ!」


 ほらひっかかった。いわゆる電磁ネットの威力をあげるためなのだ。


 「くそ、この程度で」

 「ちっ、何をやっている」


 アフマドが私の電磁網のところまで接近してきて、風圧だけで私の網を蹴散らしていった。確かに有効な手段だ。まあ私も相手がアフマドなら別の手を考えただろうね。


 「もらった!」

 「ぐぅ、しまった!?」


 その一瞬の隙をハリードさんが逃す訳がなかった。煌めいた刃は咄嗟に受けようとしたアフマドのシミターをくぐり抜けて、アフマドの左腕に直撃したと思ったらボトンと腕が落ちた。


 「ぐおおおおおお!?」


 肩口から吹き出す血を止めながらアフマドは退却の指示を出す。潮が引く様に男たちは部屋から去っていった。船長はさっきから腰が抜けて震えている。白い髭が船長っぽいなって思ってたけど、はったりだったみたい。


 その後は船のオーナーであるゴールドゴリラに何とかしてもらおう。部屋を移るかと言われたがこのままでいい。


 「ハリード、ご苦労だった」

 「申し訳ありません。仕留めきれませんでした」

 「お前が気に病むことでは無い」


 ハリードさんに取って因縁の相手とも言うべきアフマド。ハリードさんの兄弟子に当たるようで、国の剣術流派の師範から、流派を抜けたアフマドを指名手配しているらしい。


 おいおい、指名手配してるようなやつが手駒なのかよ、ファハドさんの兄は。名前はギラルらしい。長子継続なら面倒はなかったのかもしれないが、ファハドさんがとても優秀なのがいけないらしい。特に八洲の鷹月歌たかつかの御曹司と懇意にしてるのがかなり有力視されてる原因らしい。


 鷹月歌の方は鷹月歌の方で、跡継ぎ問題はそれなりにあるので、もしかしたらそっちの刺客かもと警戒はしていたそうな。


 鷹月歌のボディガードを使えばいいのに、って思ってたんだけど、そういうことなら身内は信用出来ないよね。鷹月歌の外であるタケルに協力を仰いだのも無理は無い。


 まあもっとも、今回の獅子王組の件は裕也さんを単なる中小企業の若き社長程度にしか見てなかったから暴力で潰そうとしたんだと思う。ゴールド野郎の短慮さだろうね。


 「ありがとう。君のおかげで命が助かった。ぜひ礼をさせて欲しい」

 「あ、いや、仕事の成り行きということですから。特に必要は無いです」

 「そう言わないでくれよ。なんなら花嫁にならないかい?」


 あー、これは冗談で言ってるなと思ったのであはは、真っ平御免ですと笑って袖にしておいた。なんでもお国では一夫多妻制で、四人まで奥さんを持てるそうな。いや、そっちの抵抗はないよ? 私も元々貴族だからね。


 というか私の国でも奥さんは三人まで、妾は含まれないみたいな法律だったはず。貴族の使命は子供を産んで家系を途絶えさせずに次代に繋ぐこと。恐らくファハドさんの国の王族とかもそうなんだろう。


 それからオーナーが不慮の死を遂げたということでクルージングはお開きに。私は容疑者として取り調べを受ける事に。

 あるぇ?


 「船長の証言であなたに殺人の容疑が掛かっています」


 あー、まあ、確かにぶっ殺したのは私がやりましたが、正当防衛になりませんかね? ならないかあ。


 などとやっているとファハドさんが助け舟を出してくれた。裕也さんは静観してる。いやまあバレたらまずいってのは分かりますけど。


 「あー、キミは八洲のポリスかね?」

 「そうです。清秋谷のものです」

 「私はナジュド王国のファハド王子というのだが」

 「はあ、……はっ!?」

 「彼女は私の命の恩人でね。もし、彼女を逮捕すると言うなら私は彼女の為に大使館を動かして、この船のオーナーに殺されかけたと国に言わねばならないのですよ」

 「そ、そうなのですか? し、しかし、我々も仕事でして」

 「ああ。もちろん仕事の邪魔はするつもりは無いよ。ただ、その場合、外交問題となって、最悪我が国は石油の輸出を止めてそれを他の産油国とも話し合わねばならないのだが」


 警察官の顔から血の気が引いていくのがわかる。まあそうだよね。現場の一警察官が国の輸出停止とか言われても思考の方が停止するよね。


 「あ、あのう、この件は上に相談させていただいても?」

 「もちろんだよ。私はこの国の警察にまで文句をつけるつもりは無いからね」

 「ありがとうございます。ですが、そちらの女性には一応形だけでも連行させていただかないといけないのですが」


 下っ端は辛いよね。まあ分かるよ。私も下手に抵抗するつもりは無いし、ついて行く分には構わないから。裕也さんにはアイコンタクトで護衛はここまでと言っておいて、警察官の車に乗る。パトカーに乗るの初めて……ではないな。

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