幕間〜とある女神の愚痴〜
どっちも100話到達記念の女神サイドってことで。
あーん。まあ、こんなの食べないとやってられないわよね。四凶と呼ばれる下位神が暴れ出すかもしれないってことで、メンテナンスにかける時間が増えたのだ。お陰で私の自由時間が減る。そう、残業が増えたのだ。
いくら下位神が出るかもって言ったからって応援が来るわけでもなければ、他の世界を蔑ろにしていい訳でもない。それがあったから二人に加護を与えて様子を見る事にしたんだけど……
加護の使い方教えるの忘れてた。いや、魔法とか超能力とかの能力は上がってるけど、それは副次的なものなんだよね。メインの能力は相互通信と緊急退避だ。
二人にはお互いに通信ができるようにチャンネルをセットしてある。いやまあ使うにはコマンドワードを呟かないといけないんだけど。これはお互いに状況を把握し合う為のもの。というか元々の世界の人から直接聞いた方がいい場合があると思ったのよ。
ティアの元いた世界での四凶というのは伝説の存在。昔から英雄譚なんかにも登場していたからね。四凶とまではいかなくてもその配下クラスならいくらでも暴れている。渾沌の七竅なんかはその類だ。のっぺらぼうの渾沌の目や耳や鼻や口となって活動している奴らだ。名前もあったと思うがよく分からない。あ、左耳って奴は倒されたのかな? 昔そんなことがあった気がする。
とまあ、そういうのがあるので私を通さずに直接やり取りをしてもらおうって訳。べっ、別に私がめんどくさくなったからとかじゃなくて! いや、むしろ、私も聞かれてもわかんないっていうか。ほ、ほら、作ったのはいいけど、昔の仕事すぎてどうやったのか分からなかった事とかあるじゃない? そういうの。
覚えてるわけないじゃない! あの頃は仕事仕事で終わる頃には終電間際で、コンビニでカップ酒と菓子パン、カップ麺を買って食べる毎日だったんだもの。お弁当? 酒買うために節約してたの!
ま、まあ、今はワイン買って家で優雅にのんびりリクライニングチェアに座るくらいの余裕はね。……四凶が出るまではあったんだけどなあ。だ、か、ら、丸投げしたって訳じゃないからね! 現地民の協力が必要なんだから!
もうひとつの緊急退避はこの第十三世界への避難よ。相手は下級とはいえ神だったものだからね。命の危険とかは普通に有り得るんだもん。そういう時に一時避難して、体勢整えてまた頑張ってもらうの。ここに来ればどんな夢も叶うとは言わないけど、それなりのことはしてあげられるし。なんならセリオース連れてく? 便利よ。まあ稼働し続けられるかは別だけど。
だから早めに二人にはこの事を伝えたいんだけど、どうやら二人ともここには来そうにないし。えっ、そんなにホイホイ次元移動させてもいいのかって?
……ええと、ええと、そう、そうよ! 二人とも女神の加護を持たせたからそういうの干渉しなくなったんだわ! 何たる副作用……いや、計算通り。つまり、二人は女神の眷属ね。女神の眷属と書いて派遣社員と読ませてもいいと思うんだけど。いや、スポットアルバイターかな? タ○ミーとかよりは身元しっかりしてるけど。
ま、まあ、そんな感じでこの第十三世界には来ることが出来るようになったし、なんなら向こうの世界のものも持ち込める様にはなったんだから。私はそういうの簡単に持ち込めるけど持ち出せなくなるんだよね。女神権限でやってるから。
キューはどうやら商売を始めるみたい。というか教団とやらを潰すとか言ってたな。ところで教団のシンボルが顔の無い鳥なんだけど、もしかして……あ、いや、任せよう。キューに。港町ってことで魚介類が美味しいだろうから堪能して欲しいわね。私もお刺身食べたくなっちゃった。
ティアの方は豪華客船だっけ? まあティアの世界では船は命懸けで乗るものだもんね。そりゃあびっくりするよ。場所によっては女は船に乗せると女神が嫉妬するから沈められるって言われてたらしい。いや、私は嫉妬してないよ。どっちかって言うとそういうの嫉妬するのは調和神様だよねえ。
ん? キョロキョロ。よし、気付かれてないみたい。迂闊なことは口走れないなあ。危ない危ない。
そういえばあのファハドとかいう彼は恐らく彼流子の子孫だろうね。黒と白の子どもをそれぞれ作ってたからその黒い方だろう。黒は西に、白は東に向かって国を立てたみたいだから不思議なもんだ。
まあ彼流子は仕事だけはよく出来たやつだったからなあ。顔はちょっとブサイクだったけど。いや、鷹月歌も古森沢も酷いんだよ。鷹月歌は「あなた程度で私に釣り合うと思って? 身の程を知りなさい!」ってこっぴどく振ってたし、古森沢は「ごめんね。あなたのこと男として見た事ないんだ。ほら、友だちとかならいいけど。えっ? 関係の進展? うーん、ないかなあ。うちの犬に結婚してくれって言われても受けないでしょ?」って。友だちとか言いながら実の所犬扱いしてたって事よね?
流石に同情したから八洲から出してあげたんだからね! あのままだと八洲の空気最悪になりそうだったし。まあ彼流子も一度に二人に告るなよ。どっちでも良かったのバレバレやぞ?
えっ、他の男どもはどうだったのかって? 四季咲はナルシーで他のやつに興味なかったし、右記島と妖世川は伴侶居たし、伽藍堂と清秋谷は女なんか興味なさげに殴り合いしてたし、十条寺は仕事はしてたけど、他の人のフォローが大変すぎて死にそうだったし。よく死ななかったよなあ。
ま、まあ、とりあえずまだ猶予はありそうなんで、そのうち二人には教えとこう。さて、私はそろそろ決算に向けて書類まとめないと。予算、予算を今度こそ取るの! そして、第十三世界の復興資金とプラズマハイビジョンテレビとマッサージチェアを手に入れるのよ! セリオース、決算書類手伝ってね!