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乗船(episode94)

作者は豪華客船とか乗った事ないので細かいのは知りません。こまけぇこたぁいいんだよ!!

 ええ、私もね。色んなオタク文化に触れてこの世界をわかった気にはなってました。ですが、所詮はフィクション。あんなこといいな、出来たらいいな、あんな船、こんな船いっぱいあるけど、みたいな感じでこの船体はフィクションです、実際の船舶とは関係ありませんってやつかと思ってたんだよ。海中を進むオウムガイみたいな名前の船とかある訳ないじゃん!


 私の船の認識は帆船。それも数度しか見た事ないやつだよ。かなり揺れるし、女は船に乗るな、とかで載せて貰えなかった。船の女神が嫉妬するとか聞いたな。クラバウターマンだっけ?


 私が裕也さんと黒峰さんに連れて行かれたのはそんな考えが取りとめもなく浮かんで来るような場所だった。いや、だって、海の上にホテルが浮かんでるんだよ? いや、ホテルどころじゃない。街だ。小さな街が載っている。あれか? 学園艦というやつか? パンツァーフォー!


 思えば前提からおかしかった。船に乗るというのになんか煌びやかなドレスに着替えさせられた。黒峰さんみたいなタイトなドレスが良かったんだけど、残念ながら私のサイズでは派手目なのしかなかったんだって。ううっ、ごめんよう。というか、そもそもサイズがあること自体はすごいことだと思うんだよね。貴族向けの店ってやつ?


「まあまあ、リラックスしてください。護衛してもらうためのカモフラージュですから。良くお似合いですよ?」


 似合ってると本当は欠片も思ってないような淡々とした褒め言葉で私を宥めてくる裕也さん。揺れてるおっぱいに目はいくものの、いやらしさは感じない。むしろ邪魔だななんて感情を向けられてる気がする。こういうのキューなら鋭いんだろうなと思ってしまう。


 乗船口のカウンターで黒峰さんが何か色々な手続きをしてくれている。私のもまとめてやってくれるらしい。大変お世話になります。


 船内に進むと、もう目がチカチカするほどに煌びやかな世界だった。成金趣味、というか色んなところに金細工の品が散りばめられていて落ち着かない。


「これはこれは、ウェルカァム! 我が船へようこそ!」

「これはこれは、社長自らお出迎えとは」

「ははは、もちろんですよ。滝塚様とはお近付きになりたいですからな。おや?」


 出迎えに出て来たのはどうやらこの船の持ち主の社長さんらしい。白いスーツに赤いネクタイ。髪の毛は染めているのか金髪だ。自然な感じじゃないから多分そうだろうなって思っただけだけど。自分を大きく見せようとしてるのかオーバーアクション気味である。


「これはこれは、美しいマドモアゼル? お名前を伺っても?」

「社長、ぼくの婚約者に声を掛けないでくれないかね?」

「なんと! 滝塚様の婚約者でしたか。それはそれは失礼しました。あまりにお美しいので。ごゆっくりとお楽しみください、レディ」


 マドモアゼルなのかレディなのかハッキリしろ、と思ったが、相手がいない場合はマドモアゼルで相手がいる場合はレディと呼んでるらしい。なんだかな。そんなことよりも。


「あの、裕也さん? 私があなたの婚約者というのは?」

「仕事の内だよ。婚約者ならそばについて離れなくても不自然ではないだろう?」

「確かにそうですが」

「それに、交際を申し込んでくる人も中にはいてそれの弾除けになって欲しいんだよね」

「むしろそっちがメインでは?」

「そうかもしれない」


 そう言って裕也さんは笑った。いやまあ確かにボディガードだからね。精神的にも戸籍的にも守るのも仕事の一部なのかもしれない。いや、違う気もしてきたな。


 船室は三人で一部屋の割り当てだ。裕也さんが私のことを婚約者って言ったから一部屋になった様だ。黒峰さんは見えてないのかな? いや、秘書だから問題ないとか?


 私は別に構わない。冒険者として活動する時から男性と野宿だって出来る。まあ野宿の最中におっぱじめられるって話を聞いた時にはどうかと思ったんだけど。聞かれてると思うと興奮する? 知らんがな!


 部屋で今後の段取りをする。船内パーティに出なくてはいけないとの事。その後カジノで適当にお金を落として部屋に戻ってくるんだと。カジノで勝っちゃダメなのかと聞いたら、勝つと社長が損するから後が色々面倒なんだって。弱くてハマりそうな人間はまた呼ばれるって聞いた。あーたしかに。


 ちなみに勝つのは時の運だから、万が一勝ったら別の場所で散財しないといけないんだとか。絵画ギャラリーとかあるらしいから絵でも買うのがいいとか。


 あと、アクセサリーの店があるからそこでオネダリしてってさ。私としてはあまり興味無いけど、バカっぽい女を演じて欲しいみたいに言ってた。


 バカっぽい女、というのはこの八洲ではおっぱいの大きい女イコール頭が空っぽという認識がなされてるらしい。私も凪沙もそうでも無いけど、そういう偏見は根強い。栄養が頭にいかずに胸にいってるとか。


 まあ、求められてる役割があるならそれを演じるのが役者ってものでしょ。いや、私は役者じゃないけど。人生は舞台、人はみな役者って誰か言ってたし。


「さて、まずはパーティだ。食事はまあ適当に。あまり食べすぎないように。がっつくのははしたないからね。ちょこちょこ食べてくれ」


 なんと難しいことを言うのだろう。もしかして最難関課題だろうか。食べられなかった場合は後で部屋にルームサービスを呼んでくれると言うので最悪食べなくてもなんとかなるらしい。まあパーティの後はそのままカジノに行くので空きっ腹のままで活動しろって事らしいけど。それなりに食べておくか。


 部屋を出てパーティ会場である、船内の大広間に行く。オープニングパーティというやつで、乗船した人は体調不良の人を除いて全員が集まっているらしい。


 先程の社長が壇上に上がった、金ピカの背景に金ピカのマイクか白いスーツに反射して光沢が眩しい。目潰しかな?


「レディース、アンド、ジェントルメン! 今宵は私の船にようこそ! 我が船、ゴールデンドーン号は皆様を歓迎します! 心ゆくまでお楽しみください!」


 万雷の拍手が降り注いだ。まあこの人数だもんね。

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