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種実(episode93)

八洲国はいわゆる「五族協和」(旧満州の定義。満州族、漢民族、蒙古族、朝鮮族、日本民族のやつ)が成立した世界なので、中国の版図は八洲国なのです。


もちろん、地球とは違います。フィクションで実際の世界とは違いますのでご注意ください。

「き、貴様、どこまでこのオレを、コケに、するつもりだ!」


 剛が立ち上がった。回復とかは出来てないし、内臓にダメージいってるはずなのに、立ち上がれるのはすごいと思う。


「おお、立てるんだ。すごいね」

「舐めてんのか? この程度の、打撃で! 功夫クンフーが足りてねえんじゃねえか?」


 元から功夫だかくふぅだか分からないけど足りてないと思うよ。魔力はかなり足りてると思うけど。


「ちっ、あまり使いたくなかったんだがな」


 そう言うと剛は懐から小さな小瓶を取り出していきなりそれを止める間もなくあおった。


「なっ!? 剛、貴様、何をやって……」

「うるせぇな! 今勝たなきゃ意味ねぇんだよ! 黙ってろ!」


 雇い主のはずの王大人にまで暴言を吐き始めた。おそらくはもう用心棒とか殺し屋とかじゃなくて、一個人として私の事が許せないのだろう。知ったこっちゃないんだけど。


「くっくっくっ、来たぜ来たぜ来たぜ、きたきたきたきた、キターーーー!」


 剛の身体が異様な感じに膨らんでいる。あれは、筋肉なんだろうか。さすがの私もああいう人外的な筋肉はそこまで好きじゃない。やはり、筋肉は地道に育てないと意味が無いのだ。それは日々の鍛錬によってだね……


「くたばれ!」


 ピッチャーがクォータースローでボールを投げるみたいに拳がものすごいスピードで飛んでくる。百マイルくらいのスピードかな? メートル法に直せ? 百六十キロくらいだよ!


「水門〈流水防御ウォータースリップ〉」


 展開するのは水門の防御魔法。だから、私の得意魔法は水門。回復と防御の魔法なんだって。ドラゴンのブレスでも防げるのにこんな程度じゃあダメージにもならない。


 すいません、嘘です。ドラゴンブレスは無理です。火竜とかのブレス食らったら蒸発します。いや、女神の加護貰った今ならいけるかな?


 ともかく、パンチ位は受け止められるんだけど、敢えて態勢を崩してもらう。流水防御ウォータースリップというのはそういう魔法だ。いやまあ実際は剣士の大振り攻撃とか狼系の飛びかかり、クマ系の振り下ろし攻撃をいなすためのものなんだけどね。多対一の状況では役に立つんですよ。今は、まあ殺しちゃダメそうだからね。


 私の身体の表面に流れている水が男の攻撃を逸らす。防御を抜けるにはその程度のスピードでは無理だよ。男はたたらを踏んでバランスを崩したままだ。下半身が上半身に追いついてない。まあ筋肉という攻撃力は増しても制御は出来てないのだろう。


 態勢を立て直した剛は怒り狂ったのか、周りのものを壊しながら暴れている。このままではこの店が壊れてしまう。


 いや、壊れても自業自得だとは思うが、壊れちゃうと黒峰さんが危ない。多分ついでに裕也さんも。あと、私の身分的に指名手配とかは避けたい。それは大丈夫だと思ってるけど。


「仕方ない」


 私は懐から小さな木の実を出した。古ぼけてないよ。ちゃんと使えるやつだよ。ちなみにこの世界のものでは無い。私が持ち込んだ、事になるのかな? だから二度と手に入らないから使いたくはなかったんだけど。植物、錬金術で品種改良出来ないかな?


「緑の手よ、疾く来たりて、育て。木門〈急速成長クイックグロウ〉」


 言いながら木の実を投げる。木の実は光って暴れてる剛に当たると、ぱかりと割れて、中から太いツタが剛の四肢に巻き付いた。


「ぐっ、ぐおおおおおお!?」


 指に触れれば引き裂ける可能性もあるかもしれないが、このツタはあっという間に関節部分に到達し、そこを縛りあげる。関節が自由に利かなくなった剛は為す術もなく、床に倒れた。


「さて、終わったかね?」

「ええ、まあ。一応は」

「それ、すごいね。どういう仕組み?」

「企業秘密です」

「ぼくにも分けてもらえる?」

「ダメですね。そもそも使えません」


 この木の実は魔力に反応するのだ。つまりは魔力がなければ反応すらしない単なる硬い木の実ってこと。そのまま当たってもそこそこ痛いとは思うけど。


「では、諦めよう。ミスター王? お話は終わりですかね?」

「あ、ああああああ」


 ガックリと膝を着いて嘆くわんわん。隣にいた美人さん達も抵抗することなく大人しくしている。


「それでは色々話を聞かせてもらおうか」


 裕也さんが合図をすると店の外からいつの間に待機してたのか、黒服の男たちがドカドカと入ってきた。これ、私の護衛要らなかったのでは?


「いやいや、命を預けるには足りないよ。信頼に足りるのはあなただけだ。助かった。ありがとう」

「いや、私はいいんですが」

「どうしたの? 何か心配事でも?」

「いや、そこで蹲ってる黒峰さんの服をどうしたら良いかと。さすがに表は歩かせられませんよね?」


 それを聞いて今更気付いたのか、慌て出す裕也さん。とりあえず黒峰さんの為に部下を呼び出して、洋服を買って来させることにした。


 私は奥からチャイナドレスを持ってきて、それをとりあえず着ておくように渡しておいた。いや、だって、黒服の男たちがひっきりなしに出入りしてるんだよ? そりゃあ黒峰さん恥ずかしいでしょ!


「……世話になったわね」

「大丈夫です」


 思った通り、ボディラインが綺麗な黒峰さんにチャイナドレスは良く似合う。スリットが際どいままなので履いてるぱんつが丸見えだ。はあはあ、お嬢ちゃん、ぱんつ何色? ぱんつ履いてません! とはならない。大人の黒だよ。黒峰さんだけに!


 その後、ちょっとダボッとした上着と、ゆったり目のジーンズパンツを買ってきて貰ったので、再度お着替え。いや、チャイナドレスのままでも良かったと思うんだけど。人の視線集めてたし。裕也さんがそっちに反応もしなかったのは人の上に立つものの矜恃なのだろうか。


 アクシデントがあったので、以後の予定を調整して、次の予定は夜のパーティーなんだそうだ。なんでも船上でやるんだって。船の上で? かなり揺れない? それに夜に海の上とか正気の沙汰じゃないと思うんだけど?

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