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金銭(episode9)

まあ凪沙とタケルの関係はご想像にお任せします

「らっしゃーせー」


 やる気のなさそうな店員の声が聞こえた。なんか自動ドアを通る時のピポピポンとかいう音に紛れて聞こえずらかったから別の言葉を言っていたのかもしれない。


「じゃあまずお金の種類について説明するね」


 そう言いながらコンビニの中のテーブルに座っていくつかの硬貨と紙を取り出した。私が説明して欲しいのはお金なのだけど、もしかしてこの紙もお金の代わりになるのかな?


「これが硬貨。いわゆるお金だね。種類は一円、五円、十円、五十円、百円、五百円」


 そう言いながら一枚一枚硬貨を示す。ちゃんと全種類あるみたいだってタケルが言ってたからこれで全種類なんだろう。


 私は貴族家で育ったから計算も普通に出来る。だから何枚集めたら次のになるかは分かってる。問題は紙の方だ。


「こっちは銀行券、または紙幣と呼ばれてる。でも、実質的にはお金だ。これには五百円、千円、五千円、一万円とある」


 銀行券、紙幣は四種類の様だ。しかもお金として使えるって、確かに硬貨を持ち歩くのは重たいよね。


「じゃあこれがみんなお金なのね。じゃあ五万円とかならこの一万円が五枚って事?」

「そうだね。一番高い金額の紙幣は一万円だからそうなるね」

「じゃあ百万円とかならどうなるの?」

「もちろん一万円札が百枚だね? でもそういうのは銀行で取引したりする」

「銀行?」

「そう。お金を預けておくところだよ」


 どうやらギルドのシステムみたいなのがこちらの世界にもある様だ。冒険者ギルドが無いと聞いた時にはどこにお金を置いておくのかと思ったけどそういうものらしい。


 というと、ぱちんこ台の前でお客さんが使ってたのは何かのチケットじゃなくてお金そのものだったのか。という事はお金が台に吸い込まれて消えていくのだろうか。もしかして、ぱちんこって危ないのでは?


「まあお金の使い方だけど、とりあえず買い物しようか」


 タケルが買い物かごを持とうとするのでタケルには椅子に座らせてもでろーんとしている凪沙を再び背負わせた。私が背負ってもいいんだけどなあ。


「じゃあティア、それとそれをカゴに入れて、そう、あとは何か欲しいものある?」

「欲しいもの……あ、何か甘いものが食べたいのはある」

「甘いもの……お菓子かな。飴玉でも買う?」


 そう言われたので飴玉の袋をカゴに入れる。そしてレジと呼ばれるところに持っていき店員さんに差し出した。


「袋いります?」

「はい、お願いします」


 店員さんは袋の中に私がカゴの中に入れたものを詰めていく。合計金額を見てタケルが財布から千円札をいくつか出して、お釣りを貰う。なるほど、こうやって取引するのか。


「あーしたー」


 相変わらず何を言ってるのかよく分からない声をバックにコンビニから出る。そして私の部屋まで帰ってきた。


「凪沙、凪沙……ダメだ起きない。悪いけどこの部屋で寝させてもらってもいい?」

「あ、まあ凪沙なら構わないけど」


 布団はひとつしかないけど、私は床でも寝られるから問題ないだろう。タケルの寝る場所には困るが凪沙と一緒でもいいだろうか。


「ええと、これがご飯ね。ここから引っ張ったら中身が出てくるから」


 どうやら明日朝の食事の解説までしてくれるようだ。確かに朝ごはんはどうしようかと思っていた。


「あと、これが水道。捻ると水が出る」

「おおっ!」


 まさかあの銀色の棒みたいなのが水が出てくる魔道具だったなんて。魔力とか感じなかったよ?


「あと、これがトイレ」

「あ、それは知ってる」


 ここに来た時に凪沙に教えて貰った。まあ知ったのはトイレ掃除の時なんだけど。


「これはお風呂。ここをこうしたらシャワーを浴びれる」

「シャワー?」

「お湯に浸からずに汗を流す仕組みだよ」


 なんという事だろう。汗を流すのにこんなに水を使うなど考えた事もなかった。私みたいな水門の使い手でもいるのか? いや、魔法使いは居ないとか言ってた様な。


「で、ここを押したらシャワーからお湯が出るようになる。押してランプがついてる間はずっとだ」

「凄い! 水門と火門の複合魔法!?」

「いや、魔法じゃなくてガス給湯器なんだけど。まあいいや。お風呂はなるべく入った方がいいよ」


 つまり綺麗にしておけ、というのだろう。こう見えて私は綺麗好きなのだ。ちゃんと毎日身体は拭いているし、身体を拭く布も綺麗に洗っている。


「これは洗濯機。全自動だから洗濯物入れてボタン押したら乾燥までやってくれる」

「これで、洗濯? どうやって?」


 私にとって洗濯とはメイドさんとかが大きな桶に水を汲んで、洗濯板でゴシゴシする事だと思っていた。乾燥は晴れた日に干すしかないとも。


「全部自動だからね。出かける前に放り込んでボタン押せばいいよ」

「そうか、ちょうど良かった。私の鎧も洗いたいと思っていたんだ」


 私は好都合とばかりに放っておいた鎧を取り出す。


「あー、そ、それはまた調べてくるから洗濯機はやめて。せめて布製品にして欲しい」


 タケルが慌てて止めてきた。鎧はダメらしい。残念だ。まあ向こうでも鎧の手入れは専門のメイドがいたからなあ。


 それからいくつか聞いて眠くなったので寝ることにした。タケルはどこで寝るのかと聞いたら帰るんだって。まあ狭くて寝られないもんね。じゃあおやすみ。


「ちょっと、ティアちゃん! 私なんでここで寝てんの!?」


 朝、そこそこ早い時間に凪沙に起こされた。凪沙は布団を干している。どうやらそうするのが普通みたいだ。


「おはよう凪沙。昨日は良く寝てたね」

「私、どうやって店からここまで来たの? ティアちゃんが運んでくれた?」

「え? いや、タケルが背負って」

「背負っ!? あー、うん、わかった。ありがとう」


 なんか凪沙が真っ赤になって俯いた。恥ずかしかったのかな? でもまあお酒ってそういうものだし、気にしなくてもいいんじゃないかなあ? それから朝ごはんを一緒に食べた。ちゃんと二人分買ってたみたいだよ、タケル。さすがだね。

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