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第七十九話 逢引

計画練るだけでこんなに……

「デートのプラン? そうだな、先ずは待ち合わせからだな」

「どこで待ち合わせるんですか?」

「やはり乗合馬車の駅だろう。駅前には店も多いからね」


 うん。乗合馬車とはまあいわゆるバスみたいなものだ。都市部、王都なんかにはあったりする。エッジには無いんだよね。誰も乗らない。もっとも、私はどちらにしても転移テレポートがあるから乗らないんだけどね。


 で、当然ながら乗合馬車の駅、というのは大通りの真ん中辺りにある。その場所は馬車を待つ人で賑わっており、馬車待ちよ人のために店が出てたりする。屋台なんかも出店されてはいるが、やはり場所取りが激戦区らしくしょっちゅう入れ替わってる。


「そうですね。待ち合わせにはちょうどいいですよね」

「私はソワソワしながら彼女を待つ」


 うん?


「彼女は少し遅れたのか息を切らせて小走りで近寄ってくる。そして、軽やかに待った?と声を掛けてくる。そこで私は「今来たところだよ」と余裕のある笑みを浮かべて彼女の遅れを許す。その私の度量の大きさに感動した彼女は私と腕を組んで街へと繰り出し」


 ストーップ、ストーップ! なんの寸劇をするつもりですか! そういうのは計画とは言わずに妄想と言うんです。


「何か間違っていたらのか?」

「間違ってたも何も前提から違います。聞いたのはデートの計画です」

「こうすれば自然と腕が組めるという綿密な計画によるものだが?」

「そもそもエレノアさんが遅れなかったらどうするんですか! あの人、時間はきっちりと守る人ですよ!」


 というか冒険者ギルドのギルドマスターの秘書なんだから当たり前じゃないかな? アリュアスさんも時間に余裕のあるタイプではないと思うし。


「困ったな。それじゃあ腕が組めない。なあ、キュー君。君、当日にエレノアさんが待ち合わせ時間に街に合わなくなるように工作してくれないか?」


 もう絶句である。エレノアさんをわざと遅れさせて罪悪感を募るというのは貴族的な権謀術数というやつなのだろうか。


「あの、私はどちらかと言われたらエレノアさんの味方ですからエレノアさんに全部言いますよ?」

「待ってくれ! 君を助けたじゃないか!」

「ええ、助かりましたが、その対価として協力して欲しい、とは言ってませんよね?」


 ウィリアムはエレノアさんにデートして欲しいと言っただけだからね。私のこのアドバイスは単なるサービスだよ。というかむしろエレノアさんがデートを少しでも楽しめるようにまともに矯正したいだけだ。


「デートで重要なのは行先です。どこに行くつもりですか?」

「そうだね、普段は花を見に行ったりとかスイーツを食べに行ったりとかお芝居を見に行ったりとかしてるかな」


 つまり、デートについては素人ではないということ。なんでも割とナンパをして、女の子誘って遊んでるらしい。あれ? 割とエスコート慣れしてるのでは?


「女の子の方からあそこ行きたいとかここがいいとか言われるからそれに冷静に対処するだけだよ」

「それをエレノアさんにもやってください」

「無理じゃないかな? そもそもマイゴッデスはデートに乗り気じゃ無さそうだし」


 それなのに遅れたのに焦りながら小走りで駆け寄ってくるとでも思ってたのかな? あー、でも乗り気じゃなくて躊躇してたら時間が迫って慌てて、というのも考えられない訳では……あ、いや、エレノアさんなら嫌なことは早く終わらせようとするかな。


「とりあえず踊るのは禁止ですから。だから予めデートの行き先を決めとけば楽なんですよ」

「そんなことを言われてもなあ。一緒に魔物狩りでもしようかな」

「絶対やめてください」


 とりあえず多分行くなら観劇か買い物だと思う。買い物は、エレノアさんがキャッキャ言いながら買い物する様は想像出来ない。エレノアさん……ドレス……着せ替え……うっ、頭がっ!


「買い物とか、いいかもしれませんね。女性は服とか選ぶの好きですから」


 エレノアさんの服、とは言ってない。まあ実際エレノアさんなら何を着ても似合うとは思うけど。むしろ、私とかリリィちゃんの服なら喜んで選ぶんじゃないかな? ベルちゃんさんでギリギリかな。ビリー君とかベン君に女装させるのも好きそうだけど、それはまた別の話。ウィリアムを女装させても可愛くないから気持ち悪いだけだもんね。グスタフさんまでいけばそれはそれで面白いからいいと思うんだけど。


「そうか。服か。ならば仕立て屋に行って彼女の服を仕立てて貰うか」

「あの、さすがにそこまでするのはどうかと」

「何故だ? 既製服プレタポルテよりは注文服オートクチュールの方がいいじゃないか」

「……女性に注文服オートクチュールを贈るのは、その服を脱がせたいという願望があるそうですよ」


 そんなのはこの世界にあるのかは分からないが、私が元いた世界ではまことしやかに言われていた言説だ。まあ既製服プレタポルテでも同じ様に表現されていたけど。私? もちろん送ってもらったことは無いよ。というか仕事の時以外は白いワンピースばっかりだったし。


「それは……いいな」

「エレノアさんに嫌われてもいいならそれで良いのでは?」

「……すまん」


 ということで既製服プレタポルテのお店で買い物するというデートになった。まあエレノアさんが既製服プレタポルテ着るのかって話だが、仕立服オートクチュールは基本的に貴族の着るものらしいのでエレノアさんは違うだろう。既製服プレタポルテでも仕立服オートクチュールみたいに着こなしてるからそこはそれでびっくりするけど。


「そして、その服を着て観劇にでも連れて行けばいいと思いますよ。なんかラブストーリーみたいなのやってるみたいだし」


 演目はよく分からないけど、家同士が反目しあってる男女の悲劇的な恋の行方みたいなストーリーだ。ロミジュリかな? ラストで殺し合うのかは分からないけど。殺し合うんじゃなくて自殺し合うんだっけ? 殺し合うのは正義じゃないもんね。オーラロードは多分開きません。

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