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提案(episode79)

痩身薬は女の夢

 なんか諾子さんに呼び出された。こないだの毛生え薬の件で話があるそうだ。まああれは処分に困るものなので、適当に薄めて流してもらえばいいかなって思う。というか薄めて流せば大丈夫よね?


 いや、一応錬金術のスキル的には薄めれば効果が薄まって安全に処理できるとは書いてあるんだけど、どこまで薄めれば安全なのかはよく分からないんだよね。


 だから、諾子さんには迷惑かけてるならとは思いながらも、あの施設はしばらく使う気ないからいいのよ、とは言って貰ってたんだけど、様子が変わったのかな?


「あ、ティアちゃん、こっちこっち」

「諾子さん、どうもおまたせしました」

「いいのよ、今来たところだから」


 デートかな? ちなみに場所は喫茶店。ケーキが美味しいお店なんだって。私はコーヒーを、諾子さんは紅茶を優雅に飲んでいる。私がコーヒーなのはとてもハマってしまったからだ。もちろんブラックで。


「それで用件というのは?」

「単刀直入に言えば、あの毛生え薬を商品化したいのよ」


 随分と単刀直入だ。諾子さんってもっとたくさん話して要領を得ない人かなと思ってた。


「ビジネスはまず要点を伝えないといけないもの」


 紅茶を飲む諾子さん。飲んでる様が絵になる人だ。本当にタケルを産んだ母親だとは思えない。って、私の母親よりも歳上なんだよね。


「まあ、経緯を説明するとね……あのね、私もティアちゃんの開発した毛生え薬っていうのにとても興味があったの。だからね、自分で試そうと思ったんだけど、私にはそういう薄毛とか無縁だったのよね。そりゃあ生えてない場所もあるけど、そこはリュウジ君がそのままでいいって言ってくれるし、何より、髪の毛に作用するから効かないかもしれないって思ってね。だからメイに頼んでそういう人がいないか探してもらったの。お父様でもいいかなって思ったけどさすがに人体実験みたいな形になるから色々面倒そうでしょ? 私が言ったらそういうのすっ飛ばして志願しそうだけど、私が安全性を担保出来ないものを使わせる訳にはいかないし。だから使用人の中で頭が寂しくなってきた人を選んでモニターしてもらったの。そうしたらあっという間に髪の毛が生えてきたって喜びの言葉をもらったわ。もちろん、研究員の人達が商品化したい、売り出したいと製法を確認してきたんだけど、ティアちゃんの作り方は誰も真似が出来なくてね。それで、作って貰ったやつをこっちで売ろうって話になったの。だから今話を持ってきたのよ。どう?」


 マシンガントーク過ぎて途中から何を言ってるのか分からなくなっていた。まあ噛み砕いて理解すると、どうやら売り出したいらしい。


 私としては一旦オーナーの髪の毛が生えてきたのをもって、もうどうでも良くなっている。誰か知らない他人のハゲ頭とかどうでもいいのだ。


「ええと、そっちに預けてるのはいいてすけど、もう作りませんよ?」

「でも、原料のアンブロジアとかいう薬草は栽培してるんでは?」

「あれは毛生え薬だけに使うものでは無いので」


 正直言えば不老不死の妙薬になったりするんだが、それはあまり作る気がしない。


「じゃあ何を作るの?」


 ええと、ええと、アンブロジアを使ったレシピ……検索してみたんだけど、不老不死薬とか万能解毒薬とか若返りの秘薬とかちょっと考えただけでもシャレにならんようなものばかり浮かんでくる。もしかしてヤバい薬しか作れない?


 あ、これとかいいかも。ええと、なになに? ダイエット薬? 効果は、胃腸の運動をあげて、脂肪の燃焼を促進し、劇的に体重を落とす……まあ、これぐらいなら大丈夫かな。


「あ、えーと、ダイエットの薬を」


 皆まで言う前に諾子さんが血走った目をしながら私の両手を掴んできた。


「ダイ、エット?」

「あ、はい」

「どんな?」

「えっ?」

「どんな効果なの?」

「胃腸の動きを活発にして、脂肪の燃焼を促すとか」

「胃腸の動きを活発に? それは、もしかして、宿便なんかも」

「宿便?」

「……なんでもないわ。失礼したわね。その、その研究はとてもいい事だと思うのよ。ええ、そうですとも。とてもいい事だわ」


 顔はニコニコ笑っているが目が笑ってない。諾子さん、宿便がどうとか言ってたけど、もしかして便秘気味? いや、便秘気味ぐらいなら普通に水門の魔法で何とかなるんだけど……そういえばそういうのやってなかった気がする。


「それで、それは、いつ頃、形に、なるの、かしら?」


 少しずつ確かめるように言いながら前から迫ってこられても。あー、まあパチンコ屋やりながらなんでその内ですね。急いで開発する様なものでもないし、第一、肝心のアンブロジアがまだ育成中なので。やっぱりアンブロジアを増やすことが出来た方が安心して色んな薬に使えるから。


「そう。わかったわ。今は無理強いしない。その代わり、何か必要なものがあれば四季咲がバックアップするからいつでも言ってね」


 説明したらちゃんと分かってくれたのか、それ以上の追及はされなかった。命拾いしたと言うべきか?


 笑顔の中に凄みを浮かべて諾子さんと別れた。私的にはそういうダイエットとか無縁だからね。水門の魔法使いっていわゆる新陳代謝がとても活発なんだよね。身体に治癒の水門の魔力が流れてるからかな? だから正直、おっぱいは大きくなってもお腹が太ったことは無い。だって全部脂肪をおっぱいに移動させてるんだもん。


 凪沙にしても諾子さんにしても全然太ってないのになんでダイエットとかに興味あるんだろうか? 世の中にはダイエットした方がいい人とかいると思うよ。オーナーとかね。タケルはダイエットじゃなくて運動が必要かな。脂肪の燃焼じゃなくて筋肉の増強だよ。やはり筋肉。筋肉は裏切らない。レッツマッスル!


 あ、筋肉が増強する魔法薬とかもいいな。タケルで実験も出来るし、悪くないかも。アンブロジアを使うレシピではないけど。でもなんか筋肉増強薬とか作ってたら、そんなの作らないでダイエット薬作れって言われそう。まあアンブロジアが育つまでなんにも出来ないんだけど。

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