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日記(episode78)

ちょっと趣向を変えてみた。

 アンブロジア育成日記。


 一日目。

 今日からアンブロジアの育成をすることにしました。種れんこんならぬ、種アンブロジアを植えたのです。育成には一メートルほどの深さの水深が必要らしいのですが、室内で育てるのにそんなスペースはありません。まあその内に植え替えるかどうにかしようと思います。暫くはこれで育てます。


 二日目。

 目に見えて変化はありません。そりゃあそうです。だって植えたばかりだもの。木門の魔法を使えば生育期間は早まると思いますが、そうなると薬効がどうなるのかが気になります。一度育成を終えたらそういう育てかたもいいかもしれません。


 三日目。

 やっぱり変化は無いです。毎日毎日観察するのが日記だとは思いますが、変化がないと面白みに欠けます。まあ、これからは私も仕事に行かなきゃだし、仕事をしながらのんびりと育てたいと思います。


 四日目。

 毛生え薬をとりあえず錬金用に貰ったやつで作ることにした。アンブロジアの汁一滴で一キロリットル出来るから、作り過ぎてしまった。それよりも濃い濃度で作ると多分毛根に凄まじいダメージがいくと思う。一キロリットルって要するに一トンの水って事だからとてもじゃないけど、普通のところでは錬金出来ないんだよね。


 なので、諾子さんにお願いして、培養水槽を貸してもらった。使ってないから自由にしていいと言われたので。ちなみにお風呂場でやろうとしたけど、うちの風呂場だと容量足りないみたい。一キロリットルの水を出そうと頑張ったら水がそのまま溢れて排水溝にどんどん流れていったから慌てて止めたもん。


 で、見返りとして人体実験に付き合うこと。なんでも研究員にそういう頭の事で悩んでる人を若干名選出して、効くかどうか確かめたいらしい。いや、それって私がむしろお願いすることなんじゃないかな?


 その研究員の頭に数滴垂らして、よく刷り込む。頭皮に満遍なく行き渡ったらそのまま待ちます。あ、刷り込むのは自分の手でやってもらったよ。誰が好き好んで脂ぎったオッサンの頭なんか……あ、いや、頭皮はデリケートな部分だから自分の手の方が都合いいんだよね。


 果たして、結果は一目瞭然。頭からフサフサとした髪の毛が伸びてきた。よく、こういうので手に着いた薬液からも毛が生えたりするとかそういうのを聞いたらしいが、手のひらからはなんにも生えてきてない。


「おおっ、おおっ、私の、私の髪が! まるで十年以上前の様に!」


 感極まって泣き出す研究員。周りで見ていた他の人たちも拍手喝采していた。感動的なシーンだ。諾子さんはこの残った薬液をこのまま管理してくれるんだって。私としてはオーナーに渡したらそれで大丈夫だから残りは好きにして欲しいんだけど。


 五日目。

 久々の職場に緊張する。行くとオーナーが私の身を心配してくれた。そして無事だと分かると良かった良かったと笑ってくれる。とても暖かかった。


 私はオーナーに毛生え薬を渡して、使い方を説明した。頭皮にしか効かないようになってるはずだが、事故は起こるかもしれないので、容量、用法を守って使って欲しいと。オーナーは笑って帰って使わせてもらうよ、と言ってくれた。


 仕事現場に戻ると、凪沙が出迎えてくれた。あの後どうだったのか尋ねたらなんか言い淀んで真っ赤になってた。これは、本懐を遂げたんだろうか。まあその話はゆっくり聞かせてもらおう。


 久々の職場だからか、お客さんたちも私に声を掛けてくれる頻度がいつもよりも多かった気がする。いや、それとも昔からそうだったのだろうか。まあ行ってたのが人のいない世界最高峰だからね。


 七日目。

 オーナーが髪の毛が生えてきた、とふさふさの頭を見せながら言ってきた。どうやら毛生え薬は効いたらしい。良かった良かった。なんでも礼がしたいということで、凪沙も含めて焼肉を食べに連れて行ってもらった。高級焼肉美味しいです、そういやこっちの世界ってうさぎ食べないんだよね。何の肉が食べたいかって言われたから久しぶりにうさぎが食べたいって言ったら変な顔されちゃった。こっちの肉は牛、豚、にわとり、羊なんかだって。鳥はにわとりの事らしい。スズメとか美味しそうだと思うんだけど。


 一ヶ月

 アンブロジアを育成し始めてから一ヶ月。よく考えたらもう毛生え薬は作っちゃったんだから育てる必要ないんじゃないかな? なんて思ったけど、アンブロジアは色々融通の利く素材のようだから育てても損にはならないと思う、


 さて、うちのブロちゃん(命名、凪沙)は相変わらずすくすく育っている。そろそろ根の長さが伸びてきて家の中では育てられなくなりそうだ。仕方ないので畑に持っていく。


 畑に縦穴を空けて、そこに水を流し込む。私の土門と水門の技をもってすればおちゃのこさいさいである。最初からやれって? いやまあそれはそうなんだけど。


 そこにアンブロジアを浮かべて魔法で結界を張る。これだよこれ。面倒な作業ってやつだ。盗難防止に結界を張らなきゃいけない。植えてある芋は別にいいんだよね。取り返しがつくから。でもアンブロジアはれんこんと間違って食べられると不老不死まずいこと擬きになってしまうらしい。永続化させるには錬金術の秘奥をもってしないといけないんだけど。


 いっその事、白い世界の方に植えても良かったかもしれないが、あっちの世界に持っていく方法も分からないし、持って帰る方法も分からないからね。女神様に相談してみようかな?


 二ヶ月

 私の生育魔法で促成されたさつまいもの収穫が出来ることになった。通常よりも半分くらいの生育期間だ。さつまいもと言えば白い世界で食べた甘藷が忘れられなかったので、焼き芋にする事に。


 沢山取れたからその場で焚き火をして芋を焼く。私の種火程度でも落ち葉に着火すれば十分なのだ。銀紙に包んで炎の中で燃やす。これが正式なやり方だよねって言ったら慌てて止められた。燃やしたあとの余熱で焼くんだって。解せぬ。あ、焼き芋美味しかったです。凪沙とタケルとアケミさん、コトミさんとも久々に会った。これからメイド喫茶なんだって。頑張ってね。

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