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第七十五話 花火

ウィリアム再登場

 よくよく話を聞いてみれば、ライハルト氏は王宮にて文官仕事をしているらしい。なんでも王宮の仕事を経験することは領を経営する上で役に立つから、との事。実務とコネの関係で。


 テオドールやエドワード様は良いのかな? 二人とも在学中の友だちが多くいるから大丈夫? まあテオドールはともかくエドワード様はそういうの多そうだよね。特に女子に。となればエドワード様もそろそろというかとっくに結婚してないといけないと思うのだけど。


「うっ、……どうやら昔のオレのせいで破談になったらしい。いや、エドワードは気にしないでと言ってはくれていたが」


 あー、もしかして教団の噂か何かで公爵家の名前に傷がついた、とか?


「そういうことじゃあない。オレが後継者不適格という噂が流れれば、次期公爵になるのはエドワードだ。それで、元々のエドワードの婚約者の方が男爵令嬢でな」


 テオドールは少し言い淀んだ後に、躊躇いがちにその言葉を捻り出した。


「在学中だった男爵令嬢に、エドワードとの婚約を破棄するように迫り、男爵令嬢は身の危険を感じて引き篭ってしまったのだ」


 在学中? いや、確かエドワード様ってテオドールよりも少しだけ若いだけだよね? 二十代半ばくらいというか。


「件の男爵令嬢殿はエドワードよりも七歳年若だ。別に不思議でもなかろう」


 エドワード様が二十五とすると男爵令嬢は十八か。まあ確かに年齢差的には問題なさそう。というかそもそもこの世界なんだから少々の年の差が問題となるとは思わないんだよね。同年代に居なかったのか。


「まあ、オレとエドワードはそこまで歳が離れてる訳ではないからな。当然ながら次期公爵たるオレと、次男であるエドワードではどちらに光が当たるか分かるだろう?」

「でもテオドールはそういうの諸々ぶっちぎってヒルダさんを選んだんでしょ?」

「ヒルダもさん付けなんだな。まあそれはいい。そもそもオレは女に興味がなかった」


 テオドール! そのセリフは貴腐人方の興味をわき立てるものですぞ! いや、私にはそういう属性はないんだけどね。


「何か背筋が寒くなるような勘違いをしている様だが、単純に剣の道一筋だっただけで横道に逸れる気がなかったというだけだからな」


 いや、分かってる。テオドールの剣技を見ればかなり努力したんだろうなということが。もちろん天賦の才もあるんだろうけど、玉磨かざれば光なし、なのだ。努力しなければ到達できない高みというものがあるのだ。いや、それが分かるほどに私も鍛えている訳ではないんだけど。


「そんな私を諦めずに思い続けてくれたのはヒルダだけだったからな。まああれだ。ずっとそばに居られたら愛おしくもなるというものだ」


 テオドールの口から「愛おしい」だって! 聞きました、奥さん!? いや、聞いてないよね、ヒルダさん。それ、直接ヒルダさんに言ってあげましょうよ。さあ、さあ、さあ!


「それよりも残敵掃討だ。教団のヤツらを追うぞ」


 あ、誤魔化した。誤魔化しましたね? 追うには時間が経ちすぎてると思うんですが。


「安心しろ。ちゃんと部下に追わせている。まもなく合図があるはずだ」


 ちょうどその時、しゅぱんと花火のような物が上がって弾けた。信号弾かな? 色は赤色。わー綺麗って思ってたらテオドールが焦りだした。


「なっ、救援要請だと!? 何があったんだ!」


 テオドールはそのまま馬に乗って走り出した。ちなみに馬は転移テレポートで持って来てない。ミルドレッド公爵家のを借りたらしい。何にしてもテオドールだけじゃまずい。私も短距離転移でついて行く。というか目的地はあの赤い花火?が上がったところだろう。


「テオドール、何があったの?」

「分からん。だが、あの花火は我が騎士団の危機の時にあげるもの。ならばそこに危機が迫っているに違いない」

「いやいや、あのさ、そんなところに次期公爵様が何の考えもなく単身で突っ込むとかバカなの?」

「オレは部下を見捨てるつもりは無い!」


 馬鹿だ。こういう奴は馬鹿だし、言っても聞かない。となれば戦力を揃えるのみ。私は改めてエレノアさんのところに戻る。


「キューちゃん、テオドール様は?」

「部下に危機が迫ってると飛び出して行きました」

「なんですって!? ええと、ここだと協力を要請出来る人物は……」

「グスタフさんは?」

「エッジの街に帰ってるからまたエッジまで行かなくちゃ」


 あー、さっきと違って準備する時間は無さそうだ。せいぜいが王都の冒険者ギルドだろう。


「お困りのようですね、レディ?」


 そこには弓を持ったいかにもな男が居た。確か《弾箭だんせん》ウィリアムさん。


「げっ」

「おお、おお! そちらにおられるのはエレノア殿ではありませんか! マイゴッデス、美の女神! 会いたかったですよ、エレノア殿!」


 感極まったように満面の笑みを浮かべるウィリアムと氷の微笑を浮かべるエレノアさん。アイスピック要ります?


「今はあなたに構ってる暇はないの。さよなら」

「待ってください、マイゴッデス! 何かお困りなのでしょう? 私にできることはなら協力しますから!」

「ううっ、関わりたくないけど手っ取り早いのは確かね。いいこと? じゃあ協力してもらいますけど」

「依頼ですか?高いですよ。伊達にゴールド級じゃあありませんから」


 そうだ。グスタフさんは手伝ってくれたし、あの時のウィリアムさんは乗りかかった船みたいな感じだった。それに国王陛下から謝礼も貰ってたし。私もお金あるけどどれくらいで雇えるんだろうか?


「……終わったら一回デートしてあげるわ」


 またまた、エレノアさん、そんなので金級の冒険者が動くはずが……


「なんなりとお申し付けください! なんでもやります。やりますとも!」


 ウィリアムが瞳をキラキラと輝かせて返事した。それでいいのか。まあデートという二人の時間はプライスレスって事だよね。それじゃあ転移しまーす。捕まってください。あ、ウィリアムさんは反対側の手で。エレノアさんに抱きつかなくても行けますから!

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