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第七十三話 解毒

水門の術師はそれなりにはいますが、大体は下位レベルです。解毒が出来るのは中位以上。ティアは得意です。

 テオドールの招集に整然と並ぶ軍隊。いや、騎士団? 恐らく盗賊団と言っても大したヤツらじゃなさそうな気もするけど、急いだ方がいいだろう。


「ヒルダ、ミルドレッド公爵家は必ずオレが助ける」

「テオドール様」

「テオと呼べと言っただろう」

「ああ、テオ!」


 とりあえず騎士団の目の前でラブシーン繰り広げている二人。どうしようかなあ。早く出発した方がいいんだけど。


「テオドール……様、そろそろ」

「そうだな。それと、取ってつけたように様をつけるのはやめろと言っただろう。テオドールで構わん」

「テオじゃダメ?」

「ヒルダ以外は許さん」


 ヒルダさんが頬を染めていやんいやんとなってる。あのさ、ヒルダさんのご家族ご実家が危ないんじゃなかった?


「そうですね。テオ、よろしくお願いします」

「任せておけ。義父殿にも改めてご挨拶しないとな。キュー、頼む」

「わかったよ。じゃあしっかり掴まってて」


 転移テレポートを敢行すると、まだ盗賊団は迫って来ていなかった。テオドールは騎士団の人たちを配置につけた。こちらの騎士団の人数は五十人程度、盗賊団がそれ以上居るのなら対応するのにしっかり戦略を立てないといけない。


 とりあえずは状況把握だ。テオドールが屋敷の中にズカズカと入っていく。屋敷の中は死屍累々という感じだ。本当の死体はなさそうだけど。死んだ方が良かったんじゃないかという手遅れな患者ミントが一名居たが見なかったことにしよう。


「お義父様」

「お、おお、テオドール殿か。どうやら噂は噂に過ぎなかったようだ。私の不明を許してくれ」


 これで公爵様が小太りでないナイスミドルな人なら絵になったんだろうけど。しかし、この人とあのデブスババアの遺伝子から良くヒルダさんみたいな美人が生まれたよね。それともヒルダさんも将来はこんな風に……あ、リンクマイヤー公爵家の方から殺気が飛んできた!


「おい、キューよ。お前、薬屋に行って解毒薬を買ってこい。リンクマイヤー公爵家につけてもらって構わんぞ」

「そ、それならば私も行こう。ここに居てもテオドール殿の足手まといになるだけだからな」


 公爵様? それって私に小太り中年男性を抱えて行けと? いやまあ接触してれば転移は出来ますけど。


 公爵様、いや、リンクマイヤーも公爵様だから、ややこしいね。ランドルフとかルドルフとかそんな名前だったと思うんだけど。


「ランドルフで構わん。頼む、薬屋に転移して欲しい」


 ランドルフさん、接触テレパスの使い手!? なぜ私の考えてる事がわかったんですか!?


「さっきからルドルフとかランドルフとか呟いていたからな。あの時はリンクマイヤー……ルドルフも一緒にいたから混同しているのではないかと思ったのだ」


 頭の出来は優秀な様です。というか、私、口に出してたのか。気を付けよう。


 盗賊団はテオドールに任せて、薬屋に跳ぶ。と言っても場所が分からないからランドルフさんに教えられながらだけど。


「店主は居るか?」

「へい、いらっしゃいませ。どちら様……ってミルドレッド公爵様!?」

「私を覚えておったか」

「それはもう。で、ただならぬご様子の様ですが」

「ああ、実はな。厄介なことに巻き込まれてしまってな。水門の術師を揃えてくれんかね?」


 水門。確かティアが得意としている治癒に定評のある魔法の門派だ。こういう時に病院ではなくて魔法が頼られるのは未だになれない。教会ではダメなのかとも思うが、教会は教会で、寄付金を沢山募ろうとするので動くまでに時間がかかるんだそうな。


「お待ちください。うちの抱えている水門遣いを呼んでまいります」


 なんでも薬屋には調合のために水門の術師を確保しているらしい。まあお薬には綺麗な水がいるよね。あ、よく考えたら私が治癒ヒーリング使えばよかったのかな? いや、麻痺がどうなるのかは分からないけど。


 それからランドルフさんの治療をしてもらい、まともに会話出来るようになった。


「スマンがこの者たちを貸してほしい。礼ならする」


 ちょっとランドルフさん、こういう時はどこに行って何をするのか、対価は何なのかをしっかりと伝えなきゃいけないと思いますよ? 薬屋のご主人は二つ返事で了承してくれましたけど。これが信頼関係ってやつかなあ。


 私は改めてランドルフさんと水門の術師たちを連れて転移。剣戟の打ち合う音が聞こえる。


「話が違うぜ、チクショー!」


 テオドールは向かってくる悪漢共をばったばったとなぎ倒す。格好からしてテオドールがトップってのは分かるのに、何とかできる気がしないんだろう。


 私たちはその様子を尻目に屋敷の中へ。まだ、死屍累々の如くに横たわってる。……恍惚としてるやつは放っておこう。


 水門の術師たちにお願いして、手当り次第に治癒の術をかけてもらう。ランドルフさんが水門の使える使用人を募ったが誰も居なかった。やっぱりティアみたいなお貴族様じゃないとダメなのかね?


 水門? そうだ! 私はエッジの街のギルドにまで跳んだ。


「エレノアさん!」

「あら、キューちゃん? どうしたの? 今王都じゃなかった?」

「すいません。エレノアさんの力を貸してください」

「……わかったわ。行きましょう」

「いいんですか?」

「キューちゃんの頼みだもの最優先よ。ギルドの仕事はギルドマスターに任せればいいし」


 ギルドマスターも少しは仕事した方がいいと思うのでそれは了承した。エレノアさんを伴って屋敷に戻る。


「えっ、ここどこ? 公爵邸? なんで公爵邸に賊が詰め寄って来てるの?」

「おお、エレノア殿か。これは心強いな」

「て、テオドール様!? でも、あちらにいらっしゃるのはミルドレッド公爵様……」

「エレノアさん、すいませんけど、解毒をお願いします!」


 ブツブツ喋ってるエレノアさんの前に患者を運ぶ。割と重症な患者だ。恐らく近距離で毒を吸い込んだのだろう。エレノアさんはその人に近付くと解毒の魔法をかけていく。みるみる顔色がよくなっていった。

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