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第七十話 潜伏

キューに忍びは向いてないかもしれない。

 医者の風貌、いや、本当に医者なのかも分からないが、金髪ロン毛の優男といった感じだ。そして細目。だいたい色んな作品で細目は裏切り者だという研究結果が出ている。瞳を見せない者は信用ならないということなのかもしれない。


「お前の娘は胸こそ性的魅力に乏しいが、顔貌は整っているのだろう? そうなのであれば慈悲を与えても構わんだろう」

「勿体ないお言葉。娘も喜びましょう」


 公爵夫人は恍惚とした表情で言う。ヒルダさんがここに居なくて良かった。多分飛び出して行って殴ってると思う。殴れるかどうかは別として。


「ヒルダさん」

「何、キューさん」

「今すぐ避難しましょう」

「は? え? どういう事よ?」


 私は先程見た光景を説明する。このまま放っておけば公爵家自体が教団に乗っ取られてハイソレマデヨになってしまうからね。とりあえずヒルダさんはリンクマイヤーに逃がさないと。


「ヒルダ様、ヒルダ様は居らっしゃいますか?」

「ミント、お願いね」

「かしこまりました」


 ヒルダさんがミントに誤魔化すように頼んで、そのうちに私と一緒にリンクマイヤー家に送る。あっち行けばテオドールも居るしなんとかなるだろう。


 転移テレポートして戻って来たらミントさんが奥様に折檻されていた。


「言いなさい! ヒルダを、どこに、やったの!?」

「ああ、ああ、この一発一発が、お嬢様への、愛の、痛みに。ああっ!」


 ムチで叩かれながらお嬢様、ヒルダへの愛を叫ぶ獣。いや、獣かどうかは知らんけど。まああの叩き方では大して痛くもないだろうね。手首から先の使い方が違うのだよ、とわかったような事を言ってみる。適当なんだけど。


「くぅ、しぶといわね」

「奥様、そろそろお出掛けのお時間では?」

「そうですね。帰ったらまたしつけますから!」

「心よりお待ちしております」


 もしかしてミントさんはお嬢様ラブだけでなくてマゾヒストなのだろうか。


 さて、奥様、公爵夫人は再び御外出。お医者様を伴って出かけてしまいました。後をつけてみようかな? 気配を消すのはそこまで得意じゃないけど、なんとなれば転移で逃げればいいか。


 リンダさんに行き先を尋ねてみる。どうやら彼女もよく知らないようだ。


「んー、あたしはよく知らないけど、侍従長さんなら何か知ってるかもねー」


 いわゆるメイド長というのだろうか? いや、家宰だっけ? 男性の執事みたいな格好で家のことを取仕切る人物だ。でも、私には教えてくれないと思うよ。だって部外者だもん。ヒルダさんがいるなら話は別だけど、それでも公爵家の不利になる事なら聞き出すのは望めないだろう。


 それならば力づくで何とかするのみ! と言ってもこっそり忍び込んで心を読むんだけど。さて、そうと決まれば夜まで寝ておこう。ぐう。


 夜。おはようございます。いや、おそようございますかな? みんなが寝静まった夜。窓から星を見ているととてもすごいものを見たんだ。って目撃者が出ない様に気を付けているが、私にステルスモードなんてないんだよね。語尾に「っす」を付けたら見えなくなるかもって本当かなあ? そもそもステルスモード中に喋ったら台無しでは?


 転移で部屋の中へ。侍従長の部屋は……使用人部屋ではなくて屋敷内に与えられているらしい。なかなかの待遇だ。さすが公爵家だね。部屋の中を透視クレヤボヤンスで観察。うん、寝静まってるし、誰も居ない。それじゃあ転移しますよ。ほいっ。


 部屋の中は暗くてよく見えない。あ、透視クレヤボヤンス併用すると見えるかも。そうっと、そうっと。寝息を立てて寝てやがる。よし、聞き出そう。……どうやって? ええと、ええと。よし、こんな時は鑑定サイコメトリーだ!


 この人のイメージの中で年端もいかない少女が陵辱されているんだけど、大丈夫かな? いや、人の頭の中に手錠は掛けられないよ? 実行しなければ無罪だからね。多分。


 よし、じゃあ猿轡かまして、身体を縛って……よし、起きろ!


「むごっ!?」


 私の顔は覆面で隠している。仮面の忍者ってやつだ。ビッグゴールドは持ってきてないよ。そもそも持ってないし。


「むごー!」

「はいはい、ちょっと聞きたいんだけど、それが終わったら解放するから。公爵夫人はどこに出掛けてるのかな?」

「……」

「おや、喋らないんだ。立派だね」


 仕方ないから鑑定サイコメトリーで心を読む。接触が必要な情報量なので手を頭に当てる。


【なっ、なんなのだ、こいつは、いきなり寝ているところを現れて奥様の外出先だと? 確かに奥様には怪しい点が見受けられるが、私が公爵家を裏切るとでも? バカにしているのだろうか? いや、私を殺さずに生かしているという事はこいつは私からの情報がないと動けないに違いない。ざまあみろだ。だいたい、公爵夫人がどこに行ってるのかなんて私には分からんからな。分かるとしたらいつも連れているあの医者だろう。本当に医者なのかも分からんが、公爵家に不利益にならないうちは奥様の好きにさせていて構わないだろう。どこの貴族家でもやっていることだからな】


 あれ? 侍従長も知らないんじゃん。じゃあいいや。とりあえず猿轡は解いてあげよう。


「なんのつもりだ?」

「ううん、まあ知らないなら用は無いよ」

「私が叫べば貴様は捕えられるぞ?」

「あー、まあ、そうかもだけど、捕まるつもりもないし。とりあえず別の手を考えないと」

「何のためにこんな事を?」

「えーと、ヒルダさんの為かな」

「お嬢様の?」


 あれ? 侍従長さんの顔色が変わった。ヒルダさんの名前は出すつもりはなかったんだけど、ポロッと出しちゃったんだよね。でも、どうやら侍従長さんはヒルダさんの味方をしてくれるみたい。


「小娘、話してみろ。場合によっては協力してやる」

「女ってわかったの?」

「うむ、匂いと声でな」


 ある意味極まってる人かもしれない。ま、まあ、貞操の危険はともかく、協力者を手に入れたって事で。私は事情をかくかくしかじかと話した。

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