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葛藤(episode70)

まあ、葛藤はあるよね。健康な男子なら。

 二人きりにしたところで今更関係が進展するわけでもないしなし。いや、進展してくれて一向に構わないんだけど。


 タケルから連絡が来たのはそれから一週間程後の話だ。一応フィールドワーク、というか野原に出てブタクサとやらを探してみたけど、見つからなかった。どうやら冬には生えてないらしい。なんでも花粉を飛ばして攻撃してくるらしい。モンスターかな?


「あ、もしもし、ティア?」

「タケル。今日は一人なの?」

「……いつも一人だよ」

「凪沙は?」

「いや、まあ別に。いつも一緒って訳でもないし」


 反応からして多分何も無かったんだな。というかあれだけの空気を作っておいて何もしてないってどういうこと? 男は度胸じゃないの? それとも読経して心鎮めちゃった?


「それで、研究室への出入りなんだけど、今度の週末にお邪魔させてもらう事になってね」

「なるほど。勝手に訪問していいの?」

「もちろんぼくもついていくよ。紹介しないといけないからね」


 という事は週末はタケルと二人でお出かけか。凪沙に言っとくべきかな? 私は個人的に友人の想い人をみたいな展開は好きじゃない。NTR否定派だ。いや、NTRナリタトップロードなら大歓迎だけど。


「わかったわ。じゃあ土曜に駅のロータリーで待ち合わせね」


 約束をしてその日は電話を切った。さて、それじゃあ凪沙にも報せるかな。


「ティア?」

「あ、うん、ちょっといい?」

「いいよ。どうしたの?」

「土曜日、タケルと二人で出掛けることになったから」

「なんで!? やっぱり私じゃダメなの!?」


 思ったよりも反応が凄まじかった。あの日何があったんですかね? 凪沙がいつでもオッケーみたいに待ち構えていたのを華麗にスルーしたとか? 凪沙に押されたら大概の男は落ちると思うんだけど。


「落ち着いて。ほら、右記島うきしまとかどーたらの研究室を紹介してもらうって話」

「ああ、アンブロジアとかそんなやつだっけ?」

「そうそう。私一人で出来ればよかったけど、やっぱりタケルを介在しないとダメみたい」

「あー、うん、なら仕方ないね」


 凪沙の顔が曇る。私に他意が無いというのは理解していても感情では納得できないのかもしれない。ほら、私、ナイスバディだし?


「凪沙もくる?」

「えっ?」

「だからさ、凪沙も一緒に来ない?」

「えっ、で、でも、迷惑なんじゃ」

「タケルが凪沙を邪険にするわけないじゃない」

「……そうかな?」

「そうだよ! 私は多分紹介されて話し込むと思うから凪沙はタケルとデートでもしながら帰ればいいよ。紹介終わったらどうせ暇なんだしさ」

「ティア……」


 凪沙の目に涙が浮かぶ。やっぱり何かあったんだろうか?


「凪沙、タケルの家で何かあったの?」


 ビクンッと凪沙の身体が跳ねた。やっぱり何かあったのか。ほら、凪沙。私は聞いてあげる事しか出来ないけど、話してみなよ。


「うん、あのね」


 そう言って凪沙があの日の事を語り出した。私が帰ったあと、二人でゲームしながら話をしてたんだって。その話の流れで初恋がいつだったかを話す事に。いや、どうしてそうなった。


 タケルはなかなか話さなかったんで聞き出そうとして覆いかぶさったんだって。そしてそのままキスしようとしたらしい。そしたらタケルがキスを拒んだんだそうな。


「こういうのは、その、よくないと思う」


 だってさ。何考えてんだ草食系が! 凪沙はタケルに拒絶されたからそこから暴走したんだそうな。


「そうよね! 私はティアみたいな金髪ナイスバディじゃないし、ガサツで男勝りだもん。私に女の子っぽいのは似合わないし、魅力もないわよ! どうせ、どうせ、バカァ!」


 などという捨て台詞を吐いてそのまま部屋を飛び出したらしい。タケルは何も言ってくれなかったし、追いかけてきてもくれなかったそうだ。なんだよ、タケル。そこは追いかけていって抱き締めるところだろ?


「あー、うん。とりあえず凪沙? 私の個人的な意見としては一度その件については謝罪するべきじゃないかな?」

「私が悪いのは分かってるよ。でも、タケルも酷くない?」

「酷かったらタケルの事嫌いになる?」

「………………嫌いになんてなれない」


 結論は出た様だ。となれば決戦は金曜日……じゃなくて土曜日だ。タケルに目にもの見せてくれるわ! いや、研究室を紹介してくれるんだよね? もちろん忘れてないよ!


 土曜日は少々寒かったけど、晴れだったので、それなりに日差しが暖かかった。私たちは駅前で待ち合わせをしている。


 駅のロータリーは人でごったがえしている。私たちはそこに降り立った。というか電車で来ました。


 凪沙の格好はふわもこのセーターに黒のロングスカート。肩が半分くらい出てて寒くないのかなって思う。まあコートも着てるんだけど。


 私の格好はスカジャンいや、スタジャンかな?と呼ばれるジャンパーにスウェット、ジーンズのボトムズ。破壊の後に住み着いた欲望と暴力。百年戦争が生み出したソドムの街。はっ、何か混ざった?


 タケルが向こうから走ってくる。走っても速くないんだから歩いていいのに。転けるよ? タケルの服装はスーツ姿。研究室に行くからきっちりした服装で行くらしい。凪沙、凪沙、目がハートになってる!


「遅れてごめん……あれ、凪沙?」

「何よ、いちゃ悪いの?」

「いや、そんな事はないけど……」


 言いながら視線を逸らすタケル。うーん、やっぱり凪沙の事を避けてる? 私には普通に接してるのに、凪沙の事は視線を向けようとしない。まあそれでも半ば強引に二人を並ばせて私は後ろからついていく。


 右記島の研究室は広大な大学の敷地の外れにある。大学自体がひとつの街を形成してる様な場所なのだが、タケルは迷う事もなく歩いていく。


 目的地は古代植物研究室というネームプレートが掲げられていた。まあいかにもって感じだ。ノックをして中からの返事を待って部屋に入る。部屋の中には白衣に身を包んだ割とイケメンのメガネ男子が居た。

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