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訪問(episode69)

タケルの部屋、2Kです。もう一個の部屋はデイトレ用の仕事部屋だったり。

 凪沙に案内されてタケルの家に。凪沙も何故かついてくるんだって。過ちとか起こらないよ? 主導権私だろうし。


「いくらティアでもタケルの部屋で二人きりはダメ」

「それならさっさとくっつけばいいのに」

「いや、その、心の準備が」


 まあ凪沙の恋模様はおいおい応援していくとして、今日はタケルのお家なのだ。オートロックのマンションらしくエントランスでピンポーンと部屋番号を押してインターホンを起動する。


「あー、ティア。いらっしゃい。今開けるから入って来て」


 正面の自動扉が開いた。中の住人しか開けないんだって。自分が外の時はどうするのか? なんかインターホンの横にカードを差し込むところがあって、そこに部屋の鍵であるカードキーを差し込んだらいいらしい。


 なお、カードキーを部屋に忘れた時はコンシェルジュさんという人に言えば開けてくれるらしい。なるほど。やったな?


 エレベーターでタケルの住んでる九階に移動。タケルは出不精だから九階でも不自由はないんだとか。


「やぁやぁよく来たね。上がって……」

「……来ちゃった」

「えっ、凪沙もいるの!? あっ、ちょっ、ちょっと待ってもらえる?」

「何よ! 私が居たらダメな理由でもあるの?」

「あ、いや、その」

「何よ、はっきり言いなさいよ!」


 あーあー、凪沙さん? 凪沙さんが考えてるような「女を連れ込んでる」的なものは無いと思うのですよ。それなら私も呼ばれないし。落ち着いて、落ち着いて考えましょう。


「あれでしょ、避妊具とか用意してティアとそういう事しようと思ってたんでしょ、サイテー!」


 おおっと、凪沙の懸念は私とのアレでしたか。いや、だからタケルはとことん趣味じゃないんですってば。恩人ではありますし、友人でもありますけど。男女の友情は成立するかって話ですけど、そもそも私はタケルを男の範疇に入れてないんですよね。まだ三馬鹿の方が男ですよ。ケダモノのオスって感じですけど。


「いや、ぼくはティアの事を女性として見た事なんてないから!」


 どうやらタケルも同じ気持ちだったみたいです。でもアレですね。タケルに面と向かって言われるとそれはそれで女としての魅力に欠けてるのかと少し心配になりますね。


「わ、私のことも女性として見てないんでしょ?」

「……凪沙の事は女性としか見てない」

「えっ、あの、それってどういう……」


 あー、私、出直した方がいいですかね? なんかこのままおっぱじめそうではあります。あ、コンドーさん買ってきましょうか? ごくうすがいいですかね?


「ティア、やめてくれ。ああ。もう。とりあえずティアの話を聞かせて」

「わかりました」


 部屋の中に案内された。まあ玄関先でやる痴情のもつれって近所の目がありますよね。


 玄関から入るとうちのアパートとは違って大きめの廊下に部屋が二つほど見える。廊下はどうやら台所と食堂を兼ねているらしく、どちらも綺麗に掃除されていた。二つの部屋は片方は灯りがついていて、もう片方はついていない。タケルが普段使っているのは灯りがついた部屋だろう。


 部屋に入るとベッドとパソコンのディスプレイがあった。本棚には漫画もラノベもたくさん入っている。テレビにはレトロなゲーム機が繋がれている。真剣遊戯中だったのかもしれない。


「ええと、とりあえずこれを見てくれるかな?」


 タケルはスクラップブックから一枚の写真を取り出して私たちに見せた。そこには「アンブロジア」という植物の名前が書かれている。写真がある。少し大きめの睡蓮の花のようなものが写っている。


「ブタクサの学名がアンブロシアなんだけど、多分それとは違うんだろう」

「何そのブタクサって」

「雑草だよ」

「ううん、まあ違うと思う」


 実際にブツを見ないと分からないけど、そこらに転がってるとも思えないし、ブタクサって名前があるなら併記されてるだろう。


「だから多分こっちのアンブロジアだと思うんだ」


 幻の植物と言われ、ヒマラヤ山脈の山中に生えると言われる蓮の仲間らしい。なにかの研究チームが発見して持ち帰ったらしい。


「研究チームって言うと大学?」

「そう、右記島うきしまの、式部省傘下の正式な研究機関」


 右記島というのは八家の一つらしい。で、大学というのは一応どこの家も持ってるらしいんだけど、研究色が強いのは右記島の所属らしい。


「知り合いが居ないこともないから、見せてもらうことは出来ると思うけど、材料に使えるかと言ったら難しいね」


 タケルはそう言ってくれたけど、見せて貰えるなら本当にそれが必要になるのか分かるというもの。そしてある場所がわかってるなら取りに行ける。


「見せてもらうだけでいいからお願い出来る?」

「わかった。約束が取れたら連絡するよ」

「ところでタケル? なんでさっき凪沙が部屋に入るのを拒もうとしたの?」


 凪沙とタケルが同時にビクッとする。面白い。何これ。


「あ、あれはその、寝起きでシャワー浴びてないから臭いかなって」

「いやいや臭くないって。パチンコ屋に来る人とかもっと臭かったりするもん。ねえ凪沙?」

「そ、そうね。むしろタケルの匂いはずっと嗅いでいたくなるくらいいい匂いだわ」


 いや、そこまでは言ってないけど、まあ凪沙がいいならいいよ?


「あはは、またまた。嗅いでみる? なんちゃって……」


 とか言いながら着替えたシャツをヒラヒラさせる。いや、洗濯機に入れろよ。そういうとこだぞ?


 凪沙が物欲しそうな目をしたけど、私が笑いながら洗濯機に入れろと突っ込むとそのシャツを奪って洗濯機に入れに行った。


 凪沙が戻ってくるまで少し時間があった気がするけどまあ見なかったから知らない。洗濯機に、入れたんだよね? 持って帰ろうとしてないよね? 汚れ物だもんね?


 それから部屋でゲームをして私だけ先に帰ることに。あー、用事を思い出したーとかわざとらしいことは言ったけど用事ならあるので問題ない。あとは若いおふたりで。私の方が若いって? こまけぇこたぁいいんだよ!

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